慢性C型肝炎患者由来HCV株感受性正常肝細胞による病原性発現機構の解明および薬剤評価系の構築

文献情報

文献番号
201125040A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性C型肝炎患者由来HCV株感受性正常肝細胞による病原性発現機構の解明および薬剤評価系の構築
課題番号
H23-肝炎・若手-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 昌彦(浜松医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦のC型肝炎ウイルス(HCV)感染者は約300万人とされ, その多くが慢性肝炎から肝硬変, 肝細胞癌へと移行し, 肝癌での年間死亡者は3万人を超える. 現在, 遺伝子型やHCVゲノムの変異による薬剤耐性から新たなHCV特異的抗ウイルス剤の開発が望まれている.本研究では, 多種の患者由来HCV株の感染増殖機構・病原性発現機構を明らかにするため, 正常ヒト肝細胞で患者由来のHCV株が感染増殖することのできるモデルを構築する.
研究方法
1)肝幹細胞の分化誘導によるHCV感染増殖細胞の樹立
FACSにより分離したヒト肝幹細胞を種々の条件で分化させた細胞のHCV感受性を調べた.
2)Huh-7由来iPS細胞の樹立
iPS細胞から誘導した肝細胞のHCV感染性についてはあまり調べられていない. 一方, がん細胞から誘導されたiPS細胞はとがん抑制遺伝子の機能が回復し, 腫瘍形成能のない正常細胞となる. そこで, ヒト肝癌細胞株であるHuh-7からiPS細胞の樹立を試みた.
3)樹立細胞株の特性解析
トランスクリプトーム解析によって, HCV感染感受性株と非感染感受性株との間でmRNA, miRNAの発現解析を行った. また肝組織特異的遺伝子の発現, 肝細胞機能を定量的RT-PCR法, 免疫染色法, イムノブロットにより明らかにした.
結果と考察
1) 肝幹細胞を分化誘導するための支持基質の比較を行い, TypeIVコラーゲンがHCV感染受容体の発現, HCVcc感染能が高いことを明らかにした.
2) 成熟肝細胞特異的な遺伝子発現, HCV感受性を指標に, 肝前駆細胞から最適な分化誘導条件を確立した.
3)ヒト肝癌細胞株であるHuh-7からiPS細胞を樹立した. この細胞はALP弱陽性でオーバル細胞に近い遺伝子発現であり, HCV感受性が欠損していた. これらの細胞のmRNA, miRNAの網羅的な発現解析を行い, 顕著に発現亢進・低下する遺伝子を数十種類見出した.
結論
平成23年度では, 肝幹細胞からの分化誘導の条件を検討した. またHuh-7からiPS細胞誘導により低分化細胞株を樹立した. 平成24年度では, HCV生活環に関わる新規因子の同定, 慢性C型肝炎感染患者由来の多種のHCV株の病原性発現機構, 薬剤感受性の解析を行う. これによりHCV感染に伴う肝発癌, 病原性発現機構, 持続感染機構などを解明する.

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201125040Z