スギ花粉症に対する舌下免疫療法の有効性、効果予測法の確立研究

文献情報

文献番号
201126007A
報告書区分
総括
研究課題名
スギ花粉症に対する舌下免疫療法の有効性、効果予測法の確立研究
課題番号
H21-免疫・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中山 俊憲(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 保之(独立行政法人 理化学研究所)
  • 岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 櫻井 大樹(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,313,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
舌下免疫療法の標準治療への展開をはかるために、治療効果予測因子の解明、より安全性が高く有効性が高いことが期待される人工スギ抗原の実用化を目指した検討、さらに難治性気道炎症への関与が注目されるCD69分子について特徴を明らかにする。
研究方法
1、舌下免疫療法開始後8週間で変動する遺伝子の網羅的解析から、効果予測遺伝子発現として遺伝子の検出と検証を行う.
2、花粉飛散室を用いてスギ花粉舌下免疫療法の有効性の検証を行う.
3、CD69分子のアレルギー性鼻炎、気道炎症での作用についてマウスを用いた検討から明らかにする.
4、NKT細胞のリガンドを含むリポソームワクチンの有用性についてマウスを用いた検討から明らかにする。
結果と考察
1、 舌下免疫療法開始後8週間で変動する遺伝子の網羅的解析から、効果予測遺伝子発現として期待される遺伝子が明らかになった。
2、 新花粉飛散室を用いたスギ花粉曝露による検討から、スギ花粉舌下免疫実薬群の有効性が確認された。ヒノキ花粉曝露ではスギ花粉舌下免疫の有効性は確認できなかった.
3、 抗CD69抗体投与あるいはCD69欠損マウスの検討からCD69分子は活性化により好酸球性気道炎症の形成に関与すること、ヒトCD69発現Th2細胞へのヒト化CD69抗体投与によりTh2細胞の抑制にも直接作用することが確認された。アレルギー性鼻炎患者鼻粘膜においても多数のCD69 抗体陽性細胞が確認された.
4、 リポソームワクチンはマウスを用いたin vitroの検討で効率良くスギIgE抗体の産生抑制に作用し、制御性T細胞の誘導に作用した.
結論
スギ花粉症に対する舌下免疫療法の効果予測因子として有望な遺伝子を同定した。花粉飛散室を用いた検討からヒノキ花粉症に対するスギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法の有効性の限界が示唆された。NKT細胞のリガンドを含むリポソームワクチンは今後の新しいアレルギー疾患に対する国産のワクチンアジュバントとして期待される.、スギ花粉主要T細胞エピトープの連結ペプチド人工スギ花粉、あるいはCry j1/2融合蛋白を取り込ませることでスギ花粉症に対する新たな免疫療法の展開が期待される。また、CD69分子の花粉症の重症化への関与から、抗CD69抗体を用いた抗体治療、舌下免疫療法でのバイオマーカーとしてのCD69分子の検証が進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201126007B
報告書区分
総合
研究課題名
スギ花粉症に対する舌下免疫療法の有効性、効果予測法の確立研究
課題番号
H21-免疫・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中山 俊憲(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 保之(独立行政法人 理化学研究所)
  • 岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 櫻井 大樹(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スギ花粉症に対する舌下免疫療法の有効性を化学的に明らかにし、有効性を示すバイオマーカー、効果の予測法の確立、さらに新規免疫治療法の開発を目指す。
研究方法
スギ花粉症患者を対象とした臨床試験から、投与プロトコールの検討、免疫療法の有効性を示すバイオマーカーや治療効果予測因子の解明を行った.また、より安全性が高く有効性が高いことが期待される人工スギ抗原の実用化と新たな治療ターゲットの解明を目指した検討をマウスを用いて行った
結果と考察
(1) 舌下免疫療法の検討:スギ花粉エキス連日投与は安全に症状の改善を示した.
(2) 有効性を示す客観的なバイオマーカーとして、Cry j特異的Th2細胞クローン、Cry j特異的制御性 T細胞変動が確認された.
(3) 予測因子として、治療開始前の血清中の特異的IgE/総IgE値の比,効果予測因子として治療開始後早期に変動する遺伝子を明らかにして特許申請を行った.
(4) 花粉飛散室で即時症状、退室後の遅発症状を個別に評価出来ることを明らかにし、スギ花粉舌下免疫の有効性を検証出来た.
(5) 新規スギ抗原としてCry j1/2融合蛋白質をPEG化したものは、ヒトIgE抗体との結合がみられず、強いIgE産生抑制作用が認められ、安全にアレルギー抑制作用を示した.
(6) CD69分子は活性化により好酸球性気道炎症の形成に関与すること、ヒトCD69発現Th2細胞へのヒト化CD69抗体投与によりTh2細胞の抑制にも直接作用することが確認された。
(7) アレルギー性鼻炎患者や慢性副鼻腔炎患者の鼻粘膜、副鼻腔病変組織における浸潤T細胞の多くはCD69を発現していた。
結論
1、スギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法は症状の改善に期待出来る。
2、 効果を示すバイオマーカーとしてCry j特異的Th2細胞クローン減少、特異的制御性T細胞の増加、効果予測因子の候補として舌下免疫療法直前のスギ特異的IgE値/総IgE値、舌下免疫療法開始後2カ月で変動する遺伝子発現を確認した。
3、 花粉飛散室の有用性が明らかになり、今後の花粉症治療の開発を加速出来る。
4、 スギ抗原ペプチドをα-GalCerを含むリボソームに封入する人工抗原が新たな花粉症ワクチンとして期待される。
5、 CD69分子が免疫療法のマーカーだけでなく、本分子をターゲットとする治療の有効性が期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201126007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
舌下免疫療法のバイオマーカー、効果予測因子を明らかにすることは、免疫療法の機序ならびにアレルギー性鼻炎の病態の詳細な解明そのものに通じる可能性がある。今回候補となる因子を明らかに出来たことは意義があり、今後の臨床試験で検証を進める項目が明らかになった。また、新規治療抗原、治療ターゲットの基礎研究に一定の成果がみられ研究の展開が期待される。加えて花粉飛散室の有用性が明らかとなり、基礎研究、臨床研究で活用されるものと考えられる。
臨床的観点からの成果
スギ花粉症に対する舌下免疫療法の有効性を明らかにしたことで、この結果を踏まえて標準治療を目指した製薬企業の臨床治験が開始されている。一方で、本研究から現在の舌下免疫療法の効果の限界も明らかとなり、その効果向上を目指してアジュバントや新規抗原の開発を進めた結果、臨床展開に向けた成果が得られた。さらに、花粉飛散室の特徴、有用性を明らかにしたことで、花粉飛散室を利用して今後の花粉症治療の研究が加速されると期待される。
ガイドライン等の開発
日本鼻科学会でスギ花粉症も含めてアレルギー性鼻炎に対する免疫療法の指針の作成が開始された。
その他行政的観点からの成果
 本研究の成果の一部は、製薬企業のスギ花粉症に対する舌下免疫療法第3相臨床試験の申請に際して、試験内容の評価の有用な判断材料として活用された。
その他のインパクト
・TBSラジオ(明日も元気)「花粉症」・NHK総合テレビ(今日の健康)「花粉症対策」・東京新聞「花粉症の初期治療」・読売新聞「花粉症」・日本経済新聞「効果を感じた花粉症対策」・朝日新聞「花粉症の注意点」・代ゼミジ-ャナル「医療研究最前線,花粉症」・NHK総合テレビ(今日の健康)「スギ花粉症対策」・産経新聞「鼻の症状に潜む健康リスク」(全 岡本美孝 出演取材ほか)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
Fujimura,T:Increase of regulatory T cells and the ratio of specific IgE? Clinical Immunology他
その他論文(和文)
2件
1.岡本美孝.アレルギー疾患の早期治療介入.アレルギー.60:945-955,2011. 2.岡本美孝.花粉症の舌下免疫療法.小児内科,43:1937-1941,2011.
その他論文(英文等)
3件
Okamoto,Y.Present situation of cedar pollinosis in Japan and its?.Allergology International他
学会発表(国内学会)
3件
中山俊憲第21回日本比較免疫学会.稲嶺絢子第23回日本アレルギー学会.櫻井大樹第61回日本アレルギー学会
学会発表(国際学会等)
3件
Nakayama,T.ROG, reressor of GATA, regulates Th2-driven allergic?.96th Annual Meeting the American他
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
ヒトTh1/Th2分化誘導系?中山俊憲特願2006-093086第4863452乳酸菌及び抗原物質を?稲嶺絢子特願2010-190842花粉症ワクチンの治療効果を?岡本美孝特願2011-76653
その他成果(施策への反映)
1件
治験申請に活用された
その他成果(普及・啓発活動)
20件
TBSラジオ(明日も元気)「花粉症」NHK総合テレビ(今日の健康)「花粉症対策」東京新聞「花粉症の初期治療」読売新聞「花粉症」日本経済新聞「効果を感じた花粉症対策」朝日新聞「花粉症の注意点]

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okamoto,Y.,Horiguchi,S.,Yonekura,S.,Yamamoto,etal.
Present situation of cedar pollinosis in Japan and its immune responses.
Allergology International . , 58 , 152-162  (2009)
原著論文2
Miki, H. T., Hasegawa, A., Iwamura, C., Shinoda, K.,etal.
CD69 controls the pathogenesis of allergic airway inflammation.
J. Immunol. , 183 , 8203-8215  (2009)
原著論文3
Yonekura,S., Okamoto,Y., Okawa,T., Hisamitsu,K., etal.
Effects of daily intake of Lactoacillus Paracasei strain KW3110 on Japaneses cedar pollinosis.
Allergy and Asthma Proceedings. , 30 , 397-405  (2009)
原著論文4
Fujimura,T., Okamoto,Y.
Antigen-Specific Immunotherapy against Allergic Rhinitis: The State of the Art.
Allergology International. , 59 , 21-31  (2010)
原著論文5
Onodera, A., Yamashita, M., Endo, Y., Kuwahara, M.,etal.
STAT6-mediated displacement of polycomb by trithorax complex establishes long-term maintenance of GATA3 expression in T helper type 2 cells.
J. Exp. Med. , 207 , 2493-2506  (2010)
原著論文6
Iwamura, C. and Nakayama, T.
Role of NKT cells in allergic asthma.
Curr. Opin. Immunol. , 22 , 807-813  (2010)
原著論文7
Hasegawa, A., Hayashi, K., Kishimoto, H., Yang, M.,etal.
Color-coded real-time cellular imaging of T lymphocyte accumulation and focus formation in mouse asthma model.
J Allergy Clin. Immunol. , 125 , 461-468  (2010)
原著論文8
Tokoyoda, K., Hauser A. E., Nakayama, T. and Radbruch,A.
Organization of immunological memory by bone marrow stroma.
Nat.Rev. Immunol. , 10 , 193-200  (2010)
原著論文9
Nakayama, T. andYamashita, M.
The TCR-mediated signaling pathways that control the direction of helper T cell differentiation.
Semin. Immunol. , 22 , 303-309  (2010)
原著論文10
Ishii,Y., Motohashi,S., Shimizu,K., Nakayama,T ., etal.
Aplication of NKT Cells in Immunotherapy.
Curent Immunology. , 6 , 109-115  (2010)
原著論文11
Muradil,M.,Okamoto,Y.,Yonekura,S.,Chazono,H.,etal.
Reevaluation of pollen quantitation by an automatic pollen counter.
Allergy and Asthma Proceedings. , 31 , 422-427  (2010)
原著論文12
Fujimura,T.,Yonekura,S.,Taniguchi,Y.,Horiguchi,S.,etal.
he induced regulatory T cell level, defined as the proportion of IL-10(+)Foxp3(+) cells among CD25(+)CD4(+) leukocytes, is a potential therapeutic biomarker for sublingual immunotherapy: a preliminary report.
International Archives of Allergy and Immunology. , 153 , 378-387  (2010)
原著論文13
Fujimura, T., Yonekura, S., Horiguchi, S.,etal. Taniguchi, Y.,
Increase of regulatory T cells and the ratio of specific IgE to total IgE are candidates for response monitoring or prognostic biomarkers in two-year sublingual immunotherapy (SLIT) for Japanese cedar pollinosis.
Clinical Immunology , 139 , 65-74  (2011)
原著論文14
Yamashita, J., Iwamura, C., Sasaki, T., Mitsumori, K.,etal.
Apolipoprotein A-II suppressed concanavalin A-induced hepatitis via the inhibition of CD4 T cell function.
J. Immunol. , 186 , 3410-3420  (2011)
原著論文15
Takahashi, K., Hirose, K., Kawashima, S., Niwa, Y., etal.
IL-22 attenuates IL-25 production by lung epithelial cells and inhibits antigen-induced eosinophilic airway inflammation.
J. Allergy Ciln. Immunol , 128 , 1067-1076  (2011)
原著論文16
Endo, Y., Iwamura, C., Kuwahara, M., Suzuki, A.,etal.
Eomesodermin controls interleukin-5 production in memory T helper 2 cells through inhibition of activity of the transcription factor GATA3.
Immunity , 35 , 733-745  (2011)
原著論文17
Yonekura,S.,Okamoto,Y.,Yamasaki,K.,Horiguchi,S.,etal.
A randomized, double-blind, placebo-controlled study of Ten-Cha (Rubus suavissimus) on house dust mite allergic rhinitis.
Auris Nasus Larynx. , 38 , 600-607  (2011)
原著論文18
Yonekura,S., Okamoto, Y., Sakurai,D., Horiguchi,S.,etal.
Effect of aging on the natural history of seasonal allergic rhinitis in middle-aged subjects in south Chiba, Japan.
International Archives of Allergy and Immunology. , 157 , 73-80  (2012)
原著論文19
Uekusa,Y., Inamine,A., Yonekura,S., Horiguchi, S.,etal.
Immunological parameters with the development of allergic rhinitis: A preliminary prospective study.
American Journal of Rhinology and Allergy. , 26 , 92-96  (2012)
原著論文20
Inamine,A., Sakurai,D., Horiguchi,S., Yonekura,S.,etal.
Sublingual administration of Lactobacillus paracasei KW3110 inhibits Th2-dependent allergic responses via upregulation of PD-L2 on dendritic cells.
Clinical Immunology. , 143 , 170-179  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2018-06-26

収支報告書

文献番号
201126007Z