特発性心筋症

文献情報

文献番号
199700975A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性心筋症
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
篠山 重威(京都大学)
研究分担者(所属機関)
  • 今泉勉(久留米大学)
  • 河村慧四郎(大阪医科大学)
  • 北畠顕(北海道大学)
  • 杉下靖郎(筑波大学)
  • 関口守衛(信州大学)
  • 田中弘允(鹿児島大学)
  • 松崎益徳(山口大学)
  • 松森昭(京都大学)
  • 横山光宏(神戸大学)
  • 藤原久義(岐阜大学)
  • 猪子英俊(東海大学)
  • 川名正敏(東京女子医科大学)
  • 下遠野邦忠(京都大学ウイルス研究所)
  • 武田信彬(東京慈恵会医科大学)
  • 田中雅嗣(岐阜県国際バイオ研究所)
  • 豊岡照彦(東京大学)
  • 廣江道昭(東京医科歯科大学)
  • 堀正二(大阪大学)
  • 木村彰方(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 世古義規(東京大学)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 臨床調査研究グループ 循環器系疾患調査研究班
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原因不明の心疾患、特発性心筋症には大別して主に左室心筋の異常な肥大を来す肥大型心筋症と心室の拡張と収縮力の低下を特徴とする拡張型心筋症に分けられる。前者の約半数には家族性がみられ、常染色体優生遺伝様式を示しその約20%に心筋β-ミオシン重鎖遺伝子の点突然変異が存在することが明らかにされたが、過半数の症例において遺伝子異常は明らかにされていない。又遺伝子異常がどの様なメカニズムで病態を形成するのかも不明である。一方、発病後5年間に半数が死亡するという予後不良の拡張型心筋症の発症には環境因子、特にウイルス感染の関与が示唆されているが、その病因解明は今後の大きな課題である。 近年、我々の研究により、心筋症の病因としてC型肝炎ウイルス(HCV) 感染の重要性が明らかになった。今回HCV感染と心筋症との関連をさらに追求する為 (1) 拡張型及び肥大型心筋症におけるHCV感染の頻度について検討した。(2) 免疫遺伝学的背景の検討の為、HCV陽性の拡張型及び肥大型心筋症患者について、HLAタイピングを施行した。(3) HCV感染がどの様な機構で心筋症を発症するのかを明らかにする目的で、HCV蛋白質と相互作用する細胞側の蛋白質の同定とその蛋白質の機能解析を行った。
研究方法
(1) 特発性心筋症調査研究班の共同研究者としてアンケート調査を行った。
(2) PCR-RFLP (polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism) 法を用いて、HLA DNAタイピングを行い、健常一般集団との比較検討を行った。(3) インターフェロンによるウイルス排除に必要な2本鎖RNA依存的に活性化される蛋白質キナーゼ(PKR) を産生している哺乳動物細胞にHCVのNS5A蛋白を産生するプラスミドを導入し、PKRとの相互作用を免疫反応により解析した。
結果と考察
(1) 拡張型心筋症619例中37例(6.0%)、肥大型心筋症585例中61例(10.4%)がHCV抗体が陽性であった。(2) 拡張型心筋症では、DPB1*0901がp>0.0129と有意な増加を認めた。一方、肥大型心筋症ではDQB1*0303, DRB1*0901が共にp>0.026で有意な増加を認めた。(3) HCVのNS5Aは哺乳細胞が産生するPKRと相互作用することを明らかにした。また、NS5Aと結合したPKRのリン酸化は抑制されていた。
結論
(1) 肥大型及び拡張型心筋症においてHCV感染は高頻度にみられた。(2) HCV陽性心筋症患者において拡張型がDQB1*0601、肥大型がDQB1*0303, DRB1*0901に増加が認められ、その発症には両者で異なるHLA抗原が関与している可能性が考えられた。(3) HCVのNS5A蛋白質はPKRと相互作用し、PKRの機能を抑制する可能性が示唆された。C型肝炎ウイルス感染と心筋症との関連は本研究班が世界で初めて報告したものであり今回の疫学的調査、免疫遺伝学的背景の検索、生化学的検討により、心筋症におけるHCV感染の重要性がさらに示唆された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)