C型肝炎ウイルスの非構造蛋白5Aを標的とした新規治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201125032A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルスの非構造蛋白5Aを標的とした新規治療法の開発に関する研究
課題番号
H22-肝炎・若手-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
村山 麻子(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 政木 隆博(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)感染者は日本に約200万人いると推定され、慢性化すると肝硬変を経て高率に肝細胞癌を発症することから問題となっている。現行の治療法はペグインターフェロンとリバビリンの併用療法であるが、その効果はHCVの遺伝子型やウイルス量、患者の遺伝子多型によって大きく異なる事が知られている。したがって、従来の抗HCV薬と異なる作用点をもつ治療法の開発が急務である。HCVの非構造蛋白質であるNS5Aはリン酸化蛋白質であり、NS5Aのリン酸化はゲノム複製や感染性ウイルス粒子形成に重要である。そこで、本研究では、NS5Aを標的とした新規治療法の開発を目的とした。
研究方法
PKのノックダウンはsiRNAの導入により行った。HCVの侵入過程はHCVシュードタイプウイルスを用いて解析し、ゲノム複製過程はHCVレプリコンシステムを用いて解析した。PKのノックダウンがNS5Aの局在に与える影響を解析するために、PKノックダウン細胞にHCVを感染させ、感染3日後に細胞を固定し、抗コア抗体および抗NS5A抗体で染色した。PK阻害剤の効果を検討するために、HCV RNAを細胞に導入し、薬剤を添加した。3日後の培養上清のウイルス量を測定し、未処理細胞と比較した。
結果と考察
網羅的解析およびHCV培養細胞増殖系を用いた解析により同定された3種類のPK(PK-1、PK-2、CK2α2)は、いずれもノックダウンによりウイルス産生量が低下した。これらのPKのノックダウンはウイルス侵入過程、ゲノム複製過程には影響を与えなかったが、ウイルス粒子形成効率を低下させたことから、これらのPKはウイルス粒子形成過程に関わることが示唆された。HCVの感染細胞内ではNS5Aとコアは共局在し、この相互作用がHCV粒子形成に重要であることが知られている。PK-1のノックダウン細胞では、NS5Aとコアの共局在が消失したことから、PK-1はNS5Aとコアの相互作用に関わると考えられた。さらに、4種類のPK特異的阻害剤は培養細胞でのHCVの増殖を抑制した。
結論
感染性HCV粒子産生に関与する3種類のPKを同定した。そのメカニズムとして、PKが粒子形成に重要なNS5Aとコアとの共局在に必須であることを明らかにした。また、PKの阻害剤が培養細胞での感染増殖系において抗HCV効果を示すことを確認した。

公開日・更新日

公開日
2012-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201125032Z