文献情報
文献番号
201123017A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザH1N1の病態把握と重症化の要因の解明に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小林 信之(独立行政法人 国立国際医療研究センター 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
- 工藤 宏一郎(公益財団法人結核予防会 複十字病院)
- 齋藤 玲子(新潟大学大学院 医歯学系国際保健学分野)
- 河合 直樹(日本臨床内科医会・内科学(河合内科医院))
- 浮村 聡(大阪医科大学医学部 内科学総合診療科)
- 池松 秀之(九州大学先端医療イノベーションセンター・臨床試験部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新型インフルエンザ重症例の病態を把握し、重症化要因を究明するとともに、ウイルスの薬剤耐性や抗ウイルス薬の臨床効果など最新情報に基づいた、新たなパンデミックに対する予防・治療・管理方法を確立する。
研究方法
1)メキシコ国立呼吸器疾患センターにおける新型インフルエンザ重症肺炎患者の死亡へのリスクファクターを求めた。2)入院を必要とするような肺炎を合併したインフルエンザ患者の治療内容と予後について検討した。3)2009/10シーズンと翌シーズンにおけるインフルエンザ心筋炎について全国アンケート調査にて比較した。4)臨床検体からウイルスを分離し、型・亜型と臨床症状との関連、抗インフルエンザ薬の効果についてリアルタイムに解析した。5)日本各地から採取・分離したインフルエンザウイルス株の薬剤耐性および耐性変異の解析を行った。
結果と考察
1)重症肺炎の死亡へのリスクとして、発症から抗ウイルス薬投与までの日数、呼吸数、P/F比、入院3日目のクレアチニン値、以上4つの因子が明らかとなった。2)全身性ステロイドは喘鳴を伴う多くの肺炎患者に対する治療薬として使用されていたが、肺炎の治癒過程に対するネガティブな影響は認められなかった。3)2009/10シーズンの新型インフルエンザ心筋炎は25例であったが、翌シーズンは4例に減少した。劇症型心筋炎では17例中8例が死亡し、救命には体外式補助循環を必要とした。4)2010/11シーズンにおけるA(H1N1)pdm09感染者は0-9歳、10-19歳で減少し、A(H3N2)型やB型に比べて症状は強いものの、NA阻害薬の効果が高いことが示された。5)2010/11シーズンには、A/H1N1pdmの5株、A/H3N2に2株に薬剤耐性が確認され、その中でA/H1N1pdm 2株はオセルタミビル耐性H274Y変異を認めた。
結論
新型インフルエンザ重症肺炎の死亡へのリスク因子を求め、インフルエンザにおける診療ステージ毎のリスクファクターと治療内容を検討しフローチャートを作成した。インフルエンザ心筋炎は稀ではあるが劇症化率および致死率が高く、救命には体外式補助循環が必要であった。2010/11シーズンのA(H1N1)pdm09感染者は0-19歳で減少がみられ、感染症状は強いが、NA阻害薬の有効性は高かった。
公開日・更新日
公開日
2012-06-28
更新日
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