個別施策層(とくに性風俗に係る人々・移住労働者)のHIV感染予防対策とその介入効果に関する研究

文献情報

文献番号
201124017A
報告書区分
総括
研究課題名
個別施策層(とくに性風俗に係る人々・移住労働者)のHIV感染予防対策とその介入効果に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
東 優子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 榎本 てる子(関西学院大学 神学部)
  • 野坂 祐子(大阪教育大学・学校危機メンタルサポートセンター)
  • 青山 薫(神戸大学 国際文化学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,621,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
3つの課題を通じて、対象層の実態と感染への脆弱性の諸要因を把握し、介入とその評価を踏まえて、HIV対策の「谷間」を埋める新規モデルを提唱することを目的とする。
研究方法
課題1「セックスワーカー(以下SW)との協働による予防介入プログラムの開発と普及に関する研究」では、①海外のSW当事者・支援者団体との交流、②日本における日本人および外国人SW、TGSWへのアウトリーチ活動を実施した。課題2「関西圏当事者コミュニティ・支援団体・行政機関の協働による外国籍住民のための健康予防介入に関するプロジェクト」では、事業の評価とニーズ調査を実施した。課題3「生活困難を抱える女子の性の健康」では、これまでの調査結果の周知および支援プログラムの共有化を目指し、児童福祉施設や管轄する児童相談所を対象とする研修等を実施、また一施設において支援プログラムを実施した。
結果と考察
課題1により、予防介入およびプログラム策定への当事者参加の現状と課題、保健活動、権利擁護運動、移住性労働者との連携活動に関する知見を得た。②では昨年度との相違点(外国人SWの減少)と類似点が明らかになった。課題2の事業は高く評価され、行政その他セクターとの協働による持続可能なモデルを提示することができた。課題3では、児童福祉施設や児童相談所の職員等を対象にした研修会(約250名参加)を実施、質的な評価調査結果に基づく教育資材の改訂、施設内支援プログラムの継続的実施、施設職員による日常生活での支援を実現した。
結論
当事者・支援者団体との協働については、時間的にも長い視野をもった研究体制が必要である。1)SWについては、日本人、外国人、TGそれぞれの法的立場に応じた予防介入プログラムが必要であり、2)不法化されている立場にあるからこそ、「接近困難」を克服するための適切なチャンネルをもつことが重要である。3)「接近困難」は法規制の強化によって度を増す。4)当事者同士の連携を促し、社会的スティグマを軽減する包括的なアプローチ、5)ピアが経験や情報をシェアし立場の差を埋める活動の支援・促進、6)当事者・団体をHIV/STI予防行動の専門家として公的に認知する仕組み、7)プライベートでも、脆弱な立場を克服しHIV/STIなどの危険を減少させる方向性をもったアプローチが必要である。8)すべての過程(段階)において当事者が参画できるアプローチの開発が重要である。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124017B
報告書区分
総合
研究課題名
個別施策層(とくに性風俗に係る人々・移住労働者)のHIV感染予防対策とその介入効果に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
東 優子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 榎本 てる子(関西学院大学 神学部)
  • 野坂 祐子(大阪教育大学 学校危機メンタルサポートセンター)
  • 青山 薫(神戸大学 国際文化学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
対象層の実態と感染への脆弱性の諸要因を把握し、介入とその評価を踏まえて、HIV対策の「谷間」を埋める新規モデルを提唱することを目的とする。
研究方法
課題1「性風俗に係る人々のHIV感染予防・介入手法」では、性風俗業界の今日的主流である「デリヘル」を対象に女性従業員調査(N=357)、トランスジェンダー従業員調査(N=42)と関係者への聞き取り調査を実施した。課題「生活困難を抱える女子の性の健康」では、性産業従事や金銭が介在する性行動等により児童自立施設に入所した女子の性行動や心理社会的状況に関する量的調査(N=436)、施設職員等からの聞き取り調査に基づく支援モデルの試行・構築の成果を踏まえ、予防啓発資材の開発を行った。課題「外国人(とくにSW)のHIV感染予防と介入」では、留学生調査(N=361)によるニーズ把握や保健所とNPO法人の協働による「医療相談会」の成果を踏まえ、「関西圏当事者コミュニティ・支援団体・行政機関の協働による外国籍住民のための健康予防介入に関するプロジェクト」の実践を通じたニーズ調査・事業評価を行った。課題「SWとの協働による予防介入プログラムの開発と普及」では、FSW、外国人SW、TGSWおよびSWと自称しない求職女性たちを対象とする聞き取り調査を実施。さらには、諸外国のSW個人・研究者・支援組織との交流から経験上・研究上の知見を入手した。
結果と考察
SW当事者がその開発と普及に向けて協働するHIV/AIDS予防介入について、国内では本研究班の協力者であるSWASHがアウトリーチを通して行っている以外は行われてこなかった。「接近困難層」へのアプローチを可能にするチャンネルをもつことで実現した、FSW、TGSWや外国人SWを対象として調査研究の成果は、現実的な性感染症予防効果をあげる重要な示唆に富むものであり、同時に、国連レベルでも国内政策上も問題になってきた、人身取引被害者の被害回復への手がかりにもなることが期待される。「関西圏当事者コミュニティー・支援団体・行政機関の協働による外国籍住民のための健康予防介入に関するプロジェクト」が生み出した健康プログラムは、京都市の保健行政の理解と支援を得て継続実施の見通しがつき、新規事業モデルを示すことができた。
結論
当事者・支援者団体との協働については、時間的にも長い視野をもった研究体制が必要である。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
SW当事者がその開発と普及に向けて協働するHIV/AIDS予防介入について、国内では本研究班の協力者であるSWASHがアウトリーチを通して行っている以外は行われてこなかった。「接近困難層」へのアプローチを可能にするチャンネルをもつことで実現した、FSW、TGSWや外国人SWを対象として調査研究の成果は、現実的な性感染症予防効果をあげる重要な示唆に富むものであり、同時に、国連レベルでも国内政策上も問題になってきた、人身取引被害者の被害回復への手がかりにもなることが期待される。
臨床的観点からの成果
とくになし
ガイドライン等の開発
とくになし
その他行政的観点からの成果
分担課題「関西圏の外国人(特にSW)のHIV感染予防と介入に関する研究:関西圏当事者コミュニティー・支援団体・行政機関の協働による外国籍住民のための健康予防介入に関するプロジェクト」が生み出した健康プログラムは、伏見保健センターを始め京都市の保健行政の理解と支援を得て継続実施の見通しがついた。また、研究協力者であるSWASHはその活動実績が認められ、大阪府地域医療再生基金事業・感染症対策(平成23?25年度)に協力することになった。
その他のインパクト
本研究班では、(財)エイズ予防財団研究成果等普及啓発事業(成果発表会)による「セックスワーカーのいるまち」と題した公開シンポジウムを平成21年度と平成22年度に開催し、平成23年度には同財団・外国人研究者招聘事業を通じて招聘したオーストラリアSW当事者団体関係者とともに、神戸大学・大阪府立大学・関西学院大学で公開シンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
42件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
研究成果の報告を含む予防啓発パンフレットの作成

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201124017Z