文献情報
文献番号
201128015A
報告書区分
総括
研究課題名
不応性貧血の治癒率向上を目指した分子・免疫病態研究
課題番号
H22-難治・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小川 誠司(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 直江知樹(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 )
- 中尾眞二(金沢大学医薬保健研究域医学系細胞移植学)
- 大屋敷一馬(東京医科大学・血液内科学)
- 高折晃史(京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学)
- 稲葉俊哉(広島大学・分子生物学)
- 泉二登志子(東京女子医科大学・血液内科学)
- 三谷絹子(獨協医科大学 内科学(血液・腫瘍))
- 千葉滋(筑波大学 血液内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
不応性貧血(骨髄異形成症候群、MDS)は高齢者に好発する難治性造血器疾患であるが、形態異常を伴う血球産生異常が共通に認められる一方、一部には免疫抑制療法が有効な自己免疫機序が主体となる病態も存在する。治療成績の向上の観点からは、この多様な病態を明らかにした上で、個々の病態に即した分子標的療法を含む治療戦略を構築することが重要である。そこで、本研究班では、MDSの多様な分子病態を明らかとし、新規治療法の開発に資することを目指している。
研究方法
1)MDSリソースバンクの拡充を目指した検体集積事業、2)全エクソン・シークエンスによるMDSの新規標的遺伝子の探索、3)メチル化阻害剤治療の反応性予測マーカーの検出、4)13q欠失で特徴づけられる骨髄不全における免疫病態研究を重点的に推進した。
結果と考察
本年度は62例のMDS検体が集積され、これまでに集積された検体数は計175例を超えている。更なる検体集積事業の拡充を目的に、日本成人白血病研究グループ(JALSG)との連携に向けて、原則合意が得られ、研究計画策定作業に入っており、更なる集積数の増加が期待される。29例のMDSの全エクソン・シークエンスが行われ、MDSにおいてSF3B1、U2AF35、SRSF2、ZRSR2などのRNAスプライシングに関わる遺伝子群に変異が同定され、多数検体の解析から、これらの遺伝子変異はMDSに特徴的かつ高頻度(45-85%)に認められることを明らかとした(Yoshida et al. Nature 2011)。これまでにMDSで報告のあった遺伝子異常は、MDSに特徴的とは言えず、本発見によりMDSの分子病態研究が大きく進むことが期待される。前年度に開発したSingle molecule methylation assay (SMMA)法および末梢血遊離DNAを用いたメチル化解析の実用化に向けての検討が行われた。また、13q欠失で特徴づけられる症例群は、PNH型血球の増加が見られ、免疫抑制剤も有効である症例が多いことから、免疫病態の関与が大きいと考えられ、免疫抑制療法を主体とした治療法の選択をすべきと思われる。
結論
本研究を通じてMDSではRNAスプライシングに関わる分子に遺伝子変異が高頻度に生じていることが、明らかとなった。本発見により、分子病態研究が進み、新規治療法の開発含め、治癒率向上に貢献することが大いに期待される。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
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