抗菌剤治療により寛解する難治性炎症性腸疾患患者の網羅的細菌叢解析と病因・増悪因子細菌群の解明

文献情報

文献番号
201123033A
報告書区分
総括
研究課題名
抗菌剤治療により寛解する難治性炎症性腸疾患患者の網羅的細菌叢解析と病因・増悪因子細菌群の解明
課題番号
H22-新興・若手-019
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難治性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎(UC)は、個有の遺伝的背景と腸内細菌叢が密接に関連して発症する事が示唆されている。三種の抗菌剤(アモキシシリン/テトラサイクリン/メトロニダゾール)を二週間投薬するだけで、その疾患が1年以上緩解する治療例が報告されている。しかしながら、その患者腸管内の膨大な細菌叢の中で、どの細菌が最もその疾患と相関するのかは不明である。本研究は、UC発症の環境要因となる細菌叢を抗菌剤治療前後で網羅的且つ定量的に解析を行い、本疾患と密接に関連する細菌の探索を行い、本疾患の発症機序を環境要因の側から理解することを目的とする。
研究方法
 平成22年度に腸内細菌叢の網羅解析法を開発し報告した。それに加え今年度、供試DNAを網羅的に配列解読し生物種毎に分類するメタゲノミクス解析法も開発した。2つの方法を併用する理由として、細菌のみを解析対象とする16S-rDNA解読法に加え、メタゲノミクス解析法を追加することで供試検体の現況を包括的に理解できると考えた。
結果と考察
 UC患者2名(UC266875, UC-267223)の発症時およびATM治療後の寛解時の排泄便を得て(研究協力者:寺尾修一先生・加古川東市民病院)、便検体に内在する細菌フローラを16S-rDNA解読法とメタゲノミクス法にて同定・分類し比較検討した。得られた細菌の解読リードを細菌属レベルで分類したところ、寛解維持に伴い腸内環境を改善するBifidobacterium, Faecalibacteriumの増加が顕著であり、腸内フローラが健常に近づきつつあると示唆された。一方、患者2名の発症時の様子は異なっており、Escherichia, Ruminococcus、Leuconostoc, Bacteroidesの検出が顕著であった。
結論
 本研究課題で開発した網羅的細菌種鑑別法は、包括的に細菌および生物種の鑑別を定量的に解析する事ができる。本年度においては、UC患者2名のみを対象にした網羅解析であるが、ATM治療により寛解維持できたUC患者の実態を「腸内細菌フローラ」として示すことができたと考えている。ステロイド治療も無効であるステロイド抵抗性UC患者にはATM治療等、代替医療を必要とする。増悪に関与する細菌種を特定することが本研究課題の最終目標であり、UC患者の症状をより明確に説明する検査法の開発、かつATM治療に代わる適切な抗菌薬処方を提案できるものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123033Z