海外からの侵入が危惧される野生鳥獣媒介性感染症の疫学、診断・予防法等に関する研究

文献情報

文献番号
201123024A
報告書区分
総括
研究課題名
海外からの侵入が危惧される野生鳥獣媒介性感染症の疫学、診断・予防法等に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
苅和 宏明(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 好井健太朗(北海道大学 大学院獣医学研究科)
  • 有川二郎(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 西條政幸(国立感染症研究所)
  • 井上智(国立感染症研究所)
  • 伊藤直人(岐阜大学 応用生物科学部)
  • 丸山総一(日本大学 生物資源科学部獣医学科)
  • 林谷秀樹(東京農工大学 共生科学技術研究院)
  • 川端寛樹(国立感染症研究所)
  • 永田典代(国立感染症研究所)
  • 早坂大輔(長崎大学 熱帯医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
22,393,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では細菌やウイルスが病原体となる危険度の高い野生鳥獣媒介性の人獣共通感染症について、わが国やユーラシア大陸を中心に疫学調査を実施するとともに流行状況に関する情報を収集することを主な目的とする。また、人獣共通感染症の迅速診断法の開発を試みるとともに、病態モデルの開発を行う。
研究方法
 北海道北斗市で分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスの1995年分離株と2008年分離株をマウスに接種して病原性を比較した。ベトナムのメコンデルタに赴き、野生ヤモリとその糞便を集め、サルモネラ属菌を分離した。ハンタウイルス感染症の動物モデルを開発することを目的として、HantaanウイルスAA57株をICRマウスに実験的に感染させた。ダニ媒介性脳炎、ハンタウイルス感染症、狂犬病、およびボレリアの新規診断法の開発を試みた。
結果と考察
 北海道北斗市上磯地区のアカネズミから2008年に分離されたダニ媒介性脳炎ウイルス株と、同地区で1995年に分離された株のマウスにおける病原性を比較したところ、2008年分離株は1995年分離株よりも病原性が強いことが示された。ベトナム・メコンデルタの野生ヤモリの糞便にはサルモネラ属菌が排菌されており、本菌は糞便中で6週間生残することが明らかになった。HantaanウイルスAA57株を実験的に感染させたマウスは、ほぼ半数の動物が呼吸器症状を呈し、重症例や死亡例では胸水の貯留、肺血管周囲の中等度の水腫、好中球、単核系細胞浸潤を認めた。また、病変部の血管内皮細胞にウイルス抗原陽性細胞が存在した。この他に、ダニ媒介性脳炎のLAMP法による遺伝子検出法、ハンタウイルス感染症の血清学的鑑別診断法、狂犬病ウイルスの中和試験法などを開発した。また、新規に開発されたボレリアの診断法により、回帰熱の海外輸入例の診断に成功した。
結論
 2008年に北海道で分離されたダニ媒介性脳炎ウイルス株が1995年分離株よりもマウスにおいて強い病原性を有することが判明した。したがって、北斗市では病原性のあるダニ媒介性脳炎ウイルスが自然界で10年以上も保持されている可能性が示唆された。ベトナムのメコンデルタでは野生ヤモリとその糞便がサルモネラ感染症の病原巣となっていることが判明した。マウスにおけるハンタウイルス肺症候群の病態モデルが開発された。新規に開発されたボレリアの診断法により、回帰熱の海外輸入例の診断に成功した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123024Z