HIV-1複製におけるサイクロフィリンAの機能の解明-異性化酵素活性欠失変異体を用いた機能解析

文献情報

文献番号
201124035A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1複製におけるサイクロフィリンAの機能の解明-異性化酵素活性欠失変異体を用いた機能解析
課題番号
H23-エイズ・若手-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹村 太地郎(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サイクロフィリンA(CypA)はHIV-1キャプシド(CA)と相互作用しHIV-1複製に関与すると考えられている宿主因子の1つであるが、その作用機序は明らかでない。本研究ではHIV-1複製におけるCypAの作用機序を解明することを目的とした。
研究方法
1 点変異導入CypAを用いた解析
 PCR法を用いて異性化酵素活性部位に変異を導入したHA標識CypA発現プラスミドを3種類(R55A、H126A、S99T)作製した。また、293T細胞に恒常発現shRNAを導入し内在CypA発現抑制細胞株(293T.CypAsh)と対照として293T.nonTshを作製した。これらの細胞株に変異CypA発現プラスミドをトランスフェクションし、2日後VSV-GでシュードタイプしたLuciferase発現HIV-1ベクターを約4時間感染させた。2日後に細胞中のLuciferase活性を計測し、それぞれの変異CypA発現細胞におけるHIV-1感染効率を評価した。
2 CypA阻害条件下においても複製可能な変異HIV-1の分離と塩基配列の解析
本研究では野生型NL4-3株とCypA結合ループに変異を導入したNL4-3(P90A.A92E)株とをCsA有無の各条件で継代培養し、CypAとCAの結合を阻害した条件下においても複製可能な変異HIV-1の分離を試みた。細胞はJurkat細胞を用い、ウイルス増殖をp24 ELISAにて評価し、ウイルス増殖の確認後、Gag領域に注目して塩基配列を決定した。
結果と考察
異性化酵素活性欠失CypA(H126A)ではHIV-1感染能が復帰しなかったことから、CypAの異性化酵素活性とそれに伴うGag蛋白質の構造変化がHIV-1複製前期過程においては必要と考えられた。また、HIV-1複製のCypA依存性がCypA結合ループとは異なるループ7領域による可能性が示され、さらにループ7領域に直接CypAが結合することが示唆された。
結論
 本研究はHIV-1複製におけるCypAの機能解明を目的とした。CypAの異性化酵素活性がHIV-1複製前期過程においては必要と考えられること、HIV-1複製のCypA依存性がCypA結合ループとは異なる領域(ループ7領域)により、さらにループ7領域に直接CypAが結合する可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は宿主タンパク質サイクロフィリンA (CypA)のHIV-1複製における機能解明を目的とした。CypAの異性化酵素活性がHIV-1複製前期過程において必要と考えられること、HIV-1複製のCypA依存性がこれまで二報告されていたCypA結合部位とは異なる領域(ループ7領域)により、さらにループ7領域に直接CypAが結合する可能性が示された。以上のことはHIV-1複製前期過程の分子機構解明に貢献するものと考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究はHIV-1増殖機構の解明を目指す基礎的研究であり、当該研究期間においては臨床的な成果には至っていない。しかし、CypAと結合するウイルスタンパク質キャプシドは様々な宿主因子と相互作用するとともに、細胞傷害性免疫(CTL)の有効な標的となることが明らかにされている。CTLからの逃避の成否とウイルス複製における機能の間には密接な関係があると考えられ、今後有効なCTLを誘導する方法を開発する上で有用な情報を提供できると考えられる。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201124035Z