重症・難治性喘息の病因・病態の解明に関する研究

文献情報

文献番号
201126004A
報告書区分
総括
研究課題名
重症・難治性喘息の病因・病態の解明に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
森 晶夫(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 安(岡山大学医学部)
  • 藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 庄司 俊輔(独立行政法人国立病院機構東京病院 臨床研究部)
  • 田中 宏幸(岐阜薬科大学 大学院薬学研究科)
  • 大田 健(帝京大学 医学部)
  • 烏帽子田 彰(広島大学 医学部)
  • 中村 裕之(金沢大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
吸入ステロイドの普及により軽症~中等症喘息の予後は大きく改善したものの、重症喘息に対する治療効果では、現在の薬物療法は未だ満足な水準に達していない。
研究方法
われわれの調査で明らかになったわが国の重症喘息の特徴である、1.ステロイド抵抗性、2.非アトピー型(非IgE依存性、T細胞依存性)喘息、3.リモデリングの3大要因につき、臨床医学的、分子細胞生物学的に研究した。
結果と考察
今年度の本研究班の成果によって、1)治療抵抗性の気流閉塞は重症喘息の主要徴候であるが、そのメカニズムとしてT細胞依存性の気流閉塞が重要と考えられること、2)重症喘息には様々なフェノタイプの存在が示唆され、EBC中のECP高値例やIL-8高値例といったフェノタイプごとの臨床的特徴が異なること、3)ヒト好塩基球は抗原提示細胞として気管支喘息の病態に関与する可能性があること、4)好酸球はEMTを介して気道リモデリングを引き起こす可能性があること、5)気管支平滑筋細胞の産生するフィブロネクチンが気道上皮細胞遊走因子として作用すること、6)喘息の発病・増悪に関する因子として近年注目されている代謝異常症について、肥満と喘息の関わりの背景に、アディポカイン、特にレプチンの好塩基球機能制御が関与すること、7)ダニ抗原中に含まれるDNAは、抗原提示プロセスを介し、喘息病態の重症化に働くこと、8)喫煙とNrf2の相互作用が喘息重症化に関与すること、9)非晶質鉄フィルターと活性炭フィルターを組み合せて構成されている開発中の本フィルターは、PAHs、特に分子量の大きいベンゾaピレン、ベンゾaアントラセンによるアレルギー促進作用を抑制し、喘息重症化を予防できる可能性があること、等を明らかにした。
結論
わが国の喘息重症化3大要因であるステロイド抵抗性、非アトピー性、リモデリングについて研究し、重症・難治性喘息の新規治療法、診断、予防法開発に役立つ成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201126004B
報告書区分
総合
研究課題名
重症・難治性喘息の病因・病態の解明に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
森 晶夫(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 清(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)
  • 谷本 安(岡山大学 医学部)
  • 相澤 久道(久留米大学 医学部)
  • 藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 庄司 俊輔(独立行政法人国立病院機構東京病院)
  • 大田 健(帝京大学 医学部)
  • 田中 宏幸(岐阜薬科大学 大学院薬学研究科)
  • 烏帽子田 彰(広島大学 医学部)
  • 中村 裕之(金沢大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症喘息の病態解明と治療法の開発は、喘息分野の最重要課題である。
研究方法
1.ステロイド抵抗性、2.非アトピー型(非IgE依存性、T細胞依存性)喘息、3.リモデリングの3大要因につき、臨床医学的、分子細胞生物学的に研究した。
結果と考察
1)T細胞レベルのステロイド抵抗性は、補助シグナルおよびサイトカインによって誘導されること、補助シグナル阻害によりステロイド感受性が回復可能であることを、in vitro、in vivoの両レベルで明らかにした。2)非アトピー型喘息の気流閉塞を担う、T細胞由来の新たなメディエータを同定した。3)好酸球は細菌感染により活性化され、喘息重症化に関与するが、PAF受容体阻害薬がこのプロセスを抑制する、4)好酸球は上皮間葉移行を介して気道リモデリングを引き起こす、5)ウィルス感染による喘息重症化には、CD8陽性T細胞、LTB4、IL-13が重要である、6)気管支平滑筋細胞はMMP-2等のプロテアーゼを分泌し、リモデリングに寄与する、7)気管支平滑筋細胞は、肺線維芽細胞より放出されるフィブロネクチンに反応し遊走する、8)気管支平滑筋細胞より放出される遊走因子に反応して気道上皮細胞が遊走する、9)喘息死の肺病変部にはIL-18陽性、IL-18受容体陽性CD8 T細胞が著増している、10)好塩基球を介するIgE非依存性(レプチン、AGE)のアレルギー性炎症増悪メカニズムが存在する、11)PSL 5 mg/日以上を要するStep 4b群では、呼気濃縮液中マーカー等が重症度と関連し、ECP高値・IL-8低値群とECP低値・IL-8高値群といった異なるフェノタイプが存在する、12)好塩基球がHLA-DR、CD80を発現し、抗原提示細胞として機能する、13)NQO1とアルギナーゼ2の遺伝子多型が、重症喘息と関連する、14)GSTM1、アルギナーゼ1、Nrf2遺伝子多型と喫煙(抗酸化ストレス応答)との相互作用が喘息重症化に寄与する、15)非晶質鉄フィルターと活性炭フィルターからなる新規フィルターは、Ferrihyudriteの吸着の特性に基づき、PAHsを吸着し、アレルギー反応の抑制、喘息重症化の予防に有効と考えられる、ことが明らかになった。
結論
これらの新規の知見は、世界に先駆けて喘息の難治化、重症化を早期診断、予知、予防、治療する目的に、きわめて価値が高いと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201126004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
T細胞機能に基づくステロイド抵抗性喘息モデルの樹立は世界初の成果である。非アトピー型喘息のメカニズム解明に関しては、IgE非依存性、T細胞依存性の遅発型喘息反応をはじめて見出したうえで、マウスT細胞クローン移入喘息モデルを用いて、T細胞をエフェクター細胞とする気流閉塞モデルを世界ではじめて樹立し、本コンセプトを生物学的レベルで証明できた。学術的な価値はきわめて高い。
臨床的観点からの成果
われわれが厚生労働科学研究で実施した難治性喘息登録調査により、わが国の重症喘息の3大要因として浮かび上がってきた、a)ステロイド抵抗性、b)非アトピー型喘息、c)リモデリング、の3点に焦点をあて、重症化の分子生物学的要因の解明を試みた。新規治療、予防、早期診断法の開発に直接つながる成果が数多く出せた。新たに平成25年度厚労科学研究二次募集に採択され、補助シグナル阻害呼応かを実証する医師主導治験を開始した。26年度にはPMDA戦略相談を実施、4施設でIRB承認を得た後、症例登録を開始した。
ガイドライン等の開発
ステロイド抵抗性改善薬の臨床開発に向け、前臨床段階のエビデンスを構築できた。非IgE依存性の喘息メカニズムを解明したので、抑制薬開発を目指す。喘息の重症化に関連する遺伝子変異を数個同定した。重症予知マーカーとしての診断薬開発をめざす。新規メカニズムに基づく環境フィルターを開発した。市販に向けた準備の最終段階にある。
その他行政的観点からの成果
重症・難治性喘息の病因・病態の解明は、喘息研究分野に残された最重要課題である。症例数の上では喘息全体の少数にとどまるものの、医療費支出に占める割合は過半を占めることが知られている。加えて、現在入手可能な治療オプションによっては、ほとんど改善がもたらされていないことも明らかになっている。われわれは、重症喘息者に対する新規治療、予知、予防法開発に直接つながる有意義な成果を得た。本研究成果を実証する目的に、既承認薬アバタセプトの医師主導治験を開始した。承認申請に向けICH-GCP準拠で実施している。
その他のインパクト
本研究班の新規知見は、世界に先駆けて喘息の難治化、重症化を早期診断、予知、予防、治療する目的に、きわめて価値が高いと考えられる。臨床分野から重症喘息診療のエキスパート、基礎研究分野からモデル研究、疫学、遺伝医学、公衆衛生学のエキスパートと、わが国の重症喘息研究者を代表する臨床医、研究者で構成され、理想的な研究体制となっている。そのため、世界的にも例のない、パイオニアリングな成果が順調に得られた。実用をにらんだ成果も数多く得られており、研究の達成度は十分に高いものと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
124件
その他論文(和文)
82件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
119件
学会発表(国際学会等)
42件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
アレルギー発症予防用フィルター
詳細情報
分類:
特許番号: 2009-214016
発明者名: 中村 裕之
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kitamura, N., Kaminuma, O., Ohtomo, T., et al.
Evaluation of cysteinyl leukotriene-induced contraction of human cultured bronchial smooth muscle cells
Int. Arch. Allergy Immunol. , 149 , 83-86  (2009)
原著論文2
Ohtomo, T., Kaminuma, O., Kitamura, N., et al.
Murine Th clones confer late asthmatic response upon antigen challenge.
Int. Arch. Allergy Immunol. , 149 , 2-6  (2009)
原著論文3
Ohtomo, T., Kaminuma, O., Yamada, J., et al.
Eosinophils are required for the induction of bronchial hyperresponsiveness in a Th transfer model of Balb/c background.
Int. Arch. Allergy Immunol. , 152 , 79-82  (2010)
原著論文4
Abe, A., Ohtomo, T., Koyama, S., et al.
Comparative analysis of steroid sensitivity of Th cells in vitro and in vivo
Int. Arch. Allergy Immunol. , 155 , 110-116  (2011)
原著論文5
Abe, A., Koyama, S., Ohtomo, T., et al.
Murine T cell-derived contractile activity for bronchial smooth muscle cells.
Int. Arch. Allergy Immunol. , 158 , 7-10  (2012)
原著論文6
Kouyama, S., Ohtomo-Abe, A., Kitamura, N., et al.
A contraction assay system using primary cultured mouse bronchial smooth muscle cells
Int. Arch. Allergy Immunol. , 161 , 93-97  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2018-06-26

収支報告書

文献番号
201126004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,636,000円
(2)補助金確定額
12,636,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,586,038円
人件費・謝金 3,083,362円
旅費 886,895円
その他 443,751円
間接経費 1,636,000円
合計 12,636,046円

備考

備考
利息収入のため

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-