肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症に対する新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201128007A
報告書区分
総括
研究課題名
肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症に対する新規治療法の開発
課題番号
H21-難治・一般-218
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 栄之(慶応義塾大学 医学部)
  • 船越 洋(旭川医科大学 医学部 脳機能医工学研究センター)
  • 中村 雅也(慶応義塾大学 医学部)
  • 安達 喜一(クリングルファーマ株式会社 事業開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
423,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は難病中の難病とされる致死的な神経変性疾患である。世界的にも既に百数十の薬剤が臨床試験に供されてきたが、僅かな延命効果を示すリルゾールただ1剤にとどまっており、新規治療法開発が切望されている。本研究では、本邦発のALS動物モデルで薬効を示した本邦発の神経栄養因子、肝細胞増殖因子(HGF)をALS患者に臨床応用し、第I相臨床試験を開始することを目的とした。
研究方法
(1) 第I相臨床試験の準備と開始、(2) q-space imaging(QSI)による評価法の確立・組織学的所見との比較、(3) 新たなHGF製剤の開発、以上を行った。
結果と考察
(1) 第I相臨床試験の準備と開始:第I相臨床試験に使用する治験薬と希釈液をGMP基準で製造し、安定性を確認した。また、東北大学TRセンター支援のもとでプロトコル開発・プロジェクトマネジメント・モニタリング・監査・データマネジメント・統計解析の体制を整え、治験コーディネーターを育成するとともにGCPを遵守する治験実施体制を確立した。平成23年6月に第I相臨床試験の治験届を医薬品医療機器総合機構に,同年7月には東北大学病院治験審査委員会に提出し承認を得た。現在、東北大学病院において本治験「ALS患者を対象として、SM-1500を用いてKP-100IT を脊髄腔内投与したときの安全性、忍容性および薬物動態を検討する第I相試験」を実施中である。
(2) QSIによる評価法の確立:マーモセット脊髄損傷モデルおよび正常対照動物を対象に組織学的所見との比較検討を経て、脊髄内の神経細胞や髄鞘を可視化できる可能性を示した。
(3) 新たなHGF製剤の開発:原薬製造を行い、第II相試験での使用をめざしたHGF凍結乾燥製剤を新しく開発した。
平成24年度以降、投与症例数を重ねて本試験を完遂し、HGF髄腔内投与による安全性・忍容性および薬物動態に関する臨床データを得る。それをふまえて今後、HGFのALS患者における有効性を探索する第II相臨床試験(いわゆるProof of Concept試験,POC試験)実施をめざし、霊長類を用いた慢性毒性試験を行って長期投与の安全性を確認する必要がある。
結論
本研究の最大目標である第I相臨床試験開始を達成した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201128007B
報告書区分
総合
研究課題名
肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症に対する新規治療法の開発
課題番号
H21-難治・一般-218
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

行政効果報告

文献番号
201128007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、(1) 世界に先駆けて開発した髄腔内投与可能な大型の筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルで見出した治療戦略の臨床応用、(2) 日本で発見された神経栄養因子・肝細胞増殖因子(HGF)の神経疾患に対する世界初の臨床試験実施、(3) 霊長類の脊髄損傷モデルにおけるHGF投与安全性・有効性確認、(5) 新たな脊髄画像評価法q-space imaging開発、といった点で独創性が高い臨床開発を推進した。
臨床的観点からの成果
本研究により、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の齧歯類モデル動物で神経保護効果と生存期間延長効果を示してきた肝細胞増殖因子(HGF)髄腔内投与という治療戦略の臨床応用を着実に推進し、第I相臨床試験を開始できた。神経難病の象徴とされるALSではすでに百数十の薬剤を用い世界的に臨床試験が行われてきたが、きわめて限定的な効果しかない一剤のみ承認されている。このように治療法が切望され絶望的な治療状況にあるALSの新規治療開発を推進できた。研究成果の発展を文献番号201415011Cに記載。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
神経難病の象徴的疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の本治療開発研究は国民の健康と福祉向上に直接つながり、社会的に大きな貢献が期待できる。とくに本邦発のALSモデル動物で薬効を示し、本邦発で特許や製造ノウハウを自ら確保している肝細胞増殖因子(HGF)を用いた臨床応用であり、神経難病における橋渡し研究のプラットフォーム確立も推進した点で意義がある。なお、本研究課題はスーパー特区(中枢神経の再生医療のための先端医療開発特区:代表 岡野栄之)の中でも最先導課題であった。
その他のインパクト
筋肉が動かなくなる難病ALS、新薬治験開始へ 東北大(平成23年6月22日朝日新聞)ALSの進行遅らせる治療薬、東北大が治験へ(平成23年7月8日日本経済新聞)ALS新治療薬 臨床試験へ(平成23年7月10日NHK)他7件のマスコミ報道があった。研究成果の発展を文献番号201415011Cに記載。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
6件
青木正志 筋萎縮性側索硬化症に対するHGF治療 Brain and Nerve 神経疾患の進歩 2012; 64: 245-254. 他
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
青木正志 肝細胞増殖因子によるALSに対する新規治療法の開発 第52回日本神経学会学術大会 シンポジウム 2011年5月20日(名古屋)他
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
1件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
1件
ラットを用いたALSモデル(出願済)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
東北大学プレリリース(平成23年7月8日)「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するHGF(肝細胞増殖因子)による第I相臨床試験の開始について」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Noma S, Ohya-Shimada W, Kanai M, et al.
Overexpression of HGF attenuates the degeneration of Purkinje cells and Bergmann glia in a knockin mouse model of spinocerebellar ataxia type 7.
Neurosci Res , 73 (2) , 115-121  (2012)
10.1016/j.neures.2012.03.001
原著論文2
Kato T, Funakoshi H, Kadoyama K, et al.
Hepatocyte growth factor overexpression in the nervous system enhances learning and memory performance in mice.
J Neurosci Res , 90 (9) , 1743-1755  (2012)
10.1002/jnr.23065

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128007Z