新しい制御性T細胞体外増幅法による喘息治療法の開発:ぜん息の治療法の開発及び確立に関する研究

文献情報

文献番号
201126002A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい制御性T細胞体外増幅法による喘息治療法の開発:ぜん息の治療法の開発及び確立に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中江 進(東京大学医科学研究所 フロンティア研究拠点・中江グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博久(国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部)
  • 奥村 康(順天堂大学大学院医学研究科 アトピー疾患研究センター)
  • 山口 正雄(帝京大学医学部内科 呼吸器・アレルギー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
様々な疾患の治療に炎症抑制作用をもつ制御性T細胞(Treg細胞)の利用が注目されている。問題は、末梢血中のTreg細胞数は少なく(>2%)、自家移植治療用に充分な細胞の確保が難しい点である。その解決には、体外での効率の良いTreg細胞増幅法の確立が必須である。本研究では、当研究班で確立したインターロイキン33(IL-33)による体外Treg細胞増幅法によるTreg誘導能の効率向上化の分子機構の解明を目的とする。
研究方法
IL-33の存在下でマスト細胞とT細胞を共培養することで、Treg細胞を選択的に増幅できる。このTreg細胞の増幅に関与が期待される因子の候補をトランスクリプトーム解析などにより挙げ、その因子によるTreg細胞増幅への影響を、その因子の阻害によって明確にする。
結果と考察
IL-33の刺激によってマスト細胞から産生されるサイトカインのうちIL-2が、また、マスト細胞とT細胞の細胞間相互作用に関わるCD54、CD86およびCD137がTreg細胞の誘導に重要であった。今後、リコンビナントIL-2や細胞間相互作用分子の刺激抗体を添加することによって、Treg細胞の誘導効率の向上化が図れる可能性が期待される。
結論
IL-33の存在下でマスト細胞とT細胞の共培養によるTreg細胞増幅法は、従来のTreg細胞誘導法に比べて、誘導効率および選択性に優れていた。そのTreg細胞の誘導因子としてマスト細胞からのIL-2およびマスト細胞とT細胞の細胞間相互作用に関わる分子(CD54, CD86, CD137)を同定し、Tregの増幅効率の向上化が期待された。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201126002B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい制御性T細胞体外増幅法による喘息治療法の開発:ぜん息の治療法の開発及び確立に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中江 進(東京大学医科学研究所 フロンティア研究拠点・中江グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博久(国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部)
  • 奥村 康(順天堂大学大学院医学系研究科 アトピー疾患研究センター)
  • 山口 正雄(帝京大学医学部内科 呼吸器・アレルギー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
様々な疾患の治療に炎症抑制作用をもつ制御性T細胞(Treg細胞)の利用が注目されている。問題は、末梢血中のTreg細胞数は少なく(>2%)、自家移植治療用に充分な細胞の確保が難しい点である。その解決には、体外での効率の良いTreg細胞増幅法の確立が必須である。本研究では、当研究班で確立したインターロイキン33(IL-33)による体外Treg細胞増幅法によるTreg細胞誘導能の効率向上化と喘息の治療におけるTreg細胞の効果を実験動物にて検証を行う。
研究方法
IL-33の存在下でマスト細胞とT細胞を共培養することで、Treg細胞を選択的に増幅できる。このTreg細胞の増幅に関与が期待される因子の候補をトランスクリプトーム解析などにより挙げ、その因子によるTreg細胞増幅への影響を、その因子の阻害によって明確にする。IL-33以外のマスト細胞刺激剤でのTreg細胞の誘導効果を検証する。また、この系で増幅させたTregをマウスに移入し、マウス喘息モデルにおける治療効果を検証する。
結果と考察
Treg細胞の増幅には、IL-33の作用によりマスト細胞から産生されたIL-2に加え、CD54、CD86およびCD137を介したマスト細胞とT細胞の細胞間相互作用が重要であった。IL-33以外のマスト細胞刺激剤であるIgEやLPS、および、IL-3やSCFを含む約30種類の市販のサイトカイン、また、大腸菌で作製したIL-33の代替として、IL-33受容体に対する市販抗体でもTreg細胞の増幅はできず、Treg細胞の増幅におけるIL-33の選択性の高さが明らかになった。IL-33によってin vitroで増幅したTreg細胞をマウスに移入することにより、マウスの喘息様気道炎症モデルにおけるIL-4産生の抑制が認められた。しかしながら、この際の好酸球には有意な抑制効果は見られなかった。移入後のTregの生存率、また、移入する時期が結果に影響している可能性が疑われ、さらなる検証を必要とする。
結論
IL-33の存在下でマスト細胞とT細胞の共培養によるTreg増幅法は、従来のTreg誘導法に比べて、誘導効率および選択性に優れていた。そのTregの誘導因子としてIL-2やCD137を同定し、Tregの増幅効率の向上化が期待された。また、本方法で作製したTregが部分的だがマウス喘息の抑制に効果が見られた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201126002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Treg細胞がマスト細胞の活性化を抑制することが知られているが、本研究のように、マスト細胞がTreg細胞の増殖促進を促進する分子機構を詳細に検討した報告はない。本研究では、Treg細胞の誘導に、T細胞受容体刺激を必要とせず、IL-33刺激によるマスト細胞からのIL-2および、CD54、CD86およびCD137を介したマスト細胞とT細胞の細胞間相互作用が必須であることを示した。これは従来のTreg細胞の誘導機構とは全く異なる新規な知見である。
臨床的観点からの成果
様々な疾患の治療にTreg細胞の利用が注目されているが、仮題はTreg細胞の確保(末梢血中わずか2%程度)である。Treg細胞は、T細胞受容体刺激とTGF-β1の刺激により誘導可能であるが、Treg細胞以外に活性化T細胞が多く、選択性が低い。本研究では、IL-33の存在下においてマスト細胞とT細胞を共培養することにより、Treg細胞を選択的および効率よく増幅させる系を確立した。また、作製した Treg細胞がマウスの喘息モデルに一定の抑制効果があることが分かり、喘息の治療への応用性が期待された。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
137件
その他論文(和文)
71件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
166件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohno T, Oboki T, Kajiwara N et al.
Caspase-1, caspase-8 and calpain are dispensable for IL-33 release by macrophages
J Immunol , 183 (12) , 7890-7897  (2009)
doi: 10.4049/jimmunol.0802449
原著論文2
Oboki K, Ohno T, Kajiwara K, et al.
IL-33 is a crucial amplifier of innate rather than acquired immunity
Proc Natl Acad Sci U S A , 107 (43) , 18581-18586  (2010)
doi: 10.1073/pnas.1003059107
原著論文3
Ohno T, Oboki K, Morita H, et al.
Paracrine IL-33 stimulation enhances lipopolysaccharide-mediated macrophage activation
PLoS One , 185 (10) , 5743-5750  (2010)
doi: 10.1371/journal.pone.0018404
原著論文4
Yagami A, Orihara K, Morita H, et al.
IL-33 mediates inflammatory responses in human lung tissue cells
J Immunol , 185 (10) , 81-88  (2010)
原著論文5
Oboki K, Nakae S, Matsumoto K et al.
IL-33 and airway inflammation
Allergy Asthma Immunol Res , 3 (2) , 81-88  (2011)
doi: 10.4168/aair.2011.3.2.81
原著論文6
Oboki K, Ohno T, Kajiwara N, et al.
IL-33 and IL-33 receptors in host defense and diseases
Allergol Int , 59 (2) , 143-160  (2010)
doi: 10.2332/allergolint.10-RAI-0186
原著論文7
Suzukawa M, Yamaguchi M, Iikura M, et al.
IL-33-induced activation of human basophils and eosinophils via ST2
Inflammation and Regeneration , 30 , 181-185  (2010)
原著論文8
Suzukawa M, Nagase H, Ogahara I, et al.
Leptin enhances survival and induces migration, degranulation and cytokine synthesis of human basophils
J Immunol , 186 , 5254-5260  (2010)
doi: 10.4049/jimmunol.1004054
原著論文9
Morita H, Arae K, Orno T et al.
ST2 requires Th2-, but not Th17-, type airway inflammation in epicutaneously antigen- sensitized mice
Allergol Int , 61 (2) , 265-273  (2012)
doi: 10.2332/allergolint.11-OA-0379

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201126002Z