沈降インフルエンザワクチンH5N1を用いたパンデミック対応(異種株連続接種によるパンデミック想定株を含む幅広い交叉免疫性の獲得、1回接種による基礎免疫誘導効果)の研究

文献情報

文献番号
201123060A
報告書区分
総括
研究課題名
沈降インフルエンザワクチンH5N1を用いたパンデミック対応(異種株連続接種によるパンデミック想定株を含む幅広い交叉免疫性の獲得、1回接種による基礎免疫誘導効果)の研究
課題番号
H23-新興・指定-025
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 澄信(国立病院機構本部総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
99,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 WHOは新型インフルエンザウイルス、特に人での病原性が高いH5N1によるパンデミックを警戒している。本邦ではH5N1によるパンデミックに備え、沈降インフルエンザワクチンH5N1(沈降H5N1ワクチン)を備蓄している。今までの研究によると、初回接種では接種した株に対する抗体しか上昇しないが、異なる株で追加接種すると抗体価の上昇と幅広い交叉免役が認められている。今回、初回接種により幅広い交叉免役を誘導させること、および接種する抗原量をセーブすることを目的に研究を行った。
研究方法
 初回接種により幅広い交叉免役を誘導させるために、初回接種1回目をベトナム株で、2回目をインドネシア株で接種し、免疫原性(異種株連続接種試験)を検討した。接種する抗原量をセーブする研究として、初回を1回接種にし、異なる株で追加接種したときの免疫原性(初期接種単回投与試験)を検討した。また、沈降H5N1ワクチンの安全性について検討した(安全性確認試験)。
結果と考察
 異種株連続接種試験(100人)では、ベトナム株(クレード1)に対する抗体陽性率(中和抗体40倍以上の割合)は3%から70%と高率に上昇したが、インドネシア株(クレード2.1)、青海株(クレード2.2)、安徽株(クレード2.3)に対する抗体陽性率は、いずれも低率であった。今回の結果から、1回目に接種した株に対する抗体しか誘導できず、異なる株で初回接種しても交叉免役を誘導することができないことが示された。
 初期接種単回投与試験では、初年度は初期接種200人が終了し、次年度に初期接種6ヶ月後の追加接種を行い、初回接種前、追加接種前および追加接種21日後の抗体を測定し、幅広い交叉免疫が獲得できるかについて検討する。安全性確認試験では、現在までのところ1回目を931人(ベトナム株を349人、インドネシア株を582人)に、2回目を924人に接種したが、現時点では因果関係が否定できない重篤な有害事象は発現しなかった。
結論
 初回接種の2回を異なる株で接種しても、幅広い交叉免役は誘導できなかった。しかし、異なる株で接種しても1回目に接種した株に対する抗体は効果的に誘導でき、パンデミック時には、パンデミックをおこした株に近い株で製造したワクチンを1回目に接種するのが適切な対策と判断された。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123060Z