食物アレルギーの発症要因の解明および耐性化に関する研究

文献情報

文献番号
201126005A
報告書区分
総括
研究課題名
食物アレルギーの発症要因の解明および耐性化に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(独立行政法人 国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部 小児科・新生児科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院 医学系研究科 小児病態学)
  • 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合センター アレルギー科)
  • 伊藤 節子(同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科)
  • 宇理須 厚雄(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 小児科)
  • 今井 孝成(国立病院機構相模原病院 小児科)
  • 玉利 真由美(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター 呼吸器疾患研究チーム)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 大嶋 勇成(福井大学医学部 病態制御医学講座小児科)
  • 松本 健治(国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食物アレルギー(FA) (発症要因の解明、予防や治療法の開発、社会環境整備)研究の発展に寄与し、国民への正確な情報提供を行うことを目的とした。
研究方法
FAの管理と患者のQOL向上に寄与すべく積極的な治療法(経口免疫療法:OIT)の開発研究を中心に活動した。
結果と考察
国立病院機構相模原病院において3年間に399症例に対してOITの検討を加えた。アナフィラキシー(An)型の卵・乳・小麦・落花生FAには急速法(入院)後、緩徐法(外来)で治療するOITを確立し、196例(卵63、乳91、小麦26、落花生16)に対して実施した。多くの症例で脱(減)感作状態に誘導可能であったが、1年超経過例で確認試験にて耐性化を確認できたのは半数に満たなかった。4抗原中で乳が最も症状が誘発されやすく、増量困難例・脱落例を多く認めた。脱(減)感作・耐性化の機序としては急速期の尿中ロイコトリエン産生の低下に示された細胞レベルでの脱感作、制御性T細胞の誘導に関連し1ヶ月後から認められる抗原特異的IgG4抗体の上昇、抗原特異的IgE抗体の低下により最終的にマスト細胞・好塩基球自体の反応性が著しく減弱すると考えられた。比較的軽症の卵・乳・小麦による即時型FA 141例を対象に緩徐法(外来)によりOITによる効果を無治療群(62例)と比較検討し、4歳以上の症例で長期経過(1?2年)を追跡した111例(OIT群:65例、コントロール群:46例)において検討した。ほぼ脱(減)感作状態に誘導可能で、小麦OITは耐性化について明らかな有用性が認められたが、卵・乳においては認めなかった。食物負荷試験ネットワークでのブラインド負荷試験累計数は3113例に到達した。全国の日本小児科学会研修施設513施設中負荷試験を行っている施設は311か所であり、OITは49施設で1400症例が行われ効果を上げていた。食物経口負荷試験後の積極的な食事指導、抗原改変食品や抗原低減した食品によるOITの検討、食物アレルギー患者を対象とした遺伝子多型の解析も進んだ。
結論
各分担の研究計画は順調に遂行されたが、OITに関してはより長期に渡る追跡が必要であることも明らかになった。班全体の3年間の研究成果は「食物アレルギーの診療の手引2011」にもれなく反映させることができた。また、栄養士・患者向けに「食物アレルギーの栄養指導の手引2011」として2008の内容に最新の情報を追加し、診療の手引の内容を平易にして加えた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201126005B
報告書区分
総合
研究課題名
食物アレルギーの発症要因の解明および耐性化に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(独立行政法人 国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部 小児科・新生児科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院 医学系研究科 小児病態学)
  • 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合センター アレルギー科)
  • 伊藤 節子(同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科)
  • 宇理須 厚雄(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 小児科)
  • 今井 孝成(国立病院機構相模原病院 小児科)
  • 玉利 真由美(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター 呼吸器疾患研究チーム)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 大嶋 勇成(福井大学医学部 病態制御医学講座小児科)
  • 松本 健治(国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食物アレルギー(FA) (発症要因の解明、予防や治療法の開発、社会環境整備)研究の発展に寄与し、国民への正確な情報提供を行うことを目的とした。
研究方法
FAの管理と患者のQOL向上に寄与すべく積極的な治療法(経口免疫療法:OIT)の開発研究を中心に活動した。
結果と考察
国立病院機構相模原病院において3年間に399症例に対してOITの検討を加えた。アナフィラキシー(An)型の卵・乳・小麦・落花生FAには急速法(入院)後、緩徐法(外来)で治療するOITを確立し、196例(卵63、乳91、小麦26、落花生16)に対して実施した。多くの症例で脱(減)感作状態に誘導可能であったが、1年超経過例で確認試験にて耐性化を確認できたのは半数に満たなかった。4抗原中で乳が最も症状が誘発されやすく、増量困難例・脱落例を多く認めた。脱(減)感作・耐性化の機序としては急速期の尿中ロイコトリエン産生の低下に示された細胞レベルでの脱感作、制御性T細胞の誘導に関連し1ヶ月後から認められる抗原特異的IgG4抗体の上昇、抗原特異的IgE抗体の低下により最終的にマスト細胞・好塩基球自体の反応性が著しく減弱すると考えられた。比較的軽症の卵・乳・小麦による即時型FA 141例を対象に緩徐法(外来)によりOITによる効果を無治療群(62例)と比較検討し、4歳以上の症例で長期経過(1?2年)を追跡した111例(OIT群:65例、コントロール群:46例)において検討した。ほぼ脱(減)感作状態に誘導可能で、小麦OITは耐性化について明らかな有用性が認められたが、卵・乳においては認めなかった。食物負荷試験ネットワークでのブラインド負荷試験累計数は3113例に到達した。全国の日本小児科学会研修施設513施設中負荷試験を行っている施設は311か所であり、OITは49施設で1400症例が行われ効果を上げていた。食物経口負荷試験後の積極的な食事指導、抗原改変食品や抗原低減した食品によるOITの検討、食物アレルギー患者を対象とした遺伝子多型の解析も進んだ。
結論
各分担の研究計画は順調に遂行されたが、OITに関してはより長期に渡る追跡が必要であることも明らかになった。班全体の3年間の研究成果は「食物アレルギーの診療の手引2011」にもれなく反映させることができた。また、栄養士・患者向けに「食物アレルギーの栄養指導の手引2011」として2008の内容に最新の情報を追加し、診療の手引の内容を平易にして加えた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201126005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
相模原病院で最重症の卵・乳・小麦・落花生アレルギーに急速+緩徐法の経口免疫療法(OIT)を196例(卵63 乳91 小麦26 落花生16)に実施し、殆どの例で連日摂取下無症状に誘導可能(脱感作)で、1年超経過し再除去後負荷試験で無症状(耐性化)は半数未満であった。乳OITは誘発症状が多く、増量困難・脱落が多かった。機序は急速期の細胞レベルでの脱感作、制御性T細胞の誘導に関連し1ヶ月後から抗原特異的IgG4抗体上昇、抗原特異的IgE抗体低下にてIgE抗体を介する反応性が抑制されると考えられた。
臨床的観点からの成果
中等症以下の卵・乳・小麦による即時型食物アレルギー141例を対象に緩徐OITによる効果を無治療群(62例)と比較検討し、4歳以上で長期経過(1-2年)を追跡した111例(OIT群:65例、コントロール群:46例)を検討した。ほぼ全例脱感作状態に誘導可能で、耐性化について小麦OITは明らかな有用性が認められたが、卵・乳においては認めなかった。食物経口負荷試験後の積極的な食事指導、抗原改変食品や抗原低減した食品によるOITの検討、食物アレルギー患者を対象とした遺伝子多型の解析も進んだ。
ガイドライン等の開発
研究班の成果をもとに、食物アレルギーの診断・治療のレベルの向上と患者QOLの改善を図るために一般医向けに「食物アレルギーの診療の手引き2011」を、栄養士の栄養指導レベルの向上を目標に「食物アレルギーの診療の手引き2011」を最終年度に作成し公開した。国立病院機構相模原病院臨床研究センター等4カ所のサイトからPDFファイルの無料ダウンロード化、関係学会、全国医師会、コメディカル等への無料配布を行い、標準的な食物アレルギーの診療の在り方の啓発の資料として広く活用されている。
その他行政的観点からの成果
食物負荷試験ネットワーク研究は平成13年?11年間活動を継続し、同一プロトコールでブラインド負荷試験施行可能な鶏卵、牛乳、小麦、大豆の負荷試験食を提供してきた。全国37施設で総施行症例は平成23年度までに3113症例に達し、我が国での負荷試験の普及に貢献した。日本小児科学会研修施設513施設中負荷試験を行っている施設は311か所であり、OITは49施設で1400症例が行われ効果を上げていた。食物経口負荷試験の普及によりわが国では世界に例を見ない経口免疫療法が行われている国となっていた。
その他のインパクト
経口免疫療法に関する研究成果は、過去3年間に朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、NHK, NTV、TBS, フジテレビなどのニュース等で取り上げられ、食物アレルギー研究会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、国際学会のシンポジウム、ワークショップなどでも取り上げられている。

発表件数

原著論文(和文)
25件
原著論文(英文等)
108件
その他論文(和文)
47件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
110件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
食物アレルギーの診療の手引き2011、食物アレルギーの栄養指導の手引き2011
その他成果(普及・啓発活動)
2件
食物アレルギーの診療の手引き2011、食物アレルギーの栄養指導の手引き2011

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ebisawa M
Chapter 9 Food-induced Anaphylaxis and Food Associated Exercise-induced Anaphylaxis
Food Allergy: Expert Consult Basic (Drs. John M. James, Wesley Burks, Philippe Eigenmann) , 113-127  (2011)
原著論文2
Ebisawa M, Shibata R, Sato S et al.
Clinical Utility of IgE Antibodies to omega-5 Gliadin in the Diagnosis of Wheat Allergy: A Pediatric Multicenter Challenge Study
Int Arch Allergy Immunol , 158 , 71-76  (2012)
原著論文3
Borres MP, Ebisawa M, Eigenmann PA
Use of allergen components begins a new era in pediatric allergology
Pediatr Allergy Immunol , 22 (5) , 454-461  (2011)
原著論文4
Sato S, Tachimoto H, Ebisawa M et al.
Utility of the peripheral blood basophil histamine release test in the diagnosis of hen's egg, cow's milk, and wheat allergy in children
Int Arch Allergy Immunol , 155 (1) , 96-103  (2011)
原著論文5
Sato S, Tachimoto H, Ebisawa M et al.
Basophil Activation Marker CD203c Is Useful in the Diagnosis of Hen's Egg and Cow's Milk Allergies in Children
Int Arch Allergy Immunol , 152 (1) , 54-61  (2010)
原著論文6
緒方美香,宿谷明紀,海老澤元宏 他
乳児アトピー性皮膚炎におけるBifurcated needleを用いた皮膚プリックテストの食物アレルギーの診断における有用性(第2報)-牛乳アレルギー-
アレルギー , 59 (7) , 839-846  (2010)
原著論文7
Ebisawa M
Management of Food Allergy in Japan "Food Allergy Management Guideline 2008 (Revision from 2005)" and "Guidelines for the Treatment of Allergic Diseases in Schools"
Allergology International , 58 (4) , 475-483  (2009)
原著論文8
Komata T, Soderstrom L, Ebisawa M et al.
Usefulness of Wheat and Soybean Specific IgE Antibody Titers for the Diagnosis of Food Allergy
Allergology International , 58 (4) , 599-603  (2009)
原著論文9
林典子、今井孝成、海老澤元宏 他
食物アレルギー児と非食物アレルギー児の食生活のQOL(Quality of life)比較調査
日本小児アレルギー学会誌 , 23 (5) , 643-650  (2009)
原著論文10
K Ito, M Futamura, MP Borres et al.
The usefulness of casein-specific IgE and IgG4 antibodies in cow’s milk allergic children
Clinical and Molecular Allergy , 10 (1) , 1-7  (2012)
原著論文11
Ito K, Sjolander S, Ebisawa M et al.
IgE to Gly m 5 and Gly m 6 is associated with severe allergic reactions to soybean in Japanese children
J Allergy Clin Immunol , 128 , 673-675  (2011)
原著論文12
Urisu A, Ebisawa M, Kondo N et al.
Japanese Society of Allergology.: Japanese guideline for food allergy
Allergology International , 60 (2) , 221-236  (2011)
原著論文13
JC Caubeta, Y Kondo, A Urisu et al.
Molecular diagnosis of egg allergy
Current Opinion in Allergy and Clinical Immunology , 11 , 210-215  (2011)
原著論文14
Kondo Y, Tanaka K, Urisu A et al.
A patient with salmon roe allergy showing taxonomy-unrelated cross-reactivity with sea urchin roe
Ann Allergy Asthma Immunol , 107 , 283-284  (2011)
原著論文15
伊藤節子
食物アレルギーの患者指導の実際
アレルギー , 58 , 1490-1496  (2009)
原著論文16
Y Hitomi, M Ebisawa, M Tamari et al.
Associations of functional NLRP3 polymorphisms with susceptibility to food-induced anaphylaxis and aspirininduced asthma
J Allergy Clin Immunol , 124 , 779-785  (2009)
原著論文17
Miyazawa Tokuo, Itabashi Kazuo, Imai Takanori
Management of neonatal cow’s milk allergy in high-risk neonates
Pediatrics International , 51 (4) , 544-547  (2009)
原著論文18
Akiyama H, Imai T, Ebisawa M
Japan food allergen labeling regulation-history and evaluation
Adv Food Nutr Res , 62 , 139-171  (2011)
原著論文19
Sato Y, Akiyama H, Teshima R et al.
Dietary carotenoids inhibit oral sensitization and the development of food allergy
J Agric Food Chem , 58 (12) , 7180-7186  (2010)
原著論文20
A Kawakita, H Shirasaki, Y Ohshima et al.
Immunotherapy with oligomannose-coated liposomes ameliorates allergic symptoms in a murine food allergy model
Allergy , 67 , 371-379  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
2018-06-26

収支報告書

文献番号
201126005Z