皮膚バリア障害によるアレルギーマーチ発症機序解明に関する研究

文献情報

文献番号
201126013A
報告書区分
総括
研究課題名
皮膚バリア障害によるアレルギーマーチ発症機序解明に関する研究
課題番号
H22-免疫・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菅井 基行(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 工藤 純(慶應義塾大学 医学部 )
  • 加藤 則人(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 浅野 浩一郎(慶應義塾大学 医学部 )
  • 松井 毅(京都大学 物質-細胞統合システム拠点 (iCeMS))
  • 海老原 全(慶應義塾大学 医学部 )
  • 久保 亮治(慶應義塾大学 医学部 )
  • 永尾 圭介(慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
31,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、皮膚バリア機能障害の観点から、アレルギーマーチを起こすアトピー性疾患の発症に関する病態解明を行い、皮膚バリア機能補正によるアレルギー疾患発症抑制・予防への分子基盤を確立する。フィラグリン欠損に伴う角層バリア機能障害に起因するアレルギーマーチ発症機序を解明するとともに、フィラグリン以外のアトピー性疾患発症新規因子を同定する。
研究方法
フィラグリンKOマウスを用いて、テープストリップ法により角層の物理的脆弱性を検討する。ダニ抽出抗原による経皮感作を施行後、同種抗原溶液の点鼻吸入による気道過敏性を検討する。臨床分離株代表株200株から選択した数株を用いて、フィラグリンKO新生児マウスの皮膚に対する付着性・固着性の検討を行う。
結果と考察
フィラグリンが欠損することのより、角層下層に見られ、角層構造を補強していると考えられているケラチンパターンが消失しており,物理的に角層構造が脆弱になっていることが明らかとなった。経皮的なダニ抗原感作によってTh17サイトカイン発現と遷延性の好酸球性気道炎症、IgE抗体産生、気道粘液産生が、フィラグリンKOマウスは野生型に比べて亢進していた。皮膚におけるフィラグリン欠損の有無が、肺における気道炎症の性質に影響を与えることが初めて示された。さらに、アトピー性皮膚炎患者から分離された黄色ブドウ球菌株は、野生型マウスに比べ、著しく強くフィラグリンKOマウス皮膚に固着していることが示された。プロフィラグリンの分解異常を示すSASPase欠損無毛マウスにおいて、天然保湿因子は正常でありながら、乾燥皮膚を呈することが示された。SASPase欠損無毛マウスは、乾燥皮膚に至る新しい分子機構を解明する上で、有用なツールとなる。ランゲルハンス細胞は,TJの外側から捕捉した細菌毒素に対して中和活性を示すIgG抗体産生を誘導し,皮膚の構造を保ちながら外来抗原に対して免疫応答を成立させることを明らかにした。マウスのみならず、ヒト皮膚においても、TJバリアを3次元的に観察する方法論を確立し,アトピー性皮膚炎皮膚において、LCとIDECは表皮内で異なる位置に存在し,LCはTJを超えて樹状突起を伸ばすが、IDECは主に水平方向に樹状突起を伸ばすことが観察された。
結論
本研究の成果により、アレルギーマーチを起こすアトピー性疾患の発症機序において、皮膚バリア障害による持続的経皮免疫が根本的な要因であることを示す確固たる免疫学的基盤が確立されつつある。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201126013Z