小胞輸送ESCRT経路を利用したC型肝炎ウイルス排除

文献情報

文献番号
201125031A
報告書区分
総括
研究課題名
小胞輸送ESCRT経路を利用したC型肝炎ウイルス排除
課題番号
H22-肝炎・若手-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 恵一(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 菅村 和夫(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) 発がん制御研究部)
  • 田中 伸幸(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,753,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)を原因とする疾患であり、国内では約200万人が罹患しているとされている。HCVを標的とした抗ウイルス薬はプロテアーゼインヒビターやポリメラーゼインヒビター等、非構造タンパクを標的とした薬剤が主流であるが、HCVの細胞内ライフサイクルに着目した阻害剤はまだ報告がない。
 HIVに対する精力的な研究の結果、ESCRT(Endosomal Sorting Complex Required for Transport)経路がウイルスのアセンブリや放出に関して重要な役割を担っていることが分かってきた。
 近年、MVB から内部の小胞をエクソゾームとして放出する機構が知られるようになった。我々は最近、このエクソゾームの放出にはESCRT 経路の最上流で機能するHrsが必要であることを報告した。我々は、エクソゾームの放出機構はHCVのアセンブリおよび出芽に酷似していることに着目し、小胞輸送経路ESCRTとHCVの関連を探索した。
研究方法
供試した細胞と調整
Huh7をHrs特異的にノックダウンするために、Hrs特異的なshRNAを発現するレトロウイルスベクターをトランスフェクションしたあと、ピューロマイシンを用いて選択した。
エクソゾームの分離精製
培養上清中のエクソゾームを定量するために、10 cmシャーレに培養した細胞にA23187 (Ca ionophore, Sigma) を用いて刺激し、48時間後に上清を回収した。培養上清に含まれるエクソゾームは、既報の手技を用いて精製した。
ショ糖密度勾配
ショ糖密度勾配はショ糖をHepes緩衝液に溶解し(10%および60%)、遠心管に2相に重層し、3時間水平に倒した後に使用した。精製したエクソゾームを加え、100,000 gで20時間遠心して分画を作成した。
結果と考察
ESCRT構成分子の機能低下Huh7細胞を樹立し、JFH1を感染させたところ、上清中のJFH1-RNAはいずれの機能低下細胞においも有意に減少した。上清に放出される感染性HCV粒子も同様に減少した。細胞内のHCV-RNA には有意な変化は認めなかった。免疫電顕をおこなうと、HCVコアタンパクとmultivesicular body内のintraluminal vesicleは共局在していた。
結論
HCVはHrs依存性エクソゾーム経路を利用してアセンブリを行っていることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-07-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201125031Z