早期麻疹排除及び排除状態の維持に関する研究

文献情報

文献番号
201123027A
報告書区分
総括
研究課題名
早期麻疹排除及び排除状態の維持に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹田 誠(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
研究分担者(所属機関)
  • 駒瀬 勝啓(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 森 嘉生(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 木村 博一(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 小沢 邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 柳 雄介(九州大学 大学院 医学研究院)
  • 前仲 勝実(北海道大学 大学院 薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
37,348,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19年(2007年)12月麻しんに関する「特定指針」が告示され、平成24年度までに国内から麻しんを排除し、その後排除状態を維持するという目標が出された。本研究は、「麻疹排除」という目標達成に必要な調査研究、基礎研究等を通じて、わが国からの麻疹排除の達成を促進、そして実現させることを目的としている。
研究方法
以下の研究を実施する。
(1)麻疹ウイルスの遺伝子解析(遺伝子型解析)を通じた流行調査研究
(2)診断技術ならびに診断精度向上のための研究
(3)流行ルートの効果的な把握法の開発研究
(4)麻疹ウイルスの分離法の研究や病態解明に関する研究
(5)抗原性変化の追跡調査、及びワクチン効果を維持するための研究。
結果と考察
(1)地研に送られる臨床検体数が、増加し、実験室診断がより強化されていることが明らかになった。
(2)一部の地域では、すでに麻疹排除状態であることが強く示唆された。
(3)現在、わが国で検出される麻疹ウイルスが、ほとんど外国からの輸入株であることが明らかになった。
(4)IgM ELISA検査において、相当数の偽陽性例が生じていることが明らかになった。偽陽性を生じる、わが国における主な感染症は、突発性発疹や伝染性紅斑であることが明らかになった。
(5)臨床診断された麻疹症例の中に、多くの風疹症例の紛れ込みがあることが示された。
(6)届出や地研へのウイルス検査の依頼について、各医療機関により区区であり、検体採取の遅れが明らかとなった。
(7)流行株のH遺伝子を用いた新しい系統解析法を開発し、各流行株の分岐時期を示しデータを得た。
(8)麻疹ウイルスや関連ウイルスの受容体結合タンパク質ならびに受容体との複合体の立体構造解明に成功し、麻疹ウイルスの抗原性が単一であることの科学的基盤となるデータを得た。

結論
地研においては、流行経路の解明に繋がる数々の優れた実験結果が出され、わが国には、もはやほとんど土着の株による流行はなく、海外からの輸入株症例ばかりが発生していることが示された。麻疹排除へ向けての今後の最重要課題は、麻疹患者全例の臨床検体を地研へ収集する枠組みを完成させること、実験室診断の精度を高め、医師による確実な診断を助ける枠組みを作ることである。わが国は、確実に世界の麻疹対策先進国となり、世界からもそのような評価を受けている。「麻疹排除」という非常に高い目標をもった活動であるが、着実に進展していると考えている。本研究班の活動が、広く日本全体の感染症対策にも貢献するものと期待している。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123027Z