重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析,その診断・治療に関する研究

文献情報

文献番号
201123028A
報告書区分
総括
研究課題名
重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析,その診断・治療に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
生方 公子(北里大学北里生命科学研究所 病原微生物分子疫学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 孝(北里大学大学院感染制御科学府&北里生命科学研究所 感染症学研究室)
  • 阿戸 学(国立感染症研究所 免疫部第二室)
  • 池辺 忠義(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 大石 和徳(大阪大学微生物病研究所 感染症国際研究センター高病原性感染症研究部門)
  • 藤島 清太郎(慶應義塾大学 医学部救急医学)
  • 坂田 宏(JA北海道厚生連旭川厚生病院 小児科)
  • 岩田 敏(慶應義塾大学 医学部感染制御センター)
  • 秋山 徹(独立行政法人国立国際医療研究センター 感染症制御研究部感染症免疫遺伝研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
33,269,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再び増加しつつあるβ溶血性レンサ球菌および肺炎球菌による侵襲性重症感染症の実態を明らかにするため,1)原因菌の分子疫学解析,2)発症例のリスクファクター解析,3)病原性発現に関わる菌側の因子解明,4)迅速診断法の確立,5)市中型重症感染症菌に対する啓発活動,5項目の実行を目的とした。
研究方法
上記の研究目的に沿い,1)全国規模で収集された1295株の肺炎球菌と溶血性レンサ球菌の疫学解析,2)患者背景因子の統計解析,3)ゲノム解析と動物モデルによる劇症化への因子解析,4)迅速診断法の臨床的応用,5)websiteの新規データへの更新を行なうこととした。
結果と考察
疫学:1)全国サーベイランスシステムを構築,341医療機関から1295株の分与を受けた。肺炎球菌(633株)は莢膜型,薬剤耐性遺伝子,およびMLST解析を行なった。小児・成人に対するワクチンカバー率と耐性菌の頻度を明らかにした。2)レンサ球菌はMタンパク(GASとSDSE)と莢膜型(GBS)を解析し,小児と成人由来株の特徴,欧米の菌株との違いを明らかにした。3)新たな迅速診断法の臨床応用を試みた。4)啓発活動のためのwebsiteを新規データへ大幅に更新した。5)日本救急医学会において敗血症登録システムを完成,稼動させた。
基礎:1)菌のビルレンス解析と動物モデルの構築は,劇症型GAS感染症由来株におけるrocA変異株が好中球の遊走能を阻害,殺傷することを明らかにした。2)劇症型感染マウスモデルではIFN-γ産生が亢進し,病態の重症化と予後に関わる可能性が示唆された。この産生は骨髄系細胞から生じ,その細胞群は劇症型感染に対して防御的に働くことを見いだした。3)糖尿病マウスモデルによるSDSE感染では,炎症性サイトカインのIL-6産生が高まることを明らかにした。そして,抗IL-6抗体投与によりマウス致死効果が有意に抑制されることを明らかにした。4)ヒト由来のSDSE株とブタ由来株についてゲノム解析を行ない,GAS,GBS,肺炎球菌,等と病原性遺伝子の比較を行なった。多くの病原遺伝子がGASと共通していた。
結論
高齢化社会の到来とともに,市中型感染症原因菌の肺炎球菌やレンサ球菌感染症が再び問題化している。特に基礎疾患を有する壮年期以降においては急激に症状が進行し致命的となり得る。これらの感染症を制御するには,予防知識の普及による啓発活動が何よりも重要である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123028Z