ポピュレーション戦略及びハイリスク戦略による若者に対するHIV予防啓発手法の開発と普及に関する社会疫学的研究

文献情報

文献番号
201124014A
報告書区分
総括
研究課題名
ポピュレーション戦略及びハイリスク戦略による若者に対するHIV予防啓発手法の開発と普及に関する社会疫学的研究
課題番号
H21-エイズ・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
木原 雅子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学 文化学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,032,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会疫学的手法により開発した、多様な若者に対する啓発用webサイト閲覧の啓発効果を評価する。
研究方法
(1)日本人若者の予防介入研究:啓発サイトに誘導された若者に対する啓発の効果をランダム化比較試験(RCT)にて評価した。18-24歳のwebモニターを、介入群1(モバイル用予防啓発サイト[従来サイト]提示)、介入群2(トップページに重要情報を集中配置するよう改善を加えた[改善サイト]提示)、対照群(HIV以外の一般的健康サイト[一般サイト]を提示)に割り付け、予防介入を実施。介入一週間後の効果をネット調査で測定。測定項目は32項目。HIV/STI関連知識、性行動、予防意識、STI/HIV感染リスク認知、STI/HIV検査受検意図等。結果を3群で比較し介入効果を評価。
(2)滞日ブラジル人若者の予防介入研究:ピアと共同開発したポルトガル語の啓発用PCサイトの啓発効果を、三重県、愛知県のブラジル人学校で前後比較試験で評価。
結果と考察
(1)日本人若者の予防介入研究: RCTによる啓発の効果評価:参加者は1035人。アクセス解析によると、改善されたサイトの方が従来サイトよりも約半分ほど直帰率が低く、サイト滞在時間は約2倍近く長かった。一方、ネット調査から、知識の正解率は、対照群に比べ、従来サイト群では平均7%、改善サイト群では平均14%高率であった。感染リスク認知度は、改善サイト群において、対照群より約10%上回り、感染に対する油断意識は、対照群に比し、従来サイト群で約10%低値であった。
(2)滞日ブラジル人若者の予防介入研究: PCサイトの紹介を震災後のタイトなカリキュラムの各学校の先生を介して依頼したため、サイト紹介が不徹底であり、実際のサイト閲覧者は極めて低率であったため、サイト閲覧効果とは言えないが、知識の正解率は平均2%の微増、ほとんどの項目で変化がなく最高16%の上昇が観察されただけであった。
結論
トップページ情報集中サイトの閲覧という簡単な行為により、学校で1コマの予防教育を実施するのと同等の効果があることが示され、これまでアクセスが困難であった若者層に対する経済性、効率性の優れた効果の高い啓発モデルの基礎が確立した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124014B
報告書区分
総合
研究課題名
ポピュレーション戦略及びハイリスク戦略による若者に対するHIV予防啓発手法の開発と普及に関する社会疫学的研究
課題番号
H21-エイズ・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
木原 雅子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学 文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会疫学的手法(質的・量的方法、ソーシャルマーケティング、行動理論、社会実験法等を統合した手法)を用いて、webサイトやピアアプローチにより、アプローチ困難で支援ニーズの高い若者(非就学・高卒後日本人・滞日外国人)に対する予防啓発モデルの開発・普及を行う。
研究方法
(1) 日本人若者研究
21年度に、全国PCモニターを対象に、携帯サイトとPCサイト使用者の性行動を比較し、22年度は、開発した予防サイトの誘導カードの配布場所や配布方法の違いによるアクセス誘導効果の違いを、「追跡的固有QRコード法」を用いて検討した。23年度は、予防サイト閲覧の啓発効果を、webモニター1035人を対象にランダム化比較試験(RCT)にて評価した。介入群1(従来サイト提示)、介入群2(トップページに重要情報を集中配置した改善サイト提示)、対照群(HIV以外の一般健康サイトを提示)に割り付け、介入一週間後の効果をネット調査で測定した。
(2)滞日外国人若者の研究
21年度は、ブラジル人学校の男女生徒40人のピアと共同でホームページを作成。22年度は、開発したサイト広報活動を実施。予防サイト広報活動は、HIV陽性者ピアの協力で、学校での講演会、ラジオ、TVへの出演、ポルトガル語フリーペーパーへ掲載した。23年度は、開発したPCサイトの啓発効果を、ブラジル人学校で評価した。
結果と考察
(1) 日本人若者研究
PCサイト使用者に比べケータイサイト使用者の方が性行動が活発であることが示された。サイト誘導カードの最適条件の検討の結果、ピアからその知人への配布が最も誘導効果が高く、保健所内の検査受検者の配布で、受検者の知人ネットワークにより、第5世代まで情報が伝播した。誘導されたサイト閲覧の効果は、改善されたサイトの方が従来サイトよりも対象者が2倍長く滞在し、知識は、対照群より、従来サイト群では7%、改善サイト群では14%高く、感染リスク認知度も、改善サイト群において10%高かった。
(2) 滞日外国人若者研究
ピアと共同で啓発サイトを開発し、感染者ピアも含めた各種広報活動により、アクセス者が2倍近く増加した。
結論
予定通り、アプローチ困難な若者に対する効果的なwebサイト予防啓発モデルを開発し、経済性、効率性の優れた啓発モデルの基礎が確立した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究はアプローチ困難な多様な若者の社会文化に適した科学的予防啓発モデルの創出と普及という困難で重要な課題に取り組んだ社会的意義の高い研究であり、また就学している若者を対象とした対策(スクール戦略)のみならず非就学の若者もアクセスし得るITを用いた対策(サーバー戦略)により、包括的で、経済性、効率性、応用性に優れた新しい予防啓発モデルの可能性を示したという意味で学術的意義も高い。本研究は、2012年以降も、内容を改善しつつ継続研究として研究が続けられている。
臨床的観点からの成果
臨床的研究ではないので該当しない。
ガイドライン等の開発
後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)の策定に関わり、その過程で、研究で得られた情報に基づいて専門家としてのアドバイスを行った。指針作成のための会議は、平成23年1月26日、2月24日、3月31日、4月13日、4月27日、6月1日に開催された。
その他行政的観点からの成果
大阪市エイズ対策評価検討会議の専門家委員として、第二次大阪市エイズ対策基本指針の策定に関わり、青少年エイズ対策に対して専門家としてアドバイスを行った。平成23年1月23日、平成23年7月20日、平成23年8月24日、平成23年9月28日、平成24年2月8日に開催された。大阪府エイズ対策検討会委員にも平成24年2月22日に就任した。
その他、財団法人エイズ予防財団の青少年対策事業を2004年以来支援し、文部科学省の性教育普及推進事業(2007年~2010年度)として研究成果が広く活用された
その他のインパクト
本研究で得たデータは、3年間で、15編の和文総説論文を寄稿した。また、研究成果は、日本エイズ学会や日本性感染症学会など国内学会、台湾保健省の招待講演などで国際的にも発表し、また、111回の招待講演などで広く社会に普及した。2012-14年にかけても、133回の招待講演で、益々普及が進んでいる。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
22件
和文書籍2編を含む
その他論文(英文等)
1件
英文書籍
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
エイズ予防指針、第2次大阪市エイズ対策基本指針
その他成果(普及・啓発活動)
334件

特許

特許の名称
なし
詳細情報
分類:
特許の名称
なし
詳細情報
分類:

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ono-Kihara M, Sato T, Kato H
Demographic and behavioral characteristics of non-sex worker females attending sexually transmitted disease clinics in Japan: a nationwide case-control study
BMC Public Health , 10 , 106-  (2010)
原著論文2
木原正博、西村由実子、加藤秀子
先進諸国における早期梅毒流行の再興とその背景要因について
日本性感染症学会誌 , 22 , 30-39  (2011)
原著論文3
Suguimoto P,Techasrivichien T,Musmari PM et al.
Changing patterns of HIV epidemic in 30 years
Current HIV/AIDS report , 11  (2014)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201124014Z