マイクロRNAを標的とした新規抗C型肝炎ウイルス治療戦略の開発

文献情報

文献番号
201125043A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロRNAを標的とした新規抗C型肝炎ウイルス治療戦略の開発
課題番号
H23-肝炎・若手-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡士 幸一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではmiRNA阻害剤TPFをプラットフォームとして、miRNAによるHCV複製機構の解析をおこなうとともに、抗HCV剤開発を目指した研究をおこなった。具体的には(1) miRNA阻害剤TPFによるHCV複製抑制作用メカニズムの解析、(2) さらに抗HCV効果の高いmiRNA阻害剤の探索、(3) in vivo HCV感染系におけるmiRNA阻害剤の効果の検証、を行った。
研究方法
TPFによるHCV複製抑制メカニズムを解析するために、HeLa細胞にmiR-122を過剰発現し、HCVゲノム複製活性をコロニー形成法により検討した。さらにこの実験系にAGO2に対するsiRNAあるいはTPFを持続的に処理し、miR-122によるHCVゲノム複製亢進作用におけるAGO2の役割を調べた。また8種類のTPF誘導体についてmiRNAサイレンシングおよびHCVゲノム複製への効果をレポーターアッセイにより調べた。一方、ヒト肝細胞を移植したuPA TG/SCIDマウスにHCVを感染させ、その後にacriflavine (ACF: TPFとproflavineの合剤)を一日一回投与し、経時的に血中HCV量、ヒトアルブミン量、体重を測定することにより、ACFのHCV複製に対する効果および毒性を検討した。
結果と考察
HeLa細胞にmiR-122を過剰発現することによりゲノム複製活性が著明に上昇すること、さらにこれにAGO2に対するsiRNAあるいはTPFを持続的に処理することにより上昇したHCV複製が大きく低下することが認められた。この時、TPF処理によりmiR-122とAGO2の結合が減弱していること、また抗HCV効果をもたないTPF誘導体ではこの解離が見られないことが示された。一方、TPF誘導体のうち1種類が強い、2種類が中程度もしくは弱いshRNA誘導サイレンシング抑制効果を有していた。強いサイレンシング抑制効果を持つ誘導体は、顕著なHCVゲノム複製抑制を示した。また動物モデルにACFを投与した場合、今回の条件では有意な抗HCV作用および毒性は認めなかったが、マウス末梢血中でACFは投与後10分後にはほとんど検出されなかった。
結論
miRNAによるHCV複製亢進作用にはAGO2が重要であること、miRNA阻害剤によるHCV複製抑制とmiRNA-AGO2解離が相関していることを見出した。またACFは少なくとも今回のin vivo HCV感染モデルにおいて顕著な抗HCV効果は示さなかったが、これはTPFがマウス体内において速やかに代謝/排泄されるためであることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201125043Z