文献情報
文献番号
201127006A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性神経因性疼痛の基礎疾患の解明と診断・治療精度を向上させるための研究
課題番号
H23-痛み・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
池田 修一(国立大学法人 信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 岩崎 倫政(国立大学法人 北海道大学 大学院医学研究科)
- 川真田 樹人(国立大学法人 信州大学 医学部)
- 平田 仁(国立大学法人 名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 神田 隆(国立大学法人 山口大学 大学院医学系研究科)
- 長櫓 巧(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科)
- 高嶋 博(国立大学法人 鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性神経因性疼痛の原因として多発神経炎、腕神経叢・腰仙骨神経叢の炎症、手根管症候群などが挙げられる。本研究では難治性神経因性疼痛の基礎疾患を明らかにし、その治療法を確立することを目指す。
研究方法
今年度はi) 手根管症候群 (CTS) の疼痛の発生機序の解明、手術後の機能改善度の評価、ii) 現在ある複合性局所疼痛症候群 (CRPS) の診断基準の問題点、iii) 疼痛を主訴とする末梢神経炎の基礎疾患の検索と病態解析、の3点を重点的に取り組んだ。
結果と考察
i) CTSの成因として手根管部における正中神経の機械的圧迫が重視されているが、岩崎らは血流障害に着目して、造影剤を併用した超音波検査法の開発に着手した。また平田らはラットを対象にCTSの動物モデルを作成しており、その過程で末梢部における神経絞扼が中枢部である後根神経節内において神経成長因子の発現を増加させることを示した。加藤らはCTS対する手術療法の治療効果を患者立脚点から107名を対象に評価し、術後6ヶ月の時点で神経機能、神経伝導速度の改善が期待どおりでない患者が一定の割合で存在することを明らかにした。ii) 長櫓は本年度診察した5名のCRPS患者が全て発症後5年以降の受診であり、患肢は機能を廃絶していたことを報告した。川真田はCRPSに対する交感神経ブロックの有用性を9文献報告から検討して、3編で疼痛軽減に有用との結論を出していると報告した。iii) 神田、高嶋、池田は四肢の疼痛を初発として発症する末梢神経障害として、糖尿病、神経サルコイドーシス、悪性リンパ腫に注目して、その病態を報告した。また徳田はこうした病態の成因として血清中のサイトカイン・プロファイルに着目することの重要性を指摘した。加藤は上肢の激烈な痛みで発症する前・後骨間神経麻痺の成因と治療法を確立する目的で、多施設前向き研究を計画した。各群50名を目標としており、既に19の専門施設が参加を表明した。池田は神経痛性筋萎縮症の診断法としてSTIR法による腕神経叢のMRIの有用性を報告した。13名中7名で異常信号が検出され、6名では上神経幹に病変が限局しており、神経障害の臨床像と対応していた。
結論
今年度は難治性神経因性疼痛を引き起す主な基礎疾患を列挙し、その成因解明への方向付けができた。いずれの疾患も現時点では発症早期の診断がなされていない。
公開日・更新日
公開日
2012-06-07
更新日
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