日本人の細胞に由来するiPS細胞からの誘導ヒト肝細胞を用いたキメラマウス肝炎モデル開発とその前臨床応用

文献情報

文献番号
201125008A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の細胞に由来するiPS細胞からの誘導ヒト肝細胞を用いたキメラマウス肝炎モデル開発とその前臨床応用
課題番号
H21-肝炎・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
池田 一雄(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉里 勝利( 株式会社フェニックスバイオ 再生生物学)
  • 立野 知世(向谷知世) ( 株式会社フェニックスバイオ 再生生物学)
  • 寺岡 弘文(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 )
  • 田中 靖人(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 中西 真(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,707,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,日本人の細胞からiPS細胞を作製してヒト肝細胞へと分化誘導させ,これを移植して得たキメラマウスを利用し,肝炎ウイルス感染に関わる宿主要因を日本人肝細胞で検討できるモデルを開発することを目的とするものである。
研究方法
iPS細胞からヒト肝細胞へと分化誘導させ,肝細胞マーカー遺伝子の発現やタンパク質発現を指標に肝細胞系譜への分化誘導を検討した。ヒトiPS細胞から分化誘導させた肝細胞を,uPAを発現し肝障害を引き起こすuPAマウスと,免疫不全SCIDマウスを掛け合わせたuPA/SCIDマウスに移植した。また,中空糸モジュールにヒト肝細胞キメラマウスの肝組織より単離した肝細胞を充填して3次元培養系を作成した。
結果と考察
レピシエントであるuPA/SCIDマウスでのヒト肝細胞のKineticsが解析され,凍結ヒト肝細胞のマウスへの生着率は約10%で,移植後11週で約1万倍に増殖すること,肝障害を引き起こす化合物を投与することで増殖性ヒト肝細胞,キメラマウス由来凍結ヒト肝細胞の生着が向上することが明らかにされた。宿主側の改良も加わり,ヒトiPS細胞由来肝細胞を移植したマウスでは,血中ヒトアルブミン濃度の顕著な上昇が認められた。肝切片上には,ヒトアルブミン,ヒトCK8/18陽性コロニーが多数観察された。正常免疫能を有するマウス胎児へのヒトiPS細胞由来肝細胞移植では,生後10日後,30日後の観察で,ヒトアルブミン,ヒトCK8/18陽性コロニーが確認された。In vitroの系では,中空糸にヒト肝細胞キメラマウスの肝組織より単離した肝細胞を充填することにより,3次元培養系を作成し,HBVの感染実験を行ったところ,感染初期から経時的に培養上清中のHBV-DNA量の増加を確認できた。また,p16因子がヒトiPS細胞の分化誘導に効果を示すことが明らかとなった。
結論
ヒトiPS細胞からより成熟した肝細胞を誘導・作成することで,ヒト肝細胞保持キメラマウスを作成した。肝炎ウイルス感染実験には、細胞置換率の高いマウスを作成する必要があるため、成熟した肝細胞の分化誘導法のさらなる開発が今後重要となる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201125008B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人の細胞に由来するiPS細胞からの誘導ヒト肝細胞を用いたキメラマウス肝炎モデル開発とその前臨床応用
課題番号
H21-肝炎・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
池田 一雄(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉里 勝利(株式会社フェニックスバイオ 再生生物学)
  • 立野 知世(向谷知世)(株式会社フェニックスバイオ 再生生物学)
  • 寺岡 弘文(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 中西 真(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,日本人の細胞からiPS細胞を作製してヒト肝細胞へと分化誘導させ,これを移植して得たキメラマウスを利用し,肝炎ウイルス感染に関わる宿主要因を日本人肝細胞で検討できるモデルを開発することを目的とするものである。
研究方法
日本人の細胞からiPS細胞を作製してヒト肝細胞へと分化誘導させ,肝細胞マーカー遺伝子の発現やタンパク質発現を指標に肝細胞系譜への分化誘導を検討した。ヒトiPS細胞から分化誘導させた肝細胞を,uPAを発現し肝障害を引き起こすuPAマウスと、免疫不全SCIDマウスを掛け合わせたuPA/SCIDマウスに移植した。また,中空糸モジュールにヒト肝細胞キメラマウスの肝組織より単離した肝細胞を充填して3次元培養系を作成した。
結果と考察
日本人線維芽細胞由来のヒトiPS細胞からの肝細胞への分化誘導実験で,内胚葉系細胞マーカーのSox17,Pdx1,肝芽細胞マーカーのAfpは,分化誘導開始15日目,20日目に発現し,Afpでは分化誘導に伴い遺伝子発現量が増加すること,成熟肝細胞マーカーのAlbは,分化誘導開始20日目で強く発現することが確認された。また,未熟なヒト肝細胞がuPA/SCIDマウス内でヒト成熟肝細胞へ分化することも確認された。iPS細胞より分化誘導させたヒト肝細胞をuPA/SCIDマウスに移植することにより,マウスの血中でのヒトAlbの産生を確認することができた。また,宿主側の改良を加えることでヒトiPS細胞由来肝細胞を移植したマウスでは,血中ヒトAlb濃度の顕著な上昇が認められた。肝切片上には,ヒトAlb,ヒトCK8/18陽性コロニーが多数観察された。正常免疫能を有するマウス胎児へのヒトiPS細胞由来肝細胞移植では,生後10日後,30日後の観察で,ヒトAlb,ヒトCK8/18陽性コロニーが確認された。In vitroの系では,中空糸にヒト肝細胞キメラマウスの肝組織より単離した肝細胞を充填することにより,3次元培養系を作成し,HBVの感染実験を行ったところ,感染初期から経時的に培養上清中のHBV-DNA量の増加を確認できた。
結論
ヒトiPS細胞からより成熟した肝細胞を誘導・作成することで,ヒト肝細胞保持キメラマウスを作成した。肝炎ウイルス感染実験には、細胞置換率の高いマウスを作成する必要があるため、成熟した肝細胞の分化誘導法のさらなる開発が今後重要となる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201125008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人肝細胞の供給は,キメラマウス作製のみならず,医薬品の毒性試験や肝(細胞)移植医療の分野においても関心が持たれているところであるが,今回の研究ではiPS細胞からの肝細胞への分化誘導法の開発で一定の成果が認められた。
臨床的観点からの成果
日本人肝細胞を保持するキメラ動物でさらに免疫機能が備わった動物モデルが肝炎ウイルス実験の理想的なモデルで,この動物モデルを用いることによりウイルス感染時に生体内で実際に起こっている事象を再現でき病態解明に繋がるのであるが,今回の研究では生着率は不十分であるが日本人肝細胞を保持するキメラマウスを作製することができた。
ガイドライン等の開発
本研究は基礎的研究であり,ガイドラインの関与には至っていない。
その他行政的観点からの成果
肝炎ウイルス感染に伴う肝疾患の病態解析と新検査法や治療法開発は,疾患の週末像である肝癌予防の観点からも厚生労働行政上の大きな課題となる。本研究で開発を進めるモデル動物は,ウイルス感染時に生体内で実際に起こっている事象を再現でき病態解明に繋がるため,ヒト肝細胞生着率の改善につとめ,大量生産ラインを確立できることを期待したい。
その他のインパクト
平成24年1月19日大阪市立大学文化交流センター(大阪駅前第二ビル)において,外部の専門家を交えて会議を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
94件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sa-Nguanmoo P, Tanaka Y, Ratanakorn P et al.
Cross-species transmission of gibbon and orangutan hepatitis B virus to uPA/SCID mice with human hepatocytes.
Virus Res. , 158 , 209-215  (2011)
原著論文2
Tatematsu K, Tanaka Y, Kurbanov F et al.
A genetic variant of hepatitis B virus divergent from known human and ape genotypes isolated from a Japanese patient and provisionally assigned to new genotype J.
J Virol. , 83 , 10538-10547  (2009)
原著論文3
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al.
Efficient generation of functional hepatocytes from human embryonic stem cells and induced pluripotent stem cells by HNF4α transduction.
Mol.Ther. , 20 , 127-137  (2012)
原著論文4
Inamura M, Kawabata K, Takayama K et al.
Efficient generation of hepatoblasts from human ES cells and iPS cells by transient overexpression of homeobox gene HEX.
Mol. Ther. , 19 , 400-407  (2011)
原著論文5
Tashiro K, Kawabata K, Inamura M et al.
Adenovirus vector-mediated efficient transduction into human embryonic and induced pluripotent stem cells.
Cell. Reprogram. , 12 , 501-507  (2010)

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
2017-01-20

収支報告書

文献番号
201125008Z