特発性大腿骨頭壊死症の診断・治療・予防法の開発を目的とした全国学際的研究

文献情報

文献番号
201128002A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の診断・治療・予防法の開発を目的とした全国学際的研究
課題番号
H21-難治・一般-168
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 幸英(九州大学 大学院医学研究院整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 松野 丈夫(旭川医科大学 整形外科)
  • 松本 俊夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部プロテオミクス医科学部門生体制御医学講座生体情報内科学)
  • 松本 忠美(金沢医科大学 運動機能病態学 (整形外科学))
  • 渥美  敬(昭和大学藤が丘病院整形外科)
  • 久保 俊一(京都府立医科大学大学院医学研究科運動器機能再生外科学)
  • 竹内  勤(慶應義塾大学医学部内科学)
  • 馬渡 正明(佐賀大学医学部整形外科)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野)
  • 田中 良哉(産業医科大学 第一内科学)
  • 中村 博亮(大阪市立大学大学院医学研究科感覚運動機能大講座 整形外科学)
  • 須藤 啓広(三重大学大学院医学系研究科運動器外科学)
  • 安永 裕司(広島大学 医歯薬学総合研究科 人工関節・生体材料学講座)
  • 大園 健二(関西労災病院 整形外科)
  • 長谷川幸治(名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻運動・形態外科学 整形外科学)
  • 菅野 伸彦(大阪大学大学院医学系研究科 臓器制御医学専攻 器官制御外科学講座)
  • 田中  栄(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 感覚・運動機能医学講座 整形外科学)
  • 山路  健(順天堂大学医学部 膠原病内科)
  • 小林 千益(諏訪赤十字病院 整形外科)
  • 池川 志郎(独立行政法人理化学研究所 分子遺伝学(理化学研究所・ゲノム医化学研究センター)
  • 天野 宏一(埼玉医科大学総合医療センター 内科学・リウマチ学・臨床免疫学)
  • 多田 芳史(佐賀大学医学部内科学講座膠原病・リウマチ内科)
  • 山本 卓明(九州大学大学院医学研究院 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症に対し、正確な診断基準の確立と、機能回復・再生を目指した医療経済学的に合理的で患者のQOL向上に直結する治療法を開発し、最終的には、安全で信頼性の高い骨壊死発生の予防法を開発し、骨壊死の発生の憂いなくステロイド治療を受けれる社会にすることである。
研究方法
全国規模の学際的なアプローチを、基礎医学(疫学、ゲノム、分子生物学担当)および臨床医学(内科、整形外科)の専門家が協力し、以下の研究を行う。
疫学調査による最新の患者動向の把握および発生要因の解明、病態解析、予防法の開発、診断・治療指針の確立、合理的な治療法の確立、研究成果の普及、である。
結果と考察
疫学調査では、過去37年にわたり継続してきた世界最大の新患症例データベースである定点モニタリングを継続して記述疫学特性の経年変化を解析し、多角的に患者像比較を行った。さらに、新たな症例・対照研究を開始した。
診断基準においては、新たに除外診断に大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折を含めたものを作成した。また、臨床におけるステロイド性骨壊死の発生予防法開発にむけて、参加予定の6施設において倫理審査委員会の承認を得る作業を開始した。
人工物置換術の登録監視システムによる調査を継続し、研究班参加整形外科25施設の過去14年間(1996年1月~2010年12月)に行われたIONに対する初回人工物置換術2,908関節を登録し、その概要を明らかにした。
結論
疫学調査では順調に症例数が蓄積され、本症例数は世界一である。また、病態解析では、ステロイド性骨壊死の発生率に成熟家兎と未成熟家兎とでは差がある(未成熟は有意に低い)ことが確認されるなど、骨壊死の病態解明が進んでいる。さらに、ゲノム解析にむけた症例収集も進んでおり、研究は順調に進められており、本年度における目標は達成できており、今後の更なる発展が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201128002B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の診断・治療・予防法の開発を目的とした全国学際的研究
課題番号
H21-難治・一般-168
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 幸英(九州大学 大学院医学研究院整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 松野 丈夫(旭川医科大学 整形外科)
  • 松本 俊夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部プロテオミクス医科学部門生体制御医学講座生体情報内科学)
  • 松本 忠美(金沢医科大学 運動機能病態学 (整形外科学))
  • 渥美  敬(昭和大学藤が丘病院整形外科)
  • 久保 俊一(京都府立医科大学大学院医学研究科運動器機能再生外科学)
  • 竹内  勤(慶應義塾大学医学部内科学)
  • 馬渡 正明(佐賀大学医学部整形外科)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野)
  • 田中 良哉(産業医科大学 第一内科学)
  • 中村 博亮(大阪市立大学大学院医学研究科感覚運動機能大講座 整形外科学)
  • 須藤 啓広(三重大学大学院医学系研究科運動器外科学)
  • 安永 裕司(広島大学 医歯薬学総合研究科 人工関節・生体材料学講座)
  • 大園 健二(関西労災病院 整形外科)
  • 長谷川幸治(名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻運動・形態外科学 整形外科学)
  • 菅野 伸彦(大阪大学大学院医学系研究科 臓器制御医学専攻 器官制御外科学講座)
  • 田中  栄(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 感覚・運動機能医学講座 整形外科学)
  • 山路  健(順天堂大学医学部 膠原病内科)
  • 小林 千益(諏訪赤十字病院整形外科)
  • 池川 志郎(独立行政法人理化学研究所・ゲノム医化学研究センター・骨関節疾患研究チーム)
  • 天野 宏一(埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科)
  • 多田 芳史(佐賀大学医学部内科学講座膠原病・リウマチ内科)
  • 山本 卓明(九州大学大学院医学研究院整形外科)
  • 進藤 裕幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科発生分化機能再建学講座構造病態整形外科学(平成22年度まで))
  • 長澤 康平(佐賀大学医学部膠原病リウマチ内科(平成22年度まで))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症は、若年成人に好発する原因不明の難病である。また、本症の約半分は、ステロイド剤投与に関連して発生するとされている。今後もステロイド剤使用の増加が見込まれ、それに伴い本疾患が増加することが予想される。本研究の目的は、ステロイド性骨壊死の憂いなくステロイド治療を受けれる時代を導くことである。
研究方法
疫学・病態・診断・治療・予防の5項目について、公衆衛生、基礎、臨床(内科、整形外科)の各分野のトップレベルの専門家からなる23名の分担研究者による全国規模の学際的研究をオールジャパン体制で行った。
結果と考察
研究期間の3年間で、数多くの成果が得られた。まず特筆すべきは、疫学解析において、わが国における本症の発生率が100万人あたり2.51人であることを世界で初めて報告したことである。本知見は、医療費負担を行っている本症の経年的変化の解析を可能とし、医療費補助の判断材料ともなる極めて有用なデータと考えられる。さらに世界初の試みである、ステロイド・アルコール以外の本症発生関連危険因子の検索を目的とした症例・対照研究を全国レベルで開始した。また、病態解析においては、本研究班において確立されたステロイド誘発骨壊死モデルを用いた解析を進めた結果、各種予防薬剤(抗血小板薬、スタチン製剤、抗酸化剤、抗攣縮薬、など)によるステロイド性骨壊死発生予防効果が実証され、臨床におけるステロイド性骨壊死予防の臨床試験を開始できるまでになった。さらに、世界に先駆けて全国規模でのゲノム解析にも着手した。
結論
本症に対する、全国規模の多施設による学際的研究は世界にも類をみない研究体制であり、世界をリードする成果を数多く発信しており、世界的にも注目を浴びており、今後もさらなる発展が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
疫学調査により、我が国における特発性大腿骨頭壊死症の発生率を100万人あたり2.51人であることを世界で初めて報告した。また、世界初の試みである、ステロイド・アルコール以外の本症発生関連危険因子の検索を目的とした症例・対照研究を全国レベルで開始した。さらに、本研究班で開発されたステロイド性骨壊死動物モデルを用いた病態解析を進めた結果、凝固異常、脂質代謝異常、酸化ストレスの関与を明らかにした。
臨床的観点からの成果
本症に対する世界最大規模の人工物置換術の登録監視システムの解析を行った結果、過去15年間に行われた2,908関節から臨床情報が得られ、術後脱臼と臨床的破綻、および危険因子を明らかにした。また、ステロイド性大腿骨頭壊死症の予防研究として、世界に先駆けて全国6施設による共同研究として、全身性エリテマトーデス患者に対するステロイド治療時に、予防薬剤を併用する臨床試験の準備を開始した。
ガイドライン等の開発
本症の診断基準および臨床調査個人票の改訂を行った(特に鑑別疾患についての充実を図った)。
さらに、重篤副作用疾患別対応マニュアル(日本利益情報センター)における特発性大腿骨頭壊死症について、ガイドラインを作成した。 
その他行政的観点からの成果
わが国における本症の発生率が100万人あたり2.51人であることを世界で初めて報告したことは、医療費負担を行っている本症の経年的変化の解析を可能とし、医療費補助の判断材料ともなる極めて有用なデータと考えられる。また、診断基準における鑑別疾患をより明確にしたことは、本症に対する医療費補助の観点からも有意義な成果と考えられる。

その他のインパクト
本症に対する市民啓発活動の一環として、一般市民向けの難病講演会を開催し、本症の病態、治療についての理解、普及に努めた。さらに、大腿骨頭壊死症に関する国際会議(ARCO)にも参加し、日本における研究の現状を報告、意見交換を行った。

発表件数

原著論文(和文)
99件
原著論文(英文等)
362件
その他論文(和文)
165件
その他論文(英文等)
15件
学会発表(国内学会)
91件
学会発表(国際学会等)
49件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
骨切りガイド:特許第4417303号、平成21年12月4日、特許権者 長谷川幸治 他1名
その他成果(施策への反映)
1件
重篤副作用疾患別対応マニュアル
その他成果(普及・啓発活動)
1件
市民向け難病講演会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Motomura G, Yamamoto T, Inoue S, et al.
Subclinical infection associated with delayed union after transtrochanteric rotational osteotomy.
Orthop Res Rev , 4 , 5-8  (2012)
原著論文2
Yamaguchi R, Yamamoto T, Motomura G, et al.
Effects of an antiplatelet drug on the prevention of steroid-induced osteonecrosis in rabbits
Rheumatology (in press)  (2012)
原著論文3
Iwasaki K, Yamamoto T, Motomura G, et al.
Prognostic factors associated with a subchondral insufficiency fracture of the femoral head.
Br J Radiol (BJR) (in press)  (2012)
原著論文4
Motomura G, Yamamoto T, Yamaguchi R, et al.
Morphological analysis of collapsed regions in osteonecrosis of the femoral head.
J Bone Joint Surg Br , 93 , 184-187  (2011)
原著論文5
Yamaguchi R, Yamamoto T, Motomura G, et al.
Incidence of non-traumatic osteonecrosis of the femoral head in the Japanese population
Arthritis Rheum , 63 , 3169-3173  (2011)
原著論文6
Ikemura S, Yamamoto T, Motomura G, et al.
Lipid metabolism abnormalities in alcohol-treated rabbits: a morphometric and haematologic study comparing high and low alcohol doses
Int J Exp Pathol , 92 , 290-295  (2011)
原著論文7
Iwasaki K, Yamamoto T, Motomura G, et al.
Subchondral insufficiency fracture of the femoral head in young adults.
Clinical Imaging , 35 , 208-213  (2011)
原著論文8
Yamaguchi R, Yamamoto T, Motomura G, et al.
MRI-detected Double Low-Intensity Bands in Osteonecrosis of the Femoral Head
J Orthop Science , 16 , 471-475  (2011)
原著論文9
Ikemura S, Yamamoto T, Nishida K, et al.
Gender difference in the development of steroid-induced osteonecrosis in rabbits.
Rheumatology , 49 , 1128-1132  (2010)
原著論文10
Motomura G, Yamamoto T, Suenaga K, et al.
Long-term outcome of transtrochanteric anterior rotational osteotomy for osteonecrosis of the femoral head in patients with Systemic Lupus Erythematosus.
Lupus , 19 , 860-865  (2010)
原著論文11
Ikemura S, Yamamoto T, Motomura G, et al.
MRI evaluation of collapsed femoral heads in patients 60 years old or older: Differentiation of subchondral insufficiency fracture from osteonecrosis of the femoral head.
Am J Roentgenol (AJR) , 195 , 63-68  (2010)
原著論文12
Yamamoto T, Schneider R, Iwamoto Y, et al.
Bilateral rapidly destructive arthrosis of the hip joint resulting from subchondral fracture with superimposed secondary osteonecrosis.
Skeletal Radiol , 39 , 189-192  (2010)
原著論文13
Yamamoto T, Iwasaki K, Iwamoto Y.
Transtrochanteric rotational osteotomy for a subchondral insufficiency fracture of the femoral head in young adults.
Clin Orthop Relat Res , 468 , 3181-3185  (2010)
原著論文14
Yamamoto T, Ikemura S, Iwamoto Y, et al.
The repair process of osteonecrosis after a transtrochanteric rotational osteotomy.
Clin Orthop Relat Res , 468 , 3186-3191  (2010)
原著論文15
Zhao G, Yamamoto T, Ikemura S, et al.
Radiological outcome analysis of transtrochanteric curved varus osteotomy for osteonecrosis of the femoral head at a mean follow-up of 12.4 years.
J Bone Joint Surg Br , 92 , 781-786  (2010)
原著論文16
Zhao G, Yamamoto T, Ikemura S, et al.
A histopathological evaluation of a concave-shaped low-intensity band on T1-weighted MR images in a subchondral insufficiency fracture of the femoral head
Skeletal Radiol , 39 , 185-188  (2010)
原著論文17
Fukushima W, Fujioka M, Kubo T, et al.
Nationwide epidemiologic survey of idiopathic osteonecrosis of the femoral head.
Clin Orthop Relat Res , 468 , 2715-2724  (2010)
原著論文18
Sakaguchi M, Tanaka T, Fukushima W,et al.
Impact of oral corticosteroid use for idiopathic osteonecrosis of the femoral head: a nationwide multicenter case-control study in Japan.
J Orthop Sci , 15 , 185-191  (2010)
原著論文19
Ikemura S, Yamamoto T, Nakashima Y,et al.
Transtrochanteric anterior rotational osteotomy for osteonecrosis of the femoral head in patients 20 years of age or younger.
J Pediatr Orthop , 29 , 219-223  (2009)
原著論文20
Iwasaki K, Yamamoto T, Nakashima Y, et al.
Subchondral insufficiency fracture of the femoral head after liver transplantation.
Skeletal Radiol , 38 (9) , 925-928  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
65,000,000円
(2)補助金確定額
65,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 29,016,489円
人件費・謝金 932,600円
旅費 7,265,340円
その他 12,785,942円
間接経費 15,000,000円
合計 65,000,371円

備考

備考
差異の出所:自己資金206円、利息165円

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-