ドナーとレシピエントの双方を改変した、骨髄非破壊的新規造血幹細胞移植法の開発基盤研究

文献情報

文献番号
201126044A
報告書区分
総括
研究課題名
ドナーとレシピエントの双方を改変した、骨髄非破壊的新規造血幹細胞移植法の開発基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-免疫・若手-022
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田代 克久(独立行政法人医薬基盤研究所創薬基盤研究部幹細胞制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,294,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血幹細胞移植は白血病等の血液疾患の根治療法として実施されているが、高齢者や合併症をもった患者(レシピエント)へ適応例は少ない。それは、全身放射線照射等の移植前処理はレシピエントへの負担が大きいためである。また、この前処理によりレシピエント骨髄の造血幹細胞ニッチ(niche:本来の居場所)が破壊されることも推察されることから、骨髄非破壊的な造血幹細胞移植法の開発が必要不可欠である。一方、骨髄非破壊状態では骨髄に多くの血液細胞が残存しているためドナー造血幹細胞の生着率が低下することが懸念される。したがって、造血幹細胞移植の適応を拡大するには、骨髄非破壊的、かつ高生着を可能とする造血幹細胞移植法の開発が重要である。そこで本研究では、アデノウイルス(Ad)ベクターを用いて機能遺伝子を導入することにより造血幹細胞の機能を増強する(ドナーの改変)とともに、レシピエントの骨髄内環境を操作する(レシピエントの改変)ことにより、骨髄破壊を伴わない新規造血幹細胞移植法の基盤技術を開発する。
研究方法
1.ドナー造血幹細胞の機能改変を行うため、GFPを発現する種々の改良型Adベクターを用いてヒトCD34陽性細胞へ効率良く遺伝子導入可能なAdベクターの最適化を行った。2.レシピエント骨髄環境を非破壊的に改変する分子としてG-CSFならびにVEGFを選択し、これらを発現するAdベクターを作製した。作製したAdベクターをマウスへ投与した際の骨髄細胞の動態をフローサイトメトリーにより解析した。
結果と考察
1.細胞表面のCD46を認識する改良型Adベクター(AdF35ベクター)を用いることで、ヒトCD34陽性細胞へ効率良く遺伝子導入できることが確認された。2.G-CSFまたはVEGFを発現するAdベクターをマウスへ投与したところ、骨髄中の造血幹細胞・血液前駆細胞数が有意に減少し、その一方で末梢組織ではこれらの細胞数が増加していた。また、G-CSFとVEGFを共投与することにより、造血幹細胞の末梢組織への遊離作用が増強されることが明らかとなった。
結論
上記の結果は、骨髄非破壊的造血幹細胞移植法の開発のための重要な知見となると思われる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201126044Z