網羅的ロタウイルス分子疫学基盤構築とワクチン評価

文献情報

文献番号
201123039A
報告書区分
総括
研究課題名
網羅的ロタウイルス分子疫学基盤構築とワクチン評価
課題番号
H23-新興・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
片山 和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 藤井 克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • ハンスマン グラント(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 村上 耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 下池 貴志(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 神谷 元(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 中込 治(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 中込 とよ子(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 小林 宣道(札幌医科大学 医学部)
  • 谷口 孝喜(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 辰巳 正純(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
35,529,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロタウイルス(RV)は、乳幼児の重症胃腸炎の最大の原因である。我が国の総患者数は年間80万人、さらに15人に一人(78000人)の入院があると推定され、予後の悪いRV脳症や死亡例が存在するにも関わらず、国家レベルのサーベイランスシステムが存在しない。平成23年度11月より任意接種によって重篤化阻止効果のあるRVワクチンが導入された。本研究班では、ウイルスの病原性、防御免疫のメディエータなどの科学的なデータが乏しいRVについて、RV入院患者症例から分離されるRVの全長ゲノム塩基配列の解析と蓄積、症例の解析を行い、RV分子疫学を実施する。また、ワクチンの影響を評価するために研究基盤の整備を行う。
研究方法
研究班会議において調査の概要を決定し、疫学調査に協力が得られる小児科病院に研究への協力を要請した。研究方法は以下に示した。1)病院にて重篤な嘔吐下痢症で入院した症例から、便検体を採取する。2)症例に関する情報を添付し、便検体と共に国立感染症研究所(感染研)に発送する。3)受け入れた検体は、RVの同定検査を行う。4)RV陽性を呈した検体の遺伝子型の調査を行う。5)全長ゲノム塩基配列を決定し、データベースに蓄積する。得られた結果を利用し、ウイルス学的データ解析、研究を行う。
結果と考察
RVワクチンの費用対効果を予測するため、わが国の5歳未満のRV下痢症発生をモデルとするシミュレーションを行った。このモデルでは、RVワクチン導入の費用対効果は優れていると予測された。RVの伝播の様態を把握するため、アジアにおけるRV株の解析を実施した。中国・武漢市において検出された遺伝子型G1P[8]の3株、タイ国で以前に分離されたG9P[19]の2株について全ゲノム配列解析を行った。リバースジェネティクス系を利用して、細胞内でVP4が解裂する遺伝子改変したRVの作製を試みた。細胞内でVP4を解裂させると、ウイルス粒子形成が阻害されることが明らかになった。受け入れた便検体のRVスクリーニング、RV増殖培養、全ゲノム塩基配列決定のための基盤技術の構築を行った。11種類のRNAセグメントから、それぞれ全長の増幅産物を得ることができるPCR系の構築に成功した。
結論
本年度の活動によって構築した病院ベースのネットワークを用いて、RV感染症の入院事例を対象に網羅的な情報検出と、検体のサンプリング、蓄積を開始した。全塩基配列解析のため、全ゲノム増幅法の開発に成功した。来年度は、RV流行動向調査との連動、情報共有を視野に入れて活動を行う。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123039Z