難治性HIV感染症に対する治療法開発の基礎的研究

文献情報

文献番号
201124010A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性HIV感染症に対する治療法開発の基礎的研究
課題番号
H21-エイズ・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
滝口 雅文(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 潟永 博之(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 馬場 昌範(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所)
  • 松下 修三(熊本大学 エイズ学研究センター )
  • 天野 将之(熊本大学 エイズ学研究センター )
  • 前仲 勝実(北海道大学 大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
38,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
耐性ウイルスを克服できる新規薬剤[柱1]とHIV特異免疫を用いた治療法を目指した[柱2]研究を行う。
研究方法
柱1:プロテアーゼ二量体阻害剤や新たな融合阻害剤などに対する耐性獲得の機序を解明する。新たなプロテアーゼ二量体阻害剤やHIV-1転写阻害活性を有する薬剤の開発を行った。
柱2:細胞性免疫から逃避するHIV-1を新たに認識する細胞傷害性T細胞(CTL)を解析し、日本人でHIV-1を抑制するHLAの解明と中和抗体を用いた治療法の開発のための基礎研究をおこなった。
結果と考察
柱1では、ダルナビア(DRV)とSC34EKに対する耐性変異の出現機構を明らかにした。またDRV耐性変異ウイルスに効果がある新たなPI候補薬剤候補と3種類のHIV-1転写阻害活性を有する新規薬剤候補を同定した。
柱2では、CTLから逃避変異の蓄積を明らかにし、逃避変異を認識するCTLの同定とその認識機序を明らかにした。また日本人HIV-1感染者で、病態進行に関与するHLAを明らかにし、HIVのコントロールに有効なCTLの同定に道筋が付いた。中和能をもったコレセプター結合部位に対する交差反応性抗体を明らかにし、さらに抗体の小型化による反応性の改善を行った。NK細胞レセプター(KIR)の認識するHLA-C抗原に結合するHIVペプチドを明らかにし、そのKIRとの結合を調べるシステムを開発した。
結論
1)新薬開発では、DRV耐性変異ウイルスに効果がある新たなPI候補薬剤候補を同定でき、臨床試験候補として期待される効果を示した。
2)免疫治療の研究では、新たに逃避変異ウイルスを認識するCTLが明らかになり、中和活性能をもった抗体の小型化に成功できた。また、日本人HIV-1感染者で、病態進行に関与するHLAを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124010B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性HIV感染症に対する治療法開発の基礎的研究
課題番号
H21-エイズ・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
滝口 雅文(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 潟永 博之(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 馬場 昌範(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所)
  • 松下 修三(熊本大学 エイズ学研究センター )
  • 天野 将之(熊本大学 エイズ学研究センター )
  • 前仲 勝実(北海道大学 大学院薬学研究院)
  • 満屋 裕明(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
耐性ウイルスを克服できる新規薬剤[柱1]とHIV特異免疫を用いた治療法を目指した[柱2]研究を行う。
研究方法
柱1:プロテアーゼ二量体阻害剤や新たな融合阻害剤などに対する耐性獲得の機序を解明する。新たなプロテアーゼ二量体阻害剤やHIV-1転写阻害活性を有する薬剤の開発を行った。
柱2:細胞性免疫から逃避するHIV-1の解析および逃避HIV-1を新たに認識する細胞傷害性T細胞(CTL)を解析し、日本人でHIV-1を抑制するHLAの解明と中和抗体を用いた治療法の開発のための基礎研究をおこなった。
結果と考察
柱1では、ダルナビア(DRV)とSC34EKに対する耐性変異の出現機構を明らかにした。またDRV耐性変異ウイルスに効果がある新たなPI候補薬剤候補を3種類、またHIV-1転写阻害活性を有する新規薬剤候補を同定した。
柱2では、CTLから逃避変異の蓄積を世界的レベルで明らかにし、さらに逃避変異を認識するCTLの同定とその認識機序を明らかにした。また日本人HIV-1感染者で、病態進行に関与するHLAを明らかにし、HIVのコントロールに有効なCTLの同定に道筋が付いた。中和能をもったコレセプター結合部位に対する交差反応性抗体を明らかにし、さらに抗体の小型化による反応性の改善を行った。NK細胞レセプター(KIR)の認識するHLA-C抗原に結合するHIVペプチドを明らかにし、そのKIRとの結合を調べるシステムを開発した。
結論
1)新薬開発では、新たなPI候補薬剤候補を同定でき、臨床試験候補として期待される効果を示した。
2)免疫治療の研究では、新たに逃避変異ウイルスを認識するCTLの同定と、中和活性能をもった抗体の小型化に成功できた。また日本人HIV-1感染者で、病態進行に関与するHLAを明らかにした。 さらにKIRが認識するHIVペプチドを同定するシステムを確立できた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班の主な研究成果として、1)プロテアーゼ重合阻害ダルナビアに耐性ウイルスにも効果がある新規坑HIV薬の開発方法を提示することができたこと、2)細胞傷害性T細胞から逃避する変異ウイルスの蓄積が世界的規模で起きていることを明らかにしたこと。3)日本人でHIVの増殖をコントロールするHLAを同定できたこと。4)広範囲に反応する中和抗体を明らかにできたこと。4)HIVワクチン・免疫療法に新たな課題を提示したことである。
臨床的観点からの成果
1)臨床試験にもっていける数種類の新規薬剤候補を同定できたこと。
2)免疫による逃避変にが、薬剤感受性に影響を与える可能性を示唆したこと。
以上の成果が得られた。
ガイドライン等の開発
該当しない。
その他行政的観点からの成果
該当しない。
その他のインパクト
無し。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
126件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
81件
学会発表(国際学会等)
107件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Koizumi H, Hashimoto M, Fujiwara M, et al.
Different in vivo effects of HIV-1 immunodominant epitope-specific cytotoxic T lymphocytes on selection of escape mutant viruses.
J Virol. , 84 (11) , 5508-5519  (2010)
原著論文2
Kawashima Y, Kuse N, Gatanaga H, et al.
Long-term control of HIV-1 in hemophiliacs carrying slow-progressing allele HLA-B*5101.
J Virol. , 84 (14) , 7151-7160  (2010)
原著論文3
Yoshimura K, Harada S, Shibata J, et al.
Enhanced exposure of human immunodeficiency virus type 1 primary isolate neutralization epitopes through binding of CD4 mimetic compounds.
J Virol. , 84 (15) , 7558-7568  (2010)
原著論文4
Gatanaga H, Ode H, Hachiya A, et al.
Combination of V106I and V179D polymorphic mutations in human immunodeficiency virus type 1 reverse transcriptase confers resistance to efavirenz and nevirapine but not etravirine.
Antimicrob Agents Chemother , 54 (4) , 1596-1602  (2010)
原著論文5
Gatanaga H, Ode H, Hachiya A, et al.
Impact of human leukocyte antigen-B*51-restricted cytotoxic T-lymphocyte pressure on mutation patterns of nonnucleoside reverse transcriptase inhibitor resistance.
AIDS , 24 (5) , 15-22  (2010)
原著論文6
Koh Y, Amano M, Towata T, et al.
In vitro selection of highly darunavir-resistant and replication-competent HIV-1 variants by using a mixture of clinical HIV-1 isolates resistant to multiple conventional protease inhibitors.
J Virol. , 84 (22) , 11961-11969  (2010)
原著論文7
Honda K, Zheng N, Murakoshi H, et al.
Selection of escape mutant by HLA-C-restricted HIV-1 Pol-specific cytotoxic T lymphocytes carrying strong ability to suppress HIV-1 replication.
Eur J Immunol. , 41 (1) , 97-106  (2011)
原著論文8
Ide K, Aoki M, Amano M, et al.
Novel HIV-1 protease inhibitors (PIs) containing a bicyclic P2 functional moiety, tetrahydropyrano-tetrahydrofuran, that are potent against multi-PI-resistant HIV-1 variants.
Antimicrob Agents Chemother , 55 (4) , 1717-1727  (2011)
原著論文9
Koh Y, Aoki M, Danish ML, et al.
Loss of protease dimerization inhibition activity of darunavir is associated with the acquisition of resistance to darunavir by HIV-1.
J Virol. , 85 (19) , 10079-10089  (2011)
原著論文10
Ghosh AK, Chapsal BD, Baldridge A, et al.
Design and synthesis of potent HIV-1 protease inhibitors incorporating hexahydrofuropyranol-derived high affinity P(2) ligands: structure-activity studies and biological evaluation.
J Med Chem. , 54 (2) , 622-634  (2011)
原著論文11
Ghosh AK, Martyr CD, Steffey M, et al.
Design of substituted bis-Tetrahydrofuran (bis-THF)-derived Potent HIV-1 Protease Inhibitors, Protein-ligand X-ray Structure, and Convenient Syntheses of bis-THF and Substituted bis-THF Ligands.
ACS Med Chem Lett. , 2 (4) , 298-302  (2011)
原著論文12
Akahoshi T, Chikata T, Tamura Y, et al.
Selection and accumulation of an HIV-1 escape mutant by three types of HIV-1-specific cytotoxic T lymphocytes recognizing wild-type and/or escape mutant epitopes.
J Virol. , 86 (4) , 1971-1981  (2012)
原著論文13
Ladell K, Hashimoto M, Iglesias MC, et al.
A molecular basis for the control of preimmune escape variants by HIV-specific CD8+ T cells
Immunity , 38 , 425-436  (2013)
原著論文14
Yagita Y, Kuse N, Kuroki K, et al.
Distinct HIV-1 Escape Patterns Selected by CTLs with Identical Epitope Specificity
J Virol. , 87 , 2253-2263  (2013)
原著論文15
Gatanaga H, Murakoshi H, Hachiya A, et al.
Naturally selected rilpivirine-resistant HIV-1 variants by host cellular immunity
Clin Infect Dis. , 57 (7) , 1051-1055  (2013)
原著論文16
Okamoto M, Chono H, Kawano Y, et al.
Sustained inhibition of HIV-1 replication by conditional expression of the E. coli-derived endoribonuclease MazF in CD4+ T cells
Hum. Gene. Ther. Methods , 24 , 94-103  (2013)
原著論文17
Mizuhara T, Kato T, Hirai A, et al.
Structure-activity relationship study of phenylpyrazole derivatives as a novel class of anti-HIV agents.
Bioorg Med Chem Lett. , 23 (16) , 4557-4561  (2013)
原著論文18
Harada S, Yoshimura K, Yamaguchi A, et al.
Impact of antiretroviral pressure on selection of primary HIV-1 envelope sequences in vitro.
J. Gen. Virol. , 94 , 933-943  (2013)
原著論文19
Furukawa A, Kamishikiryo J, Mori D, et al.
Structural analysis for glycolipid recognition by the C-type lectins Mincle and MCL.
Proc Natl Acad Sci U S A. , 110 , 17438-17443  (2013)
原著論文20
Maeda K, Desai D, Aoki M, et al.
Delayed emergence of HIV-1 variants resistant to 4′-ethynyl-2-fluoro -2-deoxyadeno -sine: comparative sequential passage study with lamivudine, tenofovir, emtricitabine and BMS-986001
Antivir Ther , 19 , 179-189  (2014)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201124010Z