重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療の実用化臨床試験

文献情報

文献番号
201128009A
報告書区分
総括
研究課題名
重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療の実用化臨床試験
課題番号
H21-難治・一般-220
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
江頭 健輔(九州大学大学院 医学研究院 循環器病先端医療研究開発学)
研究分担者(所属機関)
  • 中野 覚(九州大学大学院 医学研究院 循環器病先端医療研究開発学)
  • 的場 哲哉(九州大学病院 循環器内科 )
  • 砂川 賢二(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科学)
  • 中西 洋一(九州大学大学院 医学研究院 呼吸器内科学)
  • 戸高 浩司(九州大学病院 循環器内科 )
  • 桑原 良宇(興和株式会社 製品戦略部 )
  • 辻本 広行(ホソカワミクロン 株式会社 マテリアル事業本部 製薬・美容科学研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
153,846,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 申請者らはスタチンの肺血管保護作用に注目して研究し、ピタバスタチンが最も強力な血管保護作用を有することを見い出した。また、ピタバスタチン封入PLGAナノ粒子製剤(NK-104-NP)の気管内投与によって、重症肺高血圧症モデルや急性肺傷害モデルでの病態が著明に改善した(国内外特許登録)。
 本研究の目的は、NK-104-NPを開発し、重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療を創出し、実用化のための臨床試験を行うことである。
研究方法
 重症肺高血圧症に対するNK-104-NPの臨床応用に向け、①最適化の研究開発、②安全性試験、③吸入製剤の設計・開発、④探索的臨床試験、を推進した。
結果と考察
 肺組織での薬効発現に最適なNK-104-NPを作製し、各種肺高血圧症モデル動物におけるNK-104-NP薬効確認、GLP基準による28日間のNK-104-NP静脈内反復投与毒性試験等を実施した。また、医師主導治験の開始について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の薬事戦略相談の事前面談を実施した。本研究成果により、まずNK-104-NPの静脈内投与による臨床開発が可能であり、重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療を実用化するためのProof of Concept(POC)取得に向けてのFirst in man試験開始の準備は整ったと考えられる。これを進めると共に、更に低侵襲な肺高血圧症の吸入ナノ医療の実現と、将来的な他疾患への適応拡大を目指し、NK-104-NP吸入製剤の最適化を進める。
結論
 本研究成果により、まずNK-104-NPの静脈内投与による重症肺高血圧症治療薬の開発が可能であり、重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療を実用化するための、POC取得に向けてのFirst in Man試験開始の準備は整ったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201128009B
報告書区分
総合
研究課題名
重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療の実用化臨床試験
課題番号
H21-難治・一般-220
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
江頭 健輔(九州大学大学院 医学研究院 循環器病先端医療研究開発学)
研究分担者(所属機関)
  • 中野 覚(九州大学大学院 医学研究院 循環器病先端医療研究開発学 )
  • 的場 哲哉(九州大学病院 循環器内科)
  • 砂川 賢二(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科学)
  • 中西 洋一(九州大学大学院 医学研究院 呼吸器内科学)
  • 戸高 浩司(九州大学病院 循環器内科)
  • 桑原 良宇(興和株式会社 製品戦略部 )
  • 辻本 広行(ホソカワミクロン 株式会社 マテリアル事業本部 製薬・美容科学研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ピタバスタチン封入PLGAナノ粒子製剤(NK-104-NP)製剤を開発し、重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療を創出し、実用化のための臨床試験を行い、POCを獲得することである。
研究方法
重症肺高血圧症に対するNK-104-NPの臨床応用に向け、①最適化の研究開発、②安全性試験、③吸入製剤の設計・開発、④探索的臨床試験、を推進した。
結果と考察
肺組織での薬効発現に最適なNK-104-NP、吸入投与に最適な粒子径に複合化したNK-104-NP吸入製剤を作製し、各種肺高血圧症モデル動物におけるNK-104-NP気管内投与の薬効確認、GLP基準による28日間のNK-104-NP静脈内及び気管内反復投与毒性試験等を実施した。また、医師主導治験の開始について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の薬事戦略相談の事前面談を実施した。本研究成果により、まずNK-104-NPの静脈内投与による臨床開発が可能であり、重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療を実用化するためのProof of Concept(POC)取得に向けてのFirst in man試験開始の準備は整ったと考えられる。これを進めると共に、更に低侵襲な肺高血圧症の吸入ナノ医療の実現と、将来的な他疾患への適応拡大を目指し、NK-104-NP吸入製剤の最適化を進める。
現在、唯一、生命予後改善のエビデンスを確立しているプロスタサイクリン持続静注療法と比較して、NK-104-NP静注製剤は、より簡便かつ低侵襲で、肺動脈病変への根本的治療が可能と考えられることから、重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療になると期待される。
結論
本研究成果により、まずNK-104-NPの静脈内投与による重症肺高血圧症治療薬の開発が可能であり、重症肺高血圧症の予後と生活の質を改善するための低侵襲かつ安全安心な吸入ナノ医療を実用化するための、POC取得に向けてのFirst in Man試験開始の準備は整ったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
重症肺高血圧症は細肺動脈の過剰増殖、炎症、収縮、血栓症等を主病変し肺動脈圧上昇や右心不全来す。既存薬はいずれも血管拡張作用を主作用とする姑息的治療薬であり、臨床現場では根本的に肺細動脈病変の進行を阻止し、さらには、治癒に導くことの出来る、より効果的で安全安心な医薬品の実用化が求められていれる。 この課題を解決するために、本研究では、スタチン封入ナノ粒子製剤(ピタバNP)が肺高血圧症の発症予防効果だけで無く、一旦発症した病態を改善するという治療効果を持つことが明らかになった(非臨床POC取得)。
臨床的観点からの成果
ピタバNPのGMP基準治験薬の製造を確立した。注射用製剤と吸入製剤を最適化し検証した。GLP基準で安全性試験を実施し、ピタバNPの安全性に問題が無いことを確認した。第一相臨床試験の実施に向けて、PMDAと薬事戦略相談、事前面談、対面助言を行い合意できた。平成26-28年度に静脈内単回投与試験、静脈内反復投与試験を完了した。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
本研究は先端医療開発スーパー特区の課題であり、臨床橋渡し研究支援プログラムの中核シーズである。これらのプロジェクトの枠組みを活用し、医薬品/医療機器総合機構の薬事戦略相談を進めることが出来た。 全国6カ所の臨床橋渡し研究支援プログラム拠点の報告会議において、このナノ粒子製剤を用いたシーズが全国の拠点の中で「医薬品としてとして薬事法に基づく承認を目指した医師主導治験」まで到達した唯一のシーズであることが報告された。
その他のインパクト
特許登録1件:「スタチン封入ナノ粒子含有医薬組成物」
2011年08月01日 「ナノDDS技術による革新的低侵襲治療的血管新生療法の橋渡し研究」についての記事が日本経済新聞に掲載された。
安倍晋三内閣総理大臣が九州大学病院を視察した際、本シーズを「日本発世界初の心血管病治療用ナノ粒子製剤(医薬品)」として紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
1件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
1件
登録2件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
新聞報道

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakano K, Egashira K, Masuda S, et al.
Formulation of nanoparticle-eluting stents by a cationic electrodeposit coating technology: Efficient and safe nano-drug delivery via bioabsorbable polymeric nanoparticle-eluting stents in porcine coronary arteries.
J Am Coll Cardiol: Cardiovascular Intervention. , 2 (4) , 277-283  (2009)
原著論文2
Koga JI, Matoba T, Egashira K, et al.
Soluble Flt-1 Gene Transfer Ameliorates Neointima Formation After Wire Injury in flt-1 Tyrosine Kinase-Deficient Mice.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. , 133 (2) , 139-143  (2009)
原著論文3
Kubo M, Egashira K, Inoue T, et al.
Therapeutic Neovascularization by Nanotechnology-Mediated Cell-Selective Delivery of Pitavastatin into the Vascular Endothelium.
Atheroscler Thromb Vasc Biol. , 29 (6) , 796-801  (2009)
原著論文4
Kimura S, Egashira K, Chen L, et al.
Nanoparticle-Mediated Delivery of Nuclear FactorκB Decoy Into Lungs Ameliorates Monocrotaline-Induced Pulmonary Arterial Hypertension.
Hypertension. , 53 (5) , 877-883  (2009)
原著論文5
Oda S, Nagahama R, Nakano K, et al.
Nanoparticle-Mediated Endothelial Cell-Selective Delivery of Pitavastatin Induces Functional Collateral Arteries (Therapeutic Arteriogenesis) in a Rabbit Model of Chronic Hindlimb Ischemia.
J Vasc Surg. , 52 (2) , 412-420  (2010)
原著論文6
Chen L, Nakano K, Kimura S, et al.
Nanoparticle-Mediated Delivery of Pitavastatin Into Lungs Ameliorates the Development and Induces Regression of Monocrotaline-Induced Pulmonary Artery Hypertension.
Hypertension. , 57 (2) , 343-350  (2011)
原著論文7
Saito S, Nakayama T, Hashimoto N, et al.
Mesenchymal stem cells stably transduced with a dominant-negative inhibitor of CCL2 greatly attenuate bleomycin-induced lung damage.
Am J Pathol. , 179 (3) , 1088-1094  (2011)
原著論文8
Masuda S, Nakano K, Funakoshi K, et al.
Imatinib Mesylate-Incorporated Nanoparticle-Eluting Stent Attenuates In-Stent Neointimal Formation in Porcine Coronary Arteries.
J Atheroscler Thromb. , 18 (12) , 1043-1053  (2011)
原著論文9
Uchida Y, Takeshita K, Yamamoto K, et al.
Stress Augments Insulin Resistance and Prothrombotic State: Role of Visceral Adipose-Derived Monocyte Chemoattractant Protein-1.
Diabetes. , 61 (6) , 1552-1561  (2012)
原著論文10
Katsuki S, Matoba T, Nakashiro S, et al.
Nanoparticle-Mediated Delivery of Pitavastatin Inhibits Atherosclerotic Plaque Destabilization/Rupture in Mice by Regulating the Recruitment of Inflammatory Monocytes.
Circulation. , 129 (8) , 896-906  (2014)
原著論文11
Akagi S, Nakamura K, Miura D, et al.
Delivery of imatinib-incorporated nanoparticles into lungs suppresses the development of monocrotaline-induced pulmonary arterial hypertension.
Int Heart J. , 56 (3) , 354-359  (2015)
原著論文12
Nagaoka K, Matoba T, Mao Y, et al.
A New Therapeutic Modality for Acute Myocardial Infarction: Nanoparticle-Mediated Delivery of Pitavastatin Induces Cardioprotection from Ischemia-Reperfusion Injury via Activation of PI3K/Akt Pathway and Anti-Inflammation in a Rat Model.
PLoS One. , 10 (7)  (2015)
原著論文13
Akagi S, Nakamura K, Matsubara H, et al.
Intratracheal Administration of Prostacyclin Analogue-incorporated Nanoparticles Ameliorates the Development of Monocrotaline and Sugen-Hypoxia-induced Pulmonary Arterial Hypertension.
J Cardiovasc Pharmacol. , 67 (4) , 290-298  (2016)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128009Z