文献情報
文献番号
201127007A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疼痛の実態の解明と対応策の開発に関する研究
課題番号
H23-痛み・指定-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牛田 享宏(愛知医科大学 医学部 学際的痛みセンター)
研究分担者(所属機関)
- 柴田 政彦(大阪大学大学院 医学系研究科 疼痛医学寄付講座)
- 山下 敏彦(札幌医科大学 医学部 整形外科教室)
- 平田 仁(名古屋大学 医学部 整形外科)
- 片山 容一(日本大学 医学部 脳神経外科)
- 井関 雅子(順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座)
- 内田 研造(福井大学 医学部 整形外科)
- 神谷 光広(愛知医科大学 医学部 整形外科学教室)
- 細井 昌子(九州大学病院 心療内科 九州大学大学院医学研究院)
- 柿木 隆介(自然科学研究機構生理学研究所)
- 河野 達郎(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
- 佐藤 純(名古屋大学 環境医学研究所 近未来環境シミュレーションセンター)
- 中塚 映政(関西医療大学 保健医療学部)
- 橋本 亮太(大阪大学大学院大阪大学 金沢大学 浜松医科大学連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター・大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座精神医学教室)
- 中村 裕之(金沢大学 医薬保健研究域医学系 環境生態医学・公衆衛生学)
- 田倉 智之(大阪大学大学院 医学系研究科 医療経済産業政策学寄附講座)
- 安田 哲行(大阪大学大学院 医学系研究科内分泌・代謝内科学)
- 鈴木 重行(名古屋大学 医学部 保健学科)
- 小林 章雄(愛知医科大学 医学部 衛生学講座)
- 大森 豪(新潟大学研究推進機構超域学術院 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性の痛みは、患者の苦悩や生活の質を損なう大きな要因となっている。器質的要因だけでなく、精神心理学的な要因が慢性化に関与していることもあり、その実態は未だ判っていない部分も多い。これまで慢性の痛みを有する患者に対する対応は、各診療科が個別に行ってきているが、症状の十分な改善や満足が得られず、しばしばドクターショッピングなどに至ることが指摘されている。そこで本研究では難治数の慢性痛を中心に疫学調査を行い実態の把握を行うと同時に基礎的研究を行うことで慢性痛の治療や予防につなげていきたい。
研究方法
1)慢性痛患者の全国推計などを算出する疫学研究は、地域研究で慢性痛の全体像を調査すると同時に、難治性の痛み疾患のうち重要性が高いと考えられる①難治性運動器痛(Failed Back Surgery Syndrome、術後痛など)、②糖尿病性神経障害に伴う痛み、③精神心理的要素が主な原因と考えられる痛み、④パーキンソン病に伴う痛みについて調査を行った。
2)痛みの共通なメカニズムに対する基礎的研究
3)“痛みセンター連絡協議会”を設立し、痛みの包括的な診療体制を考えるための調査研究を行った。
2)痛みの共通なメカニズムに対する基礎的研究
3)“痛みセンター連絡協議会”を設立し、痛みの包括的な診療体制を考えるための調査研究を行った。
結果と考察
腰、肩、膝といった運動器の痛みの頻度が高く、難治性疼痛とされる線維筋痛症や帯状疱疹などの頻度は1%前後であることなどが明らかとなった。慢性痛の多くは精神心理的な要素が多く関与していることも判ったが、特に事故による慢性痛ではそれが顕著であった。痛みの慢性化や治療法の開発に関わる基礎的研究は脊髄後角細胞などを焦点にして行ったが、活性酸素種の関与が示され、NMDA受容体に作動する抗うつ剤の疼痛治療に関する可能性が示された。また、慢性痛には自律神経系の変容が引き起こされていることが示された。
結論
慢性痛はからだの器質的な問題に加えて、心理的・社会的な要因が非常に大きく関与していることが判った。患者の持つ課題を多方面から分析して治療に結びつけるためには集学的なアプローチが必要であることが考えられる。基礎的な研究からは慢性痛モデル動物において脊髄後角細胞を中心に痛みのメカニズムが研究されてきているが、ヒトの慢性痛にその結果をどの様に活かしていくかは大きな課題であり、更にトランスレーショナルを推進していく必要があるものと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2012-06-07
更新日
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