HTLV-I感染拡大を阻止するワクチンならびに抗体医薬等の開発基盤の確立

文献情報

文献番号
201123055A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-I感染拡大を阻止するワクチンならびに抗体医薬等の開発基盤の確立
課題番号
H23-新興・一般-027
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田中 勇悦(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 齊藤 峰輝(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科 )
  • 伊藤 守(公益財団法人•実験動物中央研究所)
  • 上里 博(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科 )
  • 松崎 吾朗(琉球大学 熱帯生物圏研究センター)
  • 新川 武(琉球大学 熱帯生物圏研究センター)
  • 樋口 雅也(新潟大学 医歯学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
23,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、我が国におけるHTLV-I感染拡大を阻止するための政策に寄与するため、“ワクチンや抗体医薬等によるHTLV-I感染防御法の開発基盤”を確立することを目的とする。
研究方法
試験管内細胞および実験動物を用いたHTLV-I感染実験、HTLV-I分離、ワクチン作製免疫実験、動物改良実験等を各研究機関のバイオハザード委員会、動物実験委員会、遺伝子組換え生物等使用実験安全委員会、臨床試験倫理委員会等の承認を得て行った。ヒトの細胞材料入手は提供者の同意を得て行い、その人の利益ならびに人権保護につとめるようサンプルとデータの取り扱いに十分配慮した。
結果と考察
本研究において、HTLV-I感染防御実験系を新たに確立し、中和単クロン抗体やHAM患者由来のIgGがHTLV-I感染細胞の不死化を抑制することを証明した。さらに、中和単クロン抗体がヒト化したマウスにおいてもHTLV-I感染を防御することを証明した。ヒト化マウス系は今後の応用のため最適化を図っている。また、中和抗体が、HTLV-I感染患者体内ですでにHTLV-Iに感染したT細胞の抗原発現とウイルス産生および不死化を監視することを新たに発見した。一方、ラットのHTLV-I経口・経腸・血液感染系を確立した。沖縄県における種々のHTLV-I感染細胞の樹立を図り、ウイルス分離をしている。ワクチンの作製において、三部構成免疫賦活複合体(TIPS)を設計し、そのタンパク質発現と生化学的解析ならびに感染防御機能の解析を進行させている。また、細胞内HTLV-I感染抵抗性因子USP10)を同定した。HTLV-I中和抗体が体内での新規HTLV-I感染と感染細胞の不死化を監視する重要な生体防御エフェクターであることが強く示唆されたので、来年度は、中和抗体のADCC活性やウイルス監視機能についてin vitro, in vivoの系で詳細に検討することが必要と考えている。
結論
HTLV-Iの中和エピトープを認識する単クロン抗体とHTLV-I感染者由来のIgGは、HTLV-Iの細胞間伝染を完全に阻害すると同時に、HTLV-I感染者体内におけるHTLV-I感染細胞の不死化をも監視することが示された。 抗体がHTLV-I感染および発症予防に対してCTLと同等に生体防御的役割を果たしていると考えられる。したがって、HTLV-I envelopeに対する中和抗体を効率よく誘導するワクチンが、HTLV-Iの新規感染とHTLV-Iの体内での増殖の制御に寄与するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123055Z