地域流行型真菌症の疫学調査、診断治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201123052A
報告書区分
総括
研究課題名
地域流行型真菌症の疫学調査、診断治療法の開発に関する研究
課題番号
H23-新興・一般-018
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 和俊(東邦大学医学部 病院病理学講座)
  • 杉田 隆(明治薬科大学 微生物学)
  • 泉川 公一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 高倉 俊二(京都大学大学院医学研究科)
  • 金子 幸弘(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,705,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域流行型真菌症は、特定地域に生息する真菌による感染症であり、わが国では、渡航者の感染例が多い。近年では、渡航機会の増加を背景に、地域流行型真菌症の総数は増加傾向にある。また、明らかな渡航歴のない感染例も報告されるようになり、特に、高病原性のクリプトコックス症の国内発生例が報告され、注目されつつある。本研究では、わが国で問題となり得る地域流行型真菌症に対応するため、クリプトコックス症をはじめとする真菌症の疫学調査および診断・治療等に関する研究を開始した。
研究方法
研究代表者が、研究総括と分子疫学等に関する研究を行い、分担者は、それぞれ、株の病原性解析、真菌の遺伝情報の解析と系統樹作成、生体側の因子に関する研究/診断応用研究、院内易感染性患者に発症する深在性真菌症の臨床疫学的検討、菌株収集と薬剤感受性研究・免疫原性の評価に関する研究を分担して行った。
結果と考察
クリプトコックス症の疫学調査では、本症の原因菌の多くは、従来型のCryptococcus neoformansであることが判明した。また、今回の検討では、Cryptococcus gattiiによる感染例を一例認めたが、遺伝子型は高病原性の北米型とは異なっていた。わが国で分離された高病原性のC. gattii株について、マウスを用いた病原性解析を行い、病理や生存率に顕著な相違が認められた。C. gattiiとTrichosporonとの比較遺伝子学的解析では、その類似性が見いだされ、診断等への応用が期待される結果となった。生体側因子に関する検討では、疾患感受性遺伝子の検出系を構築した。酵母様真菌による感染症に関する疫学調査では、非カンジダ真菌血症の予測・予後に関する因子として細胞性免疫抑制の重要性、カンジダ眼内炎の発症に関する菌種(Candida albicans)と血中β-Dグルカンとの関わりが明らかとなった。また、クリプトコックス症において低い免疫誘導能が高病原性にに寄与している可能性が示唆された。
結論
Cryptococcus gattii感染症のわが国での実態の一部が明らかとなった。また、基礎的解析においても有用情報の取得または検出系の構築など進展が見られた。加えて、臨床的なカンジダの予後因子の一部が明らかとなり、わが国の地域流行型真菌症の対策への活用が期待される結果となった。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123052Z