HLA不適合血縁者間移植の安全性および有効性向上のための包括的研究

文献情報

文献番号
201126031A
報告書区分
総括
研究課題名
HLA不適合血縁者間移植の安全性および有効性向上のための包括的研究
課題番号
H23-免疫・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神田 善伸(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 啓恭(兵庫医科大学 医学部)
  • 千葉 滋(筑波大学 医学部)
  • 谷口 修一(虎の門病院 血液内科)
  • 田中 淳司(北海道大学 医学部)
  • 平家 勇司(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 一戸 辰夫(佐賀大学 医学部)
  • 高橋 義行(名古屋大学 医学部)
  • 前田 嘉信(岡山大学 医学部)
  • 森田 智視(横浜市立大学 医学部)
  • 熱田 由子(名古屋大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,337,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HLA適合ドナーがいない患者のためにHLA不適合血縁者間移植が開発されている。国内では体外でのT細胞除去を行わない(非T細胞除去)独自のHLA不適合移植方法に関する世界の最先端の開発研究が行われている。本研究では様々な方法で行われているHLA不適合移植の利点、欠点を明確にするとともに、臍帯血移植との優劣についても評価し、さらにHLA不適合移植の治療成績を改善するための基礎的な研究、医療費、薬剤の保険適応外使用の対策、ガイドラインの発表を含め、包括的な研究を行う。
研究方法
平成23年度は、後述する様々な手法によるHLA二抗原以上不適合移植法の臨床試験を遂行した。非介入の臨床研究としては造血細胞移植学会データベース用いた大規模な移植成績の解析を行った。基礎研究ではHLA不適合移植後の最大の問題である免疫回復の遷延について、移植後に問題となりやすい病原微生物や腫瘍抗原に対する特異的な免疫能の質的、量的評価を行う系を確立した。
結果と考察
母子間免疫寛容を利用したHLA不適合移植は佐賀大学における臨床試験として進行している。強力免疫抑制剤を併用したHLA不適合移植は体内T細胞除去薬をサイモグロブリンに変更し、その投与量を徐々に減量する臨床試験に移行している。アレムツズマブを用いたHLA不適合移植は医師主導治験が終了し、アレムツズマブ減量の自主臨床試験を開始した。体外でCD34陽性細胞を選択したHLA不適合移植およびHSV-TK遺伝子導入リンパ球輸注療法の臨床試験は国立がん研究センター中央病院で進行している。
 後方視的研究については、日本造血細胞移植学会データベースを用いた解析でHLA一抗原不適合血縁者間移植の成績がHLA適合非血縁者間移植よりも有意に劣ることを示した。この研究に基づいてHLA一抗原不適合血縁者間移植の治療成績改善のための前方視的臨床試験を計画している。
特異的免疫能の評価系についてはサイトメガロウイルスおよびEBウイルスに特異的に働く細胞傷害性T細胞をテトラマーによって同定する系が確立された。
以上のように本研究班の初年度の研究は前方視的臨床試験、後方視的臨床研究、基礎的研究のいずれにおいても順調な進捗を示している。
結論
HLA不適合移植の有用性を明らかにすることで、骨髄バンク、さい帯血バンクのドナープール拡大の負担を軽減することが期待できる。また、様々なHLA不適合移植法の利点、欠点を明確にするとともに、臍帯血移植との優劣についても評価し、診療現場での治療選択に役立つ情報を提供する。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201126031Z