難治性炎症性腸疾患のゲノムおよびエピゲノム解析による病因・病態・治療抵抗性機序の解明

文献情報

文献番号
201128013A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性炎症性腸疾患のゲノムおよびエピゲノム解析による病因・病態・治療抵抗性機序の解明
課題番号
H22-難治・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
笹月 健彦(九州大学 生体防御医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 日比 紀文(慶應義塾大学 医学部)
  • 渡辺 守(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 松本 主之(九州大学病院)
  • 土肥多惠子(国立国際医療センター研究所)
  • 石谷 太(九州大学 生体防御医学研究所 )
  • 山本 健(九州大学 生体防御医学研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
26,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
潰瘍性大腸炎およびクローン病の病因、病態および抗TNFα抗体療法抵抗性の遺伝的機序を、ゲノム解析およびエピゲノム解析により解明し、これらと臨床情報を加えた三大情報を統合的に解析することにより、難治性炎症性腸疾患(IBD)の病因・病態・抗TNFα抗体治療抵抗性機序を解明し、本疾病克服への道を拓く。
研究方法
臨床検体の収集:慶應義塾大学、東京医科歯科大学、九州大学を中心に組織を整備して検体収集を行う。ゲノム解析:全ゲノム相関解析によって報告された遺伝子多型を解析対象遺伝子とする。またHLA6座について別途解析する。遺伝子型や対立遺伝子頻度の差異を治療抵抗性の有無において検討する。エピゲノム解析:クローン病大腸の生検組織を用い、標的細胞を精製した後、網羅的遺伝子発現解析、MeDIPシークエンス、抗ヒストン3K4、3K9、3K27抗体を用いたChIPシークエンスを行う。消化管上皮細胞分化因子の解析:Wnt及びNotchシグナルのバランス制御を介し、消化管上皮の再生分化を調節するNLK遺伝子の機能を分子および個体レベルで解析する。
結果と考察
平成23年度は201検体を収集し、現在も継続中である。候補42遺伝子について201検体の遺伝子型を取得した。一般集団384名を対照とした相関解析を実施し、特にTNFSF15において強い相関を認めた。また、HLA6遺伝子座についてのタイピングが終了し、新規感受性アレルとしてHLA-C座の特定のアレルを、発症抵抗性アレルとしてHLA-DPB1座の特定のアレルをそれぞれ同定した。エピゲノム解析においては、難治手術例のクローン病大腸病変組織から粘膜固有層単核細胞を分離し、クローン病病変部位におけるCD3陽性、CD33陽性細胞のそれぞれに特有のH3K4トリメチル化領域を同定した。また、腸上皮由来細胞において、NLKがTCF/LEFの保存された二つのセリン・スレオニン残基をリン酸化することでTCF/LEFの転写活性を増強することを見いだした。
結論
平成23年度はIBD201検体を収集し、HLA6座および42候補遺伝子の多型情報を取得した。症例・対照相関解析において、HLA座に新規の感受性アレルと抵抗性アレルを同定した。候補遺伝子SNP解析では、特にTNFSF15に強い相関を認めた。最終的な検体収集の後、疾患感受性、抵抗性HLAアレルの同定、ならびに治療抵抗性を規定するHLAならびにSNPを同定する。また、エピゲノム解析においては、クローン病病変部位におけるCD3陽性、CD33陽性細胞のそれぞれに特有のH3K4トリメチル化領域を同定した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128013Z