コクサッキーA16型ウイルス特異的受容体の同定と機能解析

文献情報

文献番号
201123034A
報告書区分
総括
研究課題名
コクサッキーA16型ウイルス特異的受容体の同定と機能解析
課題番号
H22-新興・若手-020
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西村 順裕(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成22年度はコクサッキーA16型ウイルス(CVA16)受容体の分子生物学的性状の解析を行い、CVA16受容体は硫酸化を受ける分子であることを突き止めた。さらに、様々な白血球系細胞株を用いた感染実験を行い、CVA16の細胞指向性を解明した。本年度は、CVA16の受容体特異性を決定するキャプシドアミノ酸の同定し、その研究成果をエンテロウイルス71(EV71)研究にフィードバックすることを目的とした。
研究方法
CVA16のプロトタイプ株であるG-10株を用いた。また、受容体PSGL-1に結合するEV71-1095株、PSGL-1に結合しないEV71-02363株を用いた。CVA16をJurkat細胞に感染させ、増殖前後におけるCVA16ウイルスゲノムの違いをダイレクトシークエンス法で解析した。次いでCVA16キャプシドアミノ酸配列を比較した。EV71-1095株およびEV71-02363株を基に感染性クローンを作製し、キャプシドアミノ酸に変異を導入して、その役割を解析した。
結果と考察
Jurkat細胞で一度増殖したCVA16では、VP1-97とVP1-145に変異を起していることを明らかにした。つまり、これら二つのアミノ酸で、CVA16の受容体特異性が規定されていることが示唆された。EV71分離株間において、VP1-97は高く保存されていたが、近接するVP1-98に高い多様性があった。また、EV71のVP1-145も高い多様性があった。EV71感染性クローンを用いた解析により、VP1-98とVP1-145が EV71の受容体特異性を規定していることを明らかにした。
結論
本研究では、CVA16の受容体特異性はVP1のアミノ酸わずか二つで規定されていることを明らかにした。さらに、このCVA16における成果をEV71研究にフィードバックすることができた。つまり、CVA16の受容体特異性に関与するアミノ酸に相当するEV71キャプシドアミノ酸は、EV71の受容体特異性にも関与していることを突き止めた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201123034B
報告書区分
総合
研究課題名
コクサッキーA16型ウイルス特異的受容体の同定と機能解析
課題番号
H22-新興・若手-020
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西村 順裕(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究目的は、コクサッキーA16型ウイルス(CVA16)受容体の同定と機能解析である。CVA16は複数の受容体を使うことから、CVA16の受容体特異性を決定するウイルスキャプシドアミノ酸の同定も目指した。さらに、CVA16の研究成果をエンテロウイルス71(EV71)研究にフィードバックし、EV71の受容体特異性を解明することを目的とした。
研究方法
受容体PSGL-1陽性白血球細胞株としてJurkat、U937、MOLT-4細胞を用いた。またウイルスの力価測定にはヒト横紋筋種由来RD細胞を用いた。CVA16のプロトタイプ株であるG-10株、PSGL-1に結合するEV71-1095株、PSGL-1に結合しないEV71-02363株を用いた。キャプシド領域塩基配列の決定には、RT-PCRとダイレクトシークエンス法を用いた。EV71-1095およびEV71-02363を基にEV71感染性クローンを作製し、PCRによるsite-directed mutagenesisによりアミノ酸変異導入EV71を構築した。
結果と考察
Jurkat細胞におけるCVA16の増殖はsodium chlorate依存的に阻害された。つまり、Jurkat細胞におけるCVA16受容体は、硫酸化を受ける分子であることを明らかにした。また、RD細胞で増殖させたCVA16をJurkat細胞で一度増殖させると、VP1-97とVP1-145に変異が起こることを明らかにした。つまり、これら二つのアミノ酸で、CVA16の受容体特異性が規定されていることが示唆された。さらに、EV71感染性クローンを用いた実験により、VP1-98およびVP1-145がEV71受容体特異性を決定することを明らかにした。
結論
本研究により、CVA16の未知受容体が硫酸化を受ける分子であることを明らかにした。また、CVA16の受容体特異性はVP1のアミノ酸わずか二つで規定されていることを明らかにした。さらに、このCVA16における成果をEV71研究にフィードバックすることができた。つまり、CVA16の受容体特異性に関与するアミノ酸に相当するEV71キャプシドアミノ酸は、EV71の受容体特異性を決定することを解明した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123034C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Jurkat細胞におけるコクサッキーA16型ウイルス(CVA16)受容体は、硫酸化を受ける分子であることを突き止めた。また、様々な白血球系細胞株を用いた感染実験を行い、CVA16の細胞指向性を解明した。さらに、CVA16の受容体特異性を決定するキャプシドアミノ酸を同定した。それらのアミノ酸に相当するエンテロウイルス71(EV71)のキャプシドアミノ酸も、受容体特異性に関与することを明らかにした。
臨床的観点からの成果
CVA16とEV71はどちらも手足口病の病原ウイルスである。EV71感染でのみ稀に神経疾患を起すことがあるが、なぜEV71感染のみが重症化するのかはわかっていない。本研究によりCVA16とEV71には、共通の受容体と、それぞれに特異的な受容体があり、CVA16特異的受容体は硫酸化を受ける分子であることを明らかにした。本研究成果は、受容体特異性から病原性の違いを解明するための重要な知見であり、硫酸化阻害による手足口病治療薬の開発にも役立つと思われる。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
手足口病は毎年夏期に幼児で流行する。我が国では例年、CVA16あるいはEV71の一方が中心の流行が続いており、近年ではCVA16流行が多く発生している。本研究成果は手足口病新規治療薬の開発につながり、国民の健康維持のための行政施策に役立つものと考えられる。
その他のインパクト
本研究成果の一部は、微生物学のトップジャーナルであるPLoS Pathogensに掲載された。平成23年7月には、日本ウイルス学会 北海道支部会 夏季シンポジウムにおいて、特別講演「手足口病をおこすエンテロウイルスの感染機構」を行った。研究代表者は、CVA16およびEV71にかかる一連の研究成果について、平成23年度日本ウイルス学会杉浦奨励賞を受賞した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishimura, Y., Wakita, T., Shimizu, H.
Tyrosine sulfation of the amino terminus of PSGL-1 is critical for enterovirus 71 infection.
PLoS Pathogens , 6 (11)  (2010)
原著論文2
Miyamura, K., Nishimura, Y., Abo, M., Wakita, T., et al.
Adaptive mutations in the genomes of enterovirus 71 strains following infection of mouse cells expressing human P-selectin glycoprotein ligand-1.
Journal of General Virology , 92 (2) , 287-291  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-06-10
更新日
2016-06-27

収支報告書

文献番号
201123034Z