HIV侵入の動的超分子機構を標的とするケミカルバイオロジー創薬研究

文献情報

文献番号
201124028A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV侵入の動的超分子機構を標的とするケミカルバイオロジー創薬研究
課題番号
H22-エイズ・若手-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鳴海 哲夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,897,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題では、HIVの細胞侵入過程である動的超分子機構を標的として、これまでほとんど行われてこなかった有機合成化学に基づいたケミカルバイオロジー研究を行い、その知見を基づいた新規HIV侵入阻害剤の創製研究を目的とする。
研究方法
平成22度の研究によって見出したHAR-171をリード化合物として、高活性化および低毒性化など医薬品プロフィールを目指し、新規CD4ミミック誘導体を化学合成し、それら化合物の生物活性(抗HIV活性、細胞毒性、gp120の構造変化誘起能)を評価した。また、HIV側タンパク質から宿主側への機能解析として、コレセプターとの相互作用に重要な役割を担うV3 loop領域を模倣したV3 loopペプチドをリード化合物として、部分ペプチドライブラリーを構築し、ウィルス視点でのコレセプターの機能解析を行い、CXCR4結合活性を評価した。
結果と考察
生物活性評価の結果、芳香環パラ位の塩素原子に加え、メタ位にフッ素原子を導入することで、HAR-171の2倍程度の抗HIV活性および1.5倍程度のgp120構造変化誘起能を有するHAR-431を見出した。また、X4指向性ウイルスのV3 loop領域由来の部分ペプチドおよびそれらを組み合わせたシャッフルペプチド、へリックス領域を安定化する非天然アミノ酸を導入したペプチドミメティックを合成し、CXCR4結合活性および抗HIV活性を評価した結果、BASE, STEM, TIPの全ての領域を含み、N末端とC末端をジスルフィド結合で環化した環状ペプチドにおいてのみ顕著なCXCR4結合活性および抗HIV活性が見られた。
結論
HIVの細胞侵入の第一段階であるgp120とCD4の相互作用様式の解析を目的として、gp120の構造変化を誘起するCD4ミミック誘導体のさらなる構造最適化を行い、報告者らが見出したHAR-171よりさらに強力な抗HIV活性を有するHAR-431を見出した。また、コレセプターCCR5/CXCR4との相互作用に重要な役割を担うV3 loop領域を模倣したV3 loopミミックの創製研究において、V3 loopとコレセプターの相互作用様式を化学的手法により解析することで、TOZP-029を見出し、配列だけでなく構造の重要性を明らかにした。これらの結果は今後のHIV侵入阻害剤の開発研究において、重要な基礎的知見を与えるものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201124028Z