血友病とその治療に伴う合併症の克服に関する研究

文献情報

文献番号
201124001A
報告書区分
総括
研究課題名
血友病とその治療に伴う合併症の克服に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 洋一(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 三室 淳(自治医科大学 医学部)
  • 窓岩 清治(自治医科大学 医学部)
  • 大森 司(自治医科大学 医学部)
  • 小澤 敬也(自治医科大学 医学部)
  • 水上 浩明(自治医科大学 医学部)
  • 嶋 緑倫(奈良県立医科大学 小児科)
  • 菱川 修司(自治医科大学 医学部)
  • 長谷川 護(ディナベック株式会社)
  • 瀧 正志(聖マリアンナ医科大学)
  • 稲葉 浩(東京医科大学 臨床検査医学講座)
  • 竹谷 英之(東京大学医科学研究所)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人 はばたき福祉事業団)
  • 大橋 一夫(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
88,135,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病遺伝子治療基礎検討、インヒビター(Inh)対策、患者QOL改善調査、薬害HIV患者・家族の問題解決を図る。
研究方法
本年度は、作製したGMPレベルベクター、AAV8VFIXの品質検討、そして、抗AAV8中和抗体陽性個体への血液回避遺伝子導入技術の改善を試みた。SIVベクターでFVIII遺伝子を導入した骨髄由来自己MSC(MSCFVIII)で、血友病Aマウス膝関節内注入による関節症治療と、ナノシートを作製して臓器貼り付け遺伝子治療可能性についても検討した。血漿由来と遺伝子組み換え製剤の、Inh発生頻度差を後方視的に検討した。前方視的に、血友病因子とサイトカイン遺伝子解析を開始し、患者データベース構築も進めた。Inh検査法改善を検討した。寛容誘導の分子生物学的解析も進めた。アンケート調査では、出血頻度や社会的問題等を解析した。また、血友病薬害HIV感染被害者家族から、面接調査対象を拡大し、当事者参加型アクションリサーチを進め、ホームページ開設などを計画した。動物実験、臨床、疫学研究は、厚労省・文科省倫理指針と各施設規約に従い施行した。
結果と考察
AAV8VFIXはSDS-PAGEや電子顕微鏡的解析などでは、高純度が確認された。また、マウスではnon-GMPレベルベクターと同等の発現活性を示した。震災節電で実施が遅れたが、サルでも治療レベルヒトFIX発現が2ヶ月維持されている。抗AAV中和抗体測定系は最適化され、感度が高まった。血友病患者では陽性率は50%近傍であった。陽性サルに治療レベルFIXの長期発現持続技術をほぼ確立した。ヒト臨床研究開始可能と考える。マウス関節内MSCFVIIIは分化して長期にとどまり、関節症状を軽減した。血漿由来と遺伝子組み換え製剤間にInh発生率に差は無かった。測定系の問題は東京変法でかなり改善された。調査研究は、出血頻度と重症度分類に一石を投じた。薬害HIV感染被害者母親に多くの対策課題が明らかになった。血友病情報提供ホームページ立ち上げやファクトシートを作成し、効果的解決に向けた具体的対策が稼働し始めている。
結論
サルでの血友病B遺伝子治療技術はほぼ確立し、臨床研究の準備は整った。Inh対策も調査解析、基礎検討ともに順調に進みつつある。QOL調査解析でも独創的解析が進められた。直接面談による問題把握とその解析は極めて独創的で有用である。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124001B
報告書区分
総合
研究課題名
血友病とその治療に伴う合併症の克服に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 洋一(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 三室 淳(自治医科大学 医学部 )
  • 窓岩 清治(自治医科大学 医学部 )
  • 大森 司(自治医科大学 医学部 )
  • 小澤 敬也(自治医科大学 医学部 )
  • 水上 浩明(自治医科大学 医学部 )
  • 嶋 緑倫(奈良県立医科大学 小児科)
  • 高橋 将文(自治医科大学 医学部 )
  • 菱川 修司(自治医科大学 医学部 )
  • 長谷川 護(ディナベック株式会社)
  • 瀧 正志(聖マリアンナ医科大学)
  • 稲葉 浩(東京医科大学 臨床検査医学講座)
  • 竹谷 英之(東京大学医科学研究所)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
  • 大橋 一夫(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病遺伝子治療、血友病インヒビター(Inh)対策、QOL向上を目指した調査研究。
研究方法
サルには血友病が存在しない。遺伝子導入による発現ヒト血友病因子を相同性の高いサル因子と識別測定しうる世界唯一の抗FIXモノクロナル抗体を利用し、AAV8ベクターによる血友病B遺伝子治療技術確立を目指した。遺伝子導入は、血中抗AAV8中和抗体に左右される。抗体測定系を改善し、陰性サルに、末梢血管より、陽性サルには特殊技術を確立し、ベクター(V)を投与した。発現と、全身臓器のAAV8ゲノム取り込みを検討した。GMPレベルAAV8FIXVを、中国VGT社で指導作製した。SIVVで血友病Aマウス自己間葉系幹細胞(MSC)にFVIII遺伝子を導入した。細胞ナノシートを作製し、臓器貼り付けによるFVIII産生と、関節内細胞注入の関節症治療効果を検討した。寛容誘導基礎研究とInh調査研究を展開した。また、Inh測定法標準化を検討した。前方視的検討と血友病患者データベース構築を開始した。発症要因検索は関連因子遺伝子解析を開始した。薬害HIV 感染血友病患者の社会的問題をインタビュー形式で調査し情報周知活動へと展開した。動物実験、臨床研究、疫学研究は文科省・厚労省の倫理指針、そして各施設の規約に従って施行した。
結果と考察
抗体陰性、陽性サルとも、治療レベルFIX発現が数年間持続している。Vゲノムの肝特異的取り込みと、生殖臓器移行(-)も確認できた。肝機能正常で、異常組織学的所見もなかった。抗体陽性例への導入成功は、再治療可能性を示唆する。純度の高いGMPレベルAAV8FIXV作製に成功した。血友病Aクローンブタ作製にも成功した。FVIII導入MSCによる関節症治療は好成績であった。 血友病マウスに寛容誘導する基礎研究は海外の賞も獲得した。Inh測定系は東京変法で改善された。製剤間Inh発症頻度差(-)が調査で明らかにされた。データベースは、血友病疫学調査研究の論理的基盤として期待される。アンケートにより血友病重症度分類再検討必要性が示唆された。インタビュー形式による解析は、多くの問題を浮き彫りにした。知識周知を図る対策も順調に進んでいる。
結論
血友病B遺伝子治療臨床研究開始準備が整った。患者データベース構築もスタートした。薬害HIV感染血友病患者インタビュー研究は極めて有用であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
抗AAV8中和抗体有無にかかわらず、AAV8ベクターでサルに第IX因子遺伝子導入発現技術の安全性と効率を向上させた。ベクターゲノムの肝特異的取り込み(+)、生殖器移行(-)、さらに組織学的に慢性肝炎や癌等の異常(-)が確認された。第VIII因子遺伝子導入自己間葉系幹細胞を作製し,ナノシート作製・臓器貼り付けによる遺伝子治療と、関節内注入による関節障害治療可能性が示唆された。患者データベース構築とインヒビター発症要因解析のための関連遺伝子解析がスタートした。
臨床的観点からの成果
血友病B患者に対するAAV8ベクターを用いた遺伝子治療技術がほぼ確立した。ヒト臨床応用可能なGMPレベルのAAV8ベクター作製に成功した。調査解析により、血友病製剤によるインヒビター発症頻度に差のないことが明らかになった。インヒビター測定系が改善された。アンケート解析により血友病重症度分類の再検討必要性が示唆された。薬害HIV感染血友病患者のインタビューによる調査解析により,遺伝問題をはじめ、QOL向上の為の情報が得られ、知識周知を図る対策もスタートした。
ガイドライン等の開発
International recommendations on the diagnosis and treatment of patients with acquired hemophilia A. Haematologica.2009 94(4):566-75;
インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン;インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン;後天性血友病A診療ガイドライン、血栓止血学会 2009.4及び2011.10
その他行政的観点からの成果
遺伝子治療は成功すれば高価な因子製剤使用量を減らすことで、経済効果を生む。インヒビター産生は、製剤がいかに改良されても残りうる問題である。免疫寛容誘導法のメカニズムを明らかにし、改良できれば、経済効果も大きい。
その他のインパクト
成熟血友病インヒビターマウスで第VIII因子遺伝子を導入したiPS細胞を作り、これを利用して寛容誘導を試みるプロジェクトで、19万5千ドルの研究費が副賞としてつく国際的Hemophilia award を本年度再度獲得した。効率よい寛容誘導法が確立出来れば、経済効果も大きい。血友病ホームページ(http://habatakifukushi.jp/square/hemophilia/)を開設した。

発表件数

原著論文(和文)
24件
原著論文(英文等)
88件
その他論文(和文)
41件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
250件
学会発表(国際学会等)
117件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Madoiwa S, Mimuro J, Sakata Y, et al.
Induction of factor VIII-specific unresponsiveness by intrathymic factor VIII injection in murine hemophilia A.
J Thromb Haemost , 7 (5) , 811-824  (2009)
原著論文2
Ishiwata A, Mimuro J, Sakata Y, et al.
Liver-restricted expression of the canine factor VIII gene facilitates prevention of inhibitor formation in factor VIII-deficient mice.
J Gene Med , 11 (11) , 1020-1029  (2009)
原著論文3
Ito T, Mizukami H, Ozawa K, et al.
A convenient enzyme-linked immunosorbent assay for rapid screening of anti-adeno-associated virus neutralizing antibodies.
Ann Clin Biochem , 46 , 508-510  (2009)
原著論文4
清田育男、稲葉 浩、福武勝幸 他
重症型血友病Bの第IX因子遺伝子内に検出された2つの遺伝子変異の検討
臨床病理 , 57 (5) , 417-424  (2009)
原著論文5
Ohmori T, Kashiwakura T, Sakata Y, et al.
Vinculin activates inside-out signaling of integrin alphaIIbβ3 in Chinese hamster ovary cells.
Biochem Biophys Res Commun , 400 (3) , 323-328  (2010)
原著論文6
Ohmori T, Kashiwakura Y, Sakata Y, et al.
Vinculin is indispensable for repopulation by hematopoietic stem cells, independent of integrin function.
J Biol Chem , 285 (41) , 31763-31773  (2010)
原著論文7
Ishiwata A, Mimuro J, Sakata Y, et al.
Mutant Macaque Factor IX T262A: A Tool for Hemophilia B Gene Therapy Studies in Macaques.
Thromb Res , 125 (6) , 533-537  (2010)
原著論文8
Mimuro J, Mizuta K, Sakata Y, et al.
Impact of acute cellular rejection on coagulation and fibrinolysis biomarkers within the immediate post-operative period in pediatric liver transplantation.
Pediatr Transplant , 14 (3) , 369-376  (2010)
原著論文9
Muramatsu S,Mizukami H, Ozawa K, et al.
A phase I study of aromatic L-amino acid decarboxylase gene therapy for Parkinson's disease.
Mol Ther , 18 (9) , 1731-1735  (2010)
原著論文10
Madoiwa S,Mimuro J, Sakata Y, et al.
Immune response against serial infusion offactor VIII antigen through an implantable venous-access device system in haemophilia A mice.
Haemophilia , 18 (3) , 323-330  (2012)
原著論文11
Dokai M, Madoiwa S, Sakata Y, et al.
Local regulation of neutrophil elastase activity by endogenous α1-antitrypsin in lipopolysaccharide primed hematological cells.
Thromb Res , 128 (3) , 283-292  (2011)
原著論文12
Takahashi K,Mizukami H, Ozawa K, et al.
Development of a mouse model for lymph node metastasis with endometrial cancer.
Cancer Sci , 102 (12) , 2272-2277  (2011)
原著論文13
Kikuchi Y, Mizukami H, Ozawa K, et al.
Reciprocal upregulation of Notch signaling molecules in hematopoietic progenitor and mesenchymal stromal cells.
J Stem Cell Regener Med , 17 (2) , 61-68  (2011)
原著論文14
Shibata M, Nakagawa T,Shima M, et al.
Hemostatic Treatment Using Factor VIII Concentrates for Neutralizing High-Responding Inhibitors Prior to CVAD Insertion for Immune-Tolerance Induction Therapy.
Clin Appl Thromb Hemost , 18 (1) , 66-71  (2012)
原著論文15
Tatsumi K, Ohashi K, Shima M, et al.
Regulation of coagulation factors during liver regeneration in mice: Mechanism of factor VIII elevation in plasma.
Thrombosis Research , 128 (1) , 54-61  (2011)
原著論文16
Shirahata A, Shima M,Taki M, et al. et al.
An analysis of factors affecting the incidence of inhibitor formation in patients with congenital haemophilia in Japan.
Haemophilia , 17 (5) , 771-776  (2011)
原著論文17
Inaba H, Shinozawa K, Fukutake K, et al.
Factor VIII haplotypes of Japanese population show similarity to those of Caucasian populations.
Haemophilia , 18 , 43-44  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201124001Z