APOBEC3分子のタンパク質レベルの機能性多型を基礎としたHIV-1複製抑制機構の分子基盤の解明

文献情報

文献番号
201124032A
報告書区分
総括
研究課題名
APOBEC3分子のタンパク質レベルの機能性多型を基礎としたHIV-1複製抑制機構の分子基盤の解明
課題番号
H23-エイズ・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮澤 正顯(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高折 晃史(京都大学大学院医学研究科)
  • 伊藤 暢聡(東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部)
  • 有吉 紅也(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
22,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 マウスAPOBEC3は、Vifの有無に関わらずHIV-1複製を阻害する。本研究は、ヒトAPOBEC3GのN-末端と相同なマウスAPOBEC3のZ2ドメインを大量発現させ、ウイルス及び細胞タンパク質との相互作用を解析、その結晶化を試みるとともに、構造・機能に対するexon 5の役割を明らかにして、ヒトAPOBEC3GにVifによる阻害を受けないHIV-1複製抑制能を付与する分子設計の基盤を築くことを目的とした。
研究方法
 1)マウスAPOBEC3 mRNA発現量の差がタンパク質量に対応するか否かをWestern blot法で、exon 5の有無がタンパク質発現に与える影響をin vitro転写翻訳系で検討した。また、マウスAPOBEC3各対立遺伝子への変異導入により、exon 5発現に関わる遺伝子多型を解析した。
 2)APOBEC3対立遺伝子産物及びそれらの変異体と結合するマウスレトロウイルス及びHIV-1構成分子を、免疫沈降や機能抑制の測定で同定した。
 3)Z2ドメインの結晶化を目指し、マウスAPOBEC3各対立遺伝子cDNAクローンを大腸菌発現ベクターに移植、タンパク質発現・精製系を構築した。
 4)ヒト細胞株のAPOBEC3Gプロモーター部位多型を探るとともに、ベトナムの新規コホートを開発した。
結果と考察
 1)マウスAPOBEC3の抵抗性対立遺伝子はタンパク質レベルで高発現であり、exon 5の有無が翻訳効率を変えた。また、スプライシング調節部位はintron 4末端部のTCCT反復回数とexon 5内部のG/C多型であって、exon 5はマウスの進化過程でごく最近発現するようになった。
 2)二つの対立遺伝子に由来するAPOBEC3 Z2ドメインを可溶化状態で大量に発現させ、結晶化に適するレベルまで濃縮した。精製Z2ドメインは二量体を形成していた。
 3)多数のヒト細胞株でAPOBEC3G遺伝子上流域にメチル化の個体差を見出した。また、ベトナムコホートにHIV曝露非感染者が多いことを見出した。
結論
 マウスAPOBEC3遺伝子多型は、スプライシング制御を通じてタンパク質発現量の多寡に直結する。マウスAPOBEC3 Z2ドメインの大量発現と精製に成功し、二量体形成を見出した。ヒトAPOBEC3G遺伝子にはメチル化の個体差がある。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201124032Z