HIV-1感染・発症霊長類モデル研究:宿主内因性及び獲得免疫解析に基づく前臨床評価システムの最適化

文献情報

文献番号
201124031A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1感染・発症霊長類モデル研究:宿主内因性及び獲得免疫解析に基づく前臨床評価システムの最適化
課題番号
H23-エイズ・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
明里 宏文(京都大学 霊長類研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 昭夫(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 高折 晃史(京都大学 医学研究科)
  • 中山 英美(大阪大学 微生物病研究所 )
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV-1特異的でSIV, SHIVモデルでは評価困難な新規薬剤や予防治療ワクチンの前臨床評価研究を目的として、実用的なHIV-1感染霊長類モデルの開発が求められてきた。当該研究課題では、サル類におけるHIV-1感染および病態発現の制御に寄与する宿主内因性及び獲得免疫の基礎的解析に基づき、慢性エイズを発症する病原性HIV-1感染霊長類モデルを確立し急性・慢性HIV-1感染霊長類モデルの前臨床評価システムとしての最適化を目指す。
研究方法
本研究チームで同定済みのHIV-1宿主域を規定する宿主内因性免疫因子に関して、その機能ドメインや作用機序解析を進めるとともに、関連ウイルス遺伝子(gag-CA, vif, vpu等)との相互作用を規定する領域の分子構造生物学的検討を進める。この結果を基に、サル末梢血Tリンパ球での増殖能が向上した改良型HIV-1mtを構築し、カニクイザルにおける増殖能および免疫応答を評価する。本研究班においては、各研究班員が合目的に協調して本課題に取り組むことを主眼とする。
結果と考察
新たに構築した第3世代HIV-1mtクローンのサル感染実験結果より、これまでのHIV-1mtと比較して格段に複製効率が高いことが確認された。特に、HIV-1感受性に関するサル個体差をTRIM5遺伝子型が規定していることをin vitroのみならずin vivoでも検証し、HIV-1サルモデル確立に向けてフィリピン産カニクイザル個体の有用性が遺伝子レベルで実証された。今後はTRIM5遺伝子型に基づくHIV-1mt感受性個体の選別、さらにTetherinによる抗ウイルス効果を回避可能な第4世代HIV-1mt構築により、実用的なHIV-1感染サルモデルの実現に大きく貢献するものと期待される。
結論
サル類におけるHIV-1感染および病態発現の制御に寄与する宿主内因性及び獲得免疫の基礎的研究成果に基づき、サル個体での増殖能が格段に向上したHIV-1mt樹立に成功し、さらにTRIM5を初めとする宿主内因性因子の機能発現や宿主域規定に関わる新たな分子機構を明らかにした。さらにTetherinによる抗ウイルス効果を回避可能な第4世代HIV-1mt構築に成功した。これらの成果は、前臨床評価システムとして実用的なHIV-1感染サルモデルの実現に向け大きな進展であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201124031Z