安全な生殖補助医療を行うための精液よりのHIVウイルス分離法の確立

文献情報

文献番号
201124003A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な生殖補助医療を行うための精液よりのHIVウイルス分離法の確立
課題番号
H21-エイズ・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田中 憲一(新潟大学 教育研究院医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 花房 秀次(荻窪病院 血液内科)
  • 加藤 真吾 (慶応義塾大学 医学部)
  • 兼子 智(東京歯科大学市川総合病院)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学 医学部)
  • 八幡 哲郎(新潟大学 教育研究院医歯学系)
  • 高桑 好一(新潟大学医歯学総合病院)
  • 宇都宮 龍馬(旭化成クラレメディカル株式会社)
  • 星合 昊(近畿大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年HIV感染は漸増しており、HIV陽性男性陰性女性夫婦で子供を持ちたいと願う夫婦が増加している。これらの夫婦により安全な生殖補助技術を提供することを目的とし、基礎的,臨床的研究を継続している。
研究方法
1)ヒト精子凍結保存の最適化に関する研究:新規可変型2重腔チューブを用いる液体チッソ直接投入法による凍結とバーコードシステムによる取り違え防止に関する研究を行った。2) HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の応用拡大のためのシステム構築に関する研究として、HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する体外受精-胚移植を継続し、安全性、有効性の確認を行った。また、本治療に関する講習会を実施した。3)中空糸膜を利用した効率的な精液中HIV除去方法の開発のため、中空糸膜使用小型カラムを作成し、臨床応用のための基礎的研究を行った。4) HIV洗浄精子及び受精卵培養液にHIV-1 RNA/DNAが存在しないことの確認に関する研究を行った。
結果と考察
1) ヒト精子凍結保存の最適化に関する研究:体外受精-胚移植実施の際の取り違え防止を目的として、バーコードシステムおよび各種の新規容器利用の研究を実施、より安全に体外受精-胚移植が実施できることを確認した。2) HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の応用拡大のためのシステム構築に関する研究:平成21年4月から平成23年12月までの間に新潟大学および慶應病院で体外受精-胚移植をのべ189件実施した。母児ともに二次感染は認めず、有効な治療であることを再確認した。3)中空糸膜ウイルス除去カラムによる、より効率的な精液中HIV除去方法の開発: B60カラムによる3回の洗浄まではHIV-RNAが認められていたが、6回以上の洗浄ではHIV-RNAは認められなかった。HIV DNAに関しても6回以上の洗浄では認められなかった。4) HIV洗浄精子及び受精卵培養液にHIV-1 RNA/DNAが存在しないことの確認に関する研究:洗浄精子の一部、受精卵培養液あるいは母子の血液血漿などの検体を対象にHIV-1 RNA/DNAを検査を実施し、結果はすべて陰性であった。
結論
安全な生殖補助医療を行うため精液からのHIV分離法を確立し、HIV陽性患者夫婦の生殖補助医療を実施することは、社会的、医療経済的に多大な効果をもたらすものであり、今後も推進していく必要があるものと判断される。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124003B
報告書区分
総合
研究課題名
安全な生殖補助医療を行うための精液よりのHIVウイルス分離法の確立
課題番号
H21-エイズ・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田中 憲一(新潟大学 教育研究院医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 花房 秀次(荻窪病院 血液内科)
  • 加藤 真吾 (慶応義塾大学 医学部)
  • 兼子 智(東京歯科大学市川総合病院)
  • 久慈 直昭(慶応義塾大学 医学部)
  • 八幡 哲郎(新潟大学 教育研究院医歯学系)
  • 高桑 好一(新潟大学医歯学総合病院)
  • 宇都宮 龍馬(旭化成クラレメディカル株式会社)
  • 星合 昊(近畿大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年HIV感染は漸増しており、HIV陽性男性陰性女性夫婦で子供を持ちたいと願う夫婦が増加している。これらの夫婦により安全な生殖補助技術を提供することを目的とし、基礎的,臨床的研究を継続して実施した.
研究方法
1) HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の応用拡大のためのシステム構築に関する研究として、HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する体外受精-胚移植を継続し、安全性、有効性の確認を行った。また、本治療に関する講習会を実施した。1) HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する体外受精‐胚移植による妊娠により出生した出生児の発育に関する検討を行った。3)中空糸膜を利用した効率的な精液中HIV除去方法の開発のため、中空糸膜使用小型カラムを作成し、臨床応用のための基礎的研究を行った。4) ヒト精子凍結保存の最適化に関する研究として緩速法および超急速凍結法の確立を試みた。
結果と考察
1) HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の応用拡大のためのシステム構築に関する研究:平成21年4月から平成23年12月までの間に新潟大学および慶應病院における成績は以下のとおりである。新鮮胚移植数71件、妊娠数20件、このうち分娩数は17例であり、生児獲得数は17例であった。凍結胚移植数は118例であり、妊娠数38例、このうち分娩数は24例であり、生児獲得数は24例であった。また、5例が妊娠継続中であった。母児ともに二次感染は認められなかった。2) HIV陽性男性、HIV陰性女性夫婦に対する体外受精‐胚移植による妊娠により出生した出生児の発育に関する検討:平成13年から平成22年12月までに生まれた児は95名でありアンケート調査による児の発育については概ね問題ないものと判断された。3)中空糸膜ウイルス除去カラムによる、より効率的な精液中HIV除去方法の開発: B60カラムによる3回の洗浄まではHIV-RNAが認められていたが、6回以上の洗浄ではHIV-RNAは認められなかった。HIV DNAに関しても6回以上の洗浄では認められなかった。4) ヒト精子凍結保存の最適化に関する研究として緩速法および超急速凍結法の確立を試みたが、総合的には緩速凍結法の有用性が高いことが示された。
結論
安全な生殖補助医療を行うため精液からのHIV分離法を確立し、HIV陽性患者夫婦の生殖補助医療を実施することは、社会的、医療経済的に多大な効果をもたらすものであり、今後も推進していく必要があるものと判断される。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
近年HIV感染は漸増しており、HIV陽性男性、陰性女性夫婦で子供を持ちたいと願う夫婦が増加している。夫精液からの効率的なHIVウイルス除去方法および、1copy/mlを検出できる超高感度PCR法という国際的にも最先端の医学的技術を駆使して、HIV陽性男性陰性女性夫婦により安全な妊娠の機会を提供している。欧米でも同様の取り組みは行われているが、本研究におけるような高度な技術を使用している方法はなく、本研究の成果は国際的にも重要なものである。
臨床的観点からの成果
HIV陽性男性、陰性女性夫婦で子供を持ちたいと願う夫婦が、安全に、健常児に恵まれる機会を提供しており、血液製剤によりHIVに感染した患者を初め、多くの患者が本研究の一環として実施している生殖補助医療の恩恵に浴している。精液からのHIV除去に関する新たな方法の開発の取り組み、保存精液の安全な管理などの研究もおこなっており、研究成果の実地臨床へのフィードバックが大きい研究となっている。
ガイドライン等の開発
HIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の応用拡大のため、臨床応用に関するガイドラインの作成を考慮している。
その他行政的観点からの成果
従来、HIV陽性男性、陰性女性夫婦が挙児を希望して、医療機関、行政機関(保健所など)に相談に来ても、二次感染の危険性から避妊が指導されるだけであった。このような状況に対し、より安全に妊娠しうる生殖補助医療を厚生労働科学研究の一環として実施しているということを説明することができ、なおかつ実際により安全に健常児を出産している、という状況は、行政に対する社会の信頼性を得るという点で貢献しているものと判断される。
その他のインパクト
本研究班の研究内容特にHIV陽性男性、陰性女性夫婦に対する生殖補助医療の実際について、ホームページで公開しているが、治療に対する問い合わせなどある状況である。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
エイズブロック拠点病院を対象とした講習会の実施、ホームページの公開

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kashima K, Takakuwa K, Suzuki M, et al.
Studies on assisted reproduction techniques (ART) for HIV-1 discordant couples using washed sperm and the nested PCR method -Comparison of the pregnancy rate in HIV-1 discordant couples and control couples-
Japanese Journal of Infectious Disease , 62 , 173-176  (2009)
原著論文2
Kinai E, Hanabusa H
Progressive renal tubular dysfunction associated with long-term use of tenofovir DF
AIDS Res Hum Retroviruses , 25 , 387-394  (2009)
原著論文3
Shirahata A, Fukutake K, Hanabusa H, et al.
Clinical pharmacological study of a plasma-derived factor VIIa and factor X mixture (MC710) in haemophilia patients with inhibitors – Phase I trial
Hemophilia , 18 , 94-101  (2012)
原著論文4
加藤真吾
HIV検査およびHIV関連検査
化学療法の領域 , 27 , 71-77  (2011)
原著論文5
加藤真吾,今井光信
HIV検査の新たな展開
日本エイズ学会誌 , 13 , 132-136  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2015-07-03

収支報告書

文献番号
201124003Z