重症拡張型心筋症へのbridge-to-transplantation/recoveryを目指した新規治療法の開発と実践

文献情報

文献番号
201128008A
報告書区分
総括
研究課題名
重症拡張型心筋症へのbridge-to-transplantation/recoveryを目指した新規治療法の開発と実践
課題番号
H21-難治・一般-219
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮川 繁(大阪大学 医学系研究科)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
  • 松山 晃文(大阪大学 医学部附属病院)
  • 川真田 伸(先端医療振興財団 先端医療センター)
  • 大門 貴志(兵庫医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
323,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性の拡張型心筋症の治療において、これまでの補助人工心臓より心臓移植への橋渡し治療のみでは、限界があるのが現状である。本研究では、筋芽細胞シートの臨床応用の継続を行い、最終的には、その効果の検討と、保険医療化を目指す。
研究方法
 Cell processing centerにて、GMP基準を満たす筋芽細胞を単離し、筋芽細胞シートを作製する。重症心不全患者に対して、筋芽細胞シート移植を行い、治療法の安全性・可能性を検討する。
豚の心不全モデルを作製し、心筋芽細胞を経冠動脈にて細胞を移植し、心機能の改善効果を検討した。
 GMP対応細胞培養施設にてcold runを実施し、製品標準書、製造手順書、製造指図書、製造記録書を策定にむけたデータ収集を行なう。
安全性の観点からの心筋治療法における頻度流の目標症例数の根拠づけ、および安全性の観点からの最適治療レジメンのBayes流逐次推定法の開発とシミュレーションにて、生物統計学的に予備的検討を行い、議論を行う。
結果と考察
重症心不全患者13例に対して、所定量の細胞を培養することが可能であり、うち10例に筋芽細胞シートを移植し、有害事象は観察されなかった。5例のうち3例に左室reverse remodeling効果を認め、全例においてSAS、6分間歩行による生活の質の改善を認めた。
 慢性心不全動物への心筋芽細胞の経冠動脈投与で心機能の改善と長期生存率改善を認め、その重症心不全への有効性を示した。
治験水準の製品標準書、標準手順書、製造指図書・記録書を作成し、当該改定・修正を下にコールドランとして2例実施した。
安全性・効果の視点からの心筋芽細胞移植研究における目標症例数の根拠づけに関する研究、最適移植手順又は最適移植細胞数のBayes流逐次推定法の開発は、高度医療実施、医師主導治験を実施するうえで必要とされるものと思われた。
今後、筋芽細胞シート治療の高度医療化を行う予定であり、本細胞シート治療の企業治験申請も達成した。本研究で開発した"Bridge to Bridge"、 "Bridge to Transplantation"治療をベースとした"Bridge to Recovery"治療を、小児心不全患者にも応用していく予定である。
結論
本プロジェクトにより、細胞シート治療の安全性、可能性が示されるとともに、新しい植え込み型定常流人工心臓と細胞シートを用いた新しい心不全治療の可能性が示され、企業治験につなげることができた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128008B
報告書区分
総合
研究課題名
重症拡張型心筋症へのbridge-to-transplantation/recoveryを目指した新規治療法の開発と実践
課題番号
H21-難治・一般-219
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮川 繁(大阪大学 医学系研究科)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
  • 松山 晃文(大阪大学 医学部附属病院)
  • 川真田 伸(先端医療振興財団 先端医療センター研究所)
  • 大門 貴志(兵庫医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性の拡張型心筋症の治療において、これまでの補助人工心臓より心臓移植への橋渡し治療のみでは、限界があるのが現状である。この限界を克服するために、本研究では、筋芽細胞シートの臨床応用の継続を行い、最終的には、その効果の検討と、保険医療化を目指す。
研究方法
当院にて左室補助人工心臓を装着した4例の拡張型心筋症患者に対して、骨格筋採取を行い、当院未来医療センターのCell processing centerにて、GMP基準を満たす筋芽細胞を単離し、温度応答性培養皿を用いて、筋芽細胞シートを作成する。新規植え込み型定常流人工心臓を装着し、筋芽細胞シート移植を行い、細胞シートによる人工心臓よりの"Bridge to Recovery"を目指す。左室補助人工心臓を装着していない重症心不全患者に対して、筋芽細胞シート移植を行い、治療法の安全性・可能性を検討する。
重症心不全モデルとして豚を選択、心不全モデルを作製した。免疫抑制剤としては、タクロリムスあるいはシクロスポリンを選択し、経冠動脈にて心筋芽細胞を移植し、心機能の改善効果を検討した。
結果と考察
筋芽細胞シートを4名の左室補助人工心臓装着患者に安全に移植した。有害事象を認めず、筋芽細胞シート移植が可能であった。移植した4例のうち、3例において、心機能の向上効果を認め、うち2例は完全に人工心臓より離脱した。
左室補助人工心臓を装着していない心不全患者10例に筋芽細胞シートを移植した。筋芽細胞シートに起因する有害事象は観察されなかった。左室reverse remodeling効果を認め、全例においてSAS、6分間歩行による生活の質の改善を認めた。
免疫抑制化慢性心不全モデルブタを作製、当該動物への心筋芽細胞を経冠動脈投与で心機能の改善と長期生存率改善を認め、その重症心不全への有効性を示した。
今後、拡張型心筋症に対する筋芽細胞シート治療の高度医療化を行う予定であり、当初の目的であった本細胞シート治療の企業治験申請も達成した。さらに、本研究で開発した治療をベースとした"Bridge to Recovery"治療を、小児心不全患者にも応用していく予定である。
結論
本プロジェクトにより、細胞シート治療の安全性、可能性が示されるとともに、新しい植え込み型定常流人工心臓と細胞シートを用いた新しい心不全治療の可能性が示され、企業治験につなげることができた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
基礎的研究から臨床研究まで一貫した研究であり、最終的には企業治験まで達成し、薬事申請を行っている。また、本細胞シート法は他の細胞移植法と比較して、有効性のある極めてユニークな方法であり、我が国初のオリジナルな技術である。また、小児心不全患者にまで適応範囲を広げており、これまで小児心不全に対する再生治療は存在せず、特異性が高いものと思われる。
臨床的観点からの成果
筋芽細胞シート移植により人工心臓を装着した患者2症例が人工心臓より離脱し、現在自宅療養を行っている。また、人工心臓を装着していない患者においても、左室のリバースレモデリング効果が認められたり、また、多数の患者さんで症状の改善効果が認められており、既存の治療法のない心不全患者に対する新しい治療法になる可能性があるものと思われる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
筋芽細胞シート治療法は、本プロジェクトから得た成果をもとに、企業治験を行い薬事申請を行うレベルにまで達した。再生医療系の治療で、日本のオリジナルの技術で保険収載されたものはなく、細胞シートの取り組みは今後の他の再生治療の上市を進める上で、参考にされるものと思われる。
その他のインパクト
新聞各紙にて、筋芽細胞シート治療法が紹介され、また、様々なテレビ局にも取材を受け、マスコミに取り上げられるたびに、患者からの依頼が殺到した。

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
139件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
7件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

特許の名称
シート状細胞培養物回収システムおよび方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-179148
発明者名: 大橋文哉、竹内涼平、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社・国立大学法人大阪大学
出願年月日: 20140903
国内外の別: 国外
特許の名称
シート状細胞培養物回収システムおよび方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-179149
発明者名: 大橋文哉、竹内涼平、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社・国立大学法人大阪大学
出願年月日: 20140903
国内外の別: 国内
特許の名称
シート状培養物とフィブリンゲルとの積層体の製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-179150
発明者名: 竹内涼平、大橋文哉、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社・国立大学法人大阪大学
出願年月日: 20140903
国内外の別: 国内
特許の名称
補強部を有するシート状培養物とフィブリンとの積層体
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-179151
発明者名: 竹内涼平、大橋文哉、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社・国立大学法人大阪大学
出願年月日: 20140903
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kainuma S, Miyagawa S, Sawa Y, et al.
Cell-sheet Therapy with Omentopexy Promotes Arteriogenesis and Improves Coronary Circulation Physiology in Failing Heart.
Mol Ther. , 23 (2) , 374-386  (2014)
doi:10.1038/mt.2014.225
原著論文2
Shudo Y, Miyagawa S, Sawa Y, et al.
Addition of Mesenchymal Stem Cells Enhances the Therapeutic Effects of Skeletal Myoblast Cell-Sheet Transplantation in a Rat Ischemic Cardiomyopathy Model
Tissue Eng Part A. , 20 (3-4) , 728-739  (2014)
doi: 10.1089/ten.tea.2012.0534
原著論文3
Kamata S, Miyagawa S, Sawa Y, et al.
Improvement of cardiac stem cell sheet therapy for chronic ischemic injury by adding endothelial progenitor cell transplantation: analysis of layer-specific regional cardiac function
Cell Transplant , 23 (10) , 1305-1309  (2014)
DOI: http://dx.doi.org/10.3727/096368913X665602
原著論文4
Kainuma S, Sakaguchi T, Saito S, et al.
Implantation of a Jarvik 2000 left ventricular assist device as a bridge to eligibility for refractory heart failure with renal dysfunction.
J Artif Organs , 15 (1) , 83-86  (2011)
DOI: 10.1007/s10047-011-0602-8
原著論文5
Kawamura M, Sakaguchi T, Miyagawa S et al.
Exchange of DuraHeart left ventricular assist device via a subcostal approach.
J Artif Organs , 15 (1) , 87-89  (2011)
DOI: 10.1007/s10047-011-0604-6
原著論文6
Imanishi Y, Sawa Y et al.
Induced adipocyte cell-sheet ameliorates cardiac dysfunction in a mouse myocardial infarction model: a novel drug delivery system for heart failure.
Circulation , 124 (11) , 10-17  (2011)
doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.110.009993.
原著論文7
Shudo Y, Sawa Y et al.
Novel regenerative therapy using cell-sheet covered with omentum flap delivers a huge number of cells in a porcine myocardial infarction model.
J Thorac Cardiovasc Surg. , 142 (5) , 1188-1196  (2011)
doi: 10.1016/j.jtcvs.2011.07.002.
原著論文8
Fujita T, Sawa Y et al.
Clinical impact of combined transplantation of autologous skeletal myoblasts and bone marrow mononuclear cells in patients with severely deteriorated ischemic cardiomyopathy.
Surg Today , 41 (8) , 1029-1036  (2011)
doi: 10.1007/s00595-010-4526-3.
原著論文9
Imanishi Y, Miyagawa S, Saito A et al.
Allogenic skeletal myoblast transplantation in acute myocardial infarction model rats. 
Transplantation. , 91 (4) , 425-431  (2011)
doi: 10.1097/TP.0b013e3182052bca.
原著論文10
Saito S, Sakaguchi T, Miyagawa S et al
Biventricular support using implantable continuous-flow ventricular assist devices.
J Heart Lung Transplant , 30 (4) , 475-478  (2011)
doi: 10.1016/j.healun.2010.11.013
原著論文11
Miyagawa S, Sawa Y et al.
Tissue-engineered cardiac constructs for cardiac repair
Ann Thorac Surg , 91 (1) , 320-329  (2011)
doi: 10.1016/j.athoracsur.2010.09.080.
原著論文12
Miyagawa S, Saito A, Sakaguchi T et al.
Impaired Myocardium Regeneration With Skeletal Cell Sheets-A Preclinical Trial for Tissue-Engineered Regeneration Therapy. 
Transplantation , 90 (4) , 364-372  (2010)
doi: 10.1097/TP.0b013e3181e6f201.
原著論文13
Hata H, Sawa Y et al.
Engineering a novel three-dimensional contractile myocardial patch with cell sheets and decellularised matrix.
Eur J Cardiothorac Surg. , 38 (4) , 450-455  (2010)
doi: 10.1016/j.ejcts.2010.02.009.
原著論文14
Okura H, Matsuyama A, Lee CM et al.
Cardiomyoblast-like cells differentiated from human adipose tissue-derived mesenchymal stem cells improve left ventricular dysfunction and survival in a rat myocardial infarction model.
Tissue Eng Part C Methods. , 16 (3) , 417-425  (2010)
doi: 10.1089/ten.TEC.2009.0362.
原著論文15
Sekiya N, Matsumiya G, Miyagawa S et al.
Layered implantation of myoblast sheets attenuates adverse cardiac remodeling of the infarcted heart.
J Thorac Cardiovasc Surg. , 138 (4) , 985-993  (2009)
doi: 10.1016/j.jtcvs.2009.02.004.
原著論文16
Hoashi T, Matsumiya G, Miyagawa S,et al.
Skeletal myoblast sheet transplantation improves the diastolic function of a pressure-overloaded right heart.
J Thorac Cardiovasc , 138 (2) , 460-467  (2009)
doi: 10.1016/j.jtcvs.2009.02.018.
原著論文17
Miyagawa S, Sawa Y. et al.
Combined autologous cellular cardiomyoplasty using skeletal myoblasts and bone marrow cells for human ischemic cardiomyopathy with left ventricular assist system implantation: report of a case. 
Surg Today. , 39 (39) , 133-136  (2009)
doi: 10.1007/s00595-008-3803-x.
原著論文18
Imanishi Y.Sawa Y et al.
Impact of synovial membrane-derived stem cell transplantation in a rat model of myocardial infarction.
J Artif Organs , 12 (3) , 187-193  (2009)
doi: 10.1007/s10047-009-0465-4.
原著論文19
Hoashi T, Ichikawa H, Fukushima N et al.
Long-term clinical outcome of atrial isomerism after univentricular repair.
J Card Surg. , 24 (1) , 19-23  (2009)
doi: 10.1111/j.1540-8191.2008.00704.x

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-06-10

収支報告書

文献番号
201128008Z