アトピー性皮膚炎の発症・症状の制御および治療法の確立普及に関する研究

文献情報

文献番号
201126030A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の発症・症状の制御および治療法の確立普及に関する研究
課題番号
H23-免疫・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 玉利真由美(理化学研究所ゲノム医科学研究センター呼吸器疾患研究チーム)
  • 中村晃一郎(埼玉医科大学皮膚科)
  • 大矢幸弘(国立成育医療研究センター内科系専門診療部アレルギー科)
  • 稲垣直樹(岐阜薬科大学 機能分子学大講座 薬理学研究室)
  • 菅谷 誠(東京大学大学院医学系研究科 皮膚科学)
  • 佐伯秀久(東京慈恵会医科大学皮膚科)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学)
  • 高森建二(順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院皮膚科学)
  • 相馬良直(聖マリアンナ医科大学皮膚科学)
  • 浜崎雄平(佐賀大学医学部小児科学)
  • 竹内 聡(九州大学病院皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アトピー性皮膚炎の増悪因子でもある“炎症性痒みメカニズム”の解明のため、我々は免疫・神経生理学的方面双方からアトピー性皮膚炎のかゆみの病態の理解と制御をすすめたい。またアトピー性皮膚炎治療の標準化と普及のため、本研究結果も含め一般・患者向け教育ウェブサイトのアップデートを行う。
研究方法
基礎研究では、マウス・ラット、培養細胞系を用いて掻痒モデルの開発、かゆみ知覚およびアトピー性皮膚炎と治療薬の抗かゆみメカニズムの解明を行った。
臨床研究では、2001年から行っている九州大学石垣島児童検診コホート(KIDS)での検診、アンケート、採血検査、ADが睡眠や就労に与える影響、ADのかゆみと相関する生理活性物質の同定、ADのかゆみの理解とその対策、ADの汗アレルギー解析とスキンケア方法の開発、ADのかゆみにおける樹状細胞の役割に関する研究、小児ADに対するproactive治療に関する研究を行った。

結果と考察
基礎研究ではsiRNAを用いた痒み抑制検証モデルを開発した。また、新薬候補としてSema3A軟膏の皮膚バリア機能、掻破行動、皮膚炎の改善能を確認した。IgEやIL-17 上昇の抑制を介したタクロリムス(FK)の抗かゆみ効果の可能性が示唆された。またかゆみ特異的神経の同定と上位伝達ニューロン分布の決定した。ADとTh2因子IL-33の関連様式を明らかにした。いずれも臨床応用が期待される。
KIDS解析では卵アレルギーと重症度との関わりが示唆され、遺伝子SNP解析でTh2ケモカインMDC、C11orf30、TNFRSF6B領域に強い関連を認めた。日本人で約7割を占める、フィラグリン遺伝子変異のないAD患者での発症メカニズムとして注目される。
臨床的研究では重症のAD患者ほど仕事の生産性および活動障害が障害され、かゆみの相関マーカーとして血中TARCが同定された。TARC産生細胞として樹状細胞が見出され、AD患者由来の樹状細胞からは前述のMDC産生能に有意な上昇がみられることを確認した。また、AD悪化因子である汗抗原を不活化するタンニン酸配合入浴剤を開発したので臨床に応用したい。
結論
平成23年度の本研究によって基礎的、臨床的に多くの新知見が得られ、一部は近く臨床応用の可能性が高いものも含まれる。これらの新知見も踏まえながら、患者教育ウェブサイトの充実を図りたい。        

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201126030Z