文献情報
文献番号
201125003A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ジェノタイプA型感染の慢性化など本邦における実態とその予防に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 田中 靖人(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
- 狩野 吉康(札幌厚生病院)
- 荒瀬 康司(虎の門病院 健康管理センター)
- 今関 文夫(千葉大学大学院医学研究院)
- 四柳 宏(東京大学 医学部)
- 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
- 梅村 武司(信州大学 医学部)
- 豊田 秀徳(大垣市民病院 消化器科)
- 三田 英治(国立病院機構大阪医療センター 消化器科)
- 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
- 古庄 憲浩(九州大学大学院 感染環境医学)
- 内田 茂治(日本赤十字社血液事業本部 中央血液研究所)
- 田沼 順子(国立国際医療研究センター病院 エイズ治療研究開発センター)
- 多田 有希(国立感染症研究所 感染症情報センター)
- 水落 利明(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
43,756,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
HBVは世界的に10のgenotypeに分類され、各genotypeにより地理的分布が異なる、臨床像に違いがあるということが明らかにされた。以前より本邦ではB型急性、慢性肝炎ともにgenotype BおよびCが多数を占めていたが、近年、B型急性肝炎において欧米型であるgenotype Aの占める割合が増加しているということが報告された。また、これまで成人の水平感染によるB型急性肝炎は一過性感染に終息し慢性化はないと考えられていたが、genotype Aの急性感染では約10%程度に慢性化が起こると報告されている。本研究班においては、実際の慢性化率を把握するため、全国の研究協力者と共同で最近のB型急性肝炎の発生状況とgenotypeの分布、慢性化、遷延化の比率を調査する。
研究方法
届出された症例は10%以下と低率であるため、本年度は届出率の改善に向けて周知徹底を行う。また、全国より収集したB型急性肝炎症例の血清よりHBV-DNAを増幅して遺伝子配列を決定し、それらの配列を日本人のB型慢性肝炎のgenotype A症例や、データベース上の欧米より登録されたgenotype A症例と分子系統解析を行う。
結果と考察
届出率と届出数およびDPCデータベースや献血者のデータより算定すると、B型急性肝炎の年間発生数は不顕性感染も含め年間8,000~8,400人と推定される。1982年から2010年に発生したB型急性肝炎症例1088例の全国調査の結果、Genotype Aは首都圏だけでなく、地方部でも急速に増加しており、系統解析によるとすでにgenotype Aの大部分の症例が国内感染である。B型急性肝炎の慢性化症例ではgenotype Aの割合が有意に高く、肝炎の程度が比較的軽い症例が多かった。
結論
これまでのgenotype AによるB型急性肝炎の慢性化率のdiscrepancyに関しては、慢性化の定義自体を見直す必要があると考えられる。我々の提唱する定義で判定すると、HIV非合併例でのgenotype AによるB型急性肝炎の慢性化率は7-8%であった。実際のB型慢性肝炎でのgenotype Aの増加率をみてみると、急激ではないが着実にその割合が増加している。明らかな急性肝炎の症状を認めた症例の慢性化率が7-8%であるということ、B型急性肝炎における男性の割合が95%程度であるのと比較して、慢性肝炎では70%程度であること、慢性肝炎のgenotype A症例では明らかな急性肝炎症状を認めた症例がほとんどなかったことから、無症候性感染で特に女性でキャリア化をきたしている可能性が考えられる。
公開日・更新日
公開日
2012-06-01
更新日
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