プロウイルスゲノム破壊による革新的HTLV-1関連疾患発症遅延法の開発

文献情報

文献番号
201123056A
報告書区分
総括
研究課題名
プロウイルスゲノム破壊による革新的HTLV-1関連疾患発症遅延法の開発
課題番号
H23-新興・一般-028
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
駒野 淳(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 誠治(熊本大学 エイズ学研究センター)
  • 星野 忠次(千葉大学 大学院薬学研究院)
  • 竹腰 正隆(東海大学 医学部)
  • 武田 哲(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1感染症対策には感染者におけるHTLV-1関連疾患の発症遅延法の開発が必要である。治療より発症防止の方が感染者の身体的負担は小さいうえ、社会経済的観点からもメリットがある。ウイルスゲノムを不可逆的に不活化する方法があれば確実に発症遅延が達成できると期待できる。我々はZinc Finger Nuclease(ZFN)技術を応用してウイルスを不可逆的に不活化する方法を開発する。
研究方法
複数のウイルス株で保存されているウイルスLTR配列をサンガモproprietaryアルゴリズムを利用して決定しこれを標的とするZFN遺伝子を合成する。MEL1活性を指標とした酵母細胞における酵素機能の評価を行う。並行して、得られた治療分子の生物学的効果をヒト細胞やin vivoで評価する実験系の構築、治療分子を送達するためのベクター被覆に供するヒトCD4反応性scFvの構築、治療効果判定に供する小動物実験モデルの構築、抗原と抗体の結合親和性算出プログラムの改良を行う。
結果と考察
治療分子開発:酵母におけるMEL1アッセイにて16組のZFNを評価し、優れた生物活性を持つ治療分子候補を2組同定した。これらがヒト細胞において良好に発現する事、HTLV-1 LTRのプロモーター機能を低下させる活性を持つ事を明らかにした。

動物モデル開発に:免疫不全マウスにおける腫瘍細胞のxenograftingを行い、赤色蛍光を指標とした生体内腫瘍のリアルタイムモニターを実現した。

治療分子送達法:HO538-213のscFv化に成功した。大腸菌及びヒト細胞におけるCD4抗原発現精製系を構築した。In silico maturation法のプログラム改良を行い、水分子の分布を最適化するためのルーチンを組み込むことで計算の評価精度の向上を達成した。

三年計画の一年目として当初の予定通りの研究成果を得る事が出来た。
結論
HTLV-1感染症の対策を考える上で、HTLV-1感染者を救済することが出来る根治療法はなくてはならない医療サービスになると思われる。しかし、現在これを達成できる技術は存在しない。我々の研究は根治療法の基盤技術を提供することができる極めて重要なものであり、本研究の成功は感染者に対し希望を与えると思われる。従って厚生科学研究として本基礎研究の持つ意味は非常に大きいと思われる。今年度得られた研究結果を次年度以降の研究に反映させて、ウイルスゲノムの不可逆的改変やプロウイルスを欠落させる技術を完成させ世界に情報発信していきたい。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123056Z