新型インフルエンザH1N1のウイルスの病原性等の解析に関する研究

文献情報

文献番号
201123016A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザH1N1のウイルスの病原性等の解析に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
信澤 枝里(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川秀 樹(国立感染症研究所  感染病理部)
  • 高橋 宜聖(国立感染症研究所  免疫部)
  • 西村 秀一(独立行政法人国立病 院機構仙台医療セン ター 臨床研究部)
  • 田中 成典(神戸大学 工学部)
  • 松嵜 葉子(山形大学 医学部)
  • 安武 義晃(独立行政法人産業技 術総合研究所 生物プロセス研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、新型インフルエンザ2009の病原性、抗原性に関する網羅的な解析を行い、得られた結果を治療や予防に役立て、国民の健康被害を最小限に抑えることを目的とする。新型インフルエンザ2009は、喘息の既往歴のある患者で重症化が報告されているが、その病因は明らかではない。一方、新型ウイルス2009は、今後季節性インフルエンザウイルスとしてヒトの間で感染を繰り返し、抗原変異を起こすと考えられるが、ウイルス抗原の抗原構造やヒトの中和抗体が認識する抗原構造の詳細は明らかではない。本研究では気管支喘息モデル動物を用いて、重傷化の病態を解明する、新型ウイルスの抗原構造およびヒトの免疫応答を明らかにすることを目的とした。
研究方法
◎気管支喘息モデルマウスNC/Ngaに卵白アルブミン(OVA)でアレルギーを惹起した後、新型ウイルスを経鼻接種し、さらにOVAで喘息発作を誘発して、新型ウイルス感染による症状の増悪化を検討した。◎新型ウイルスに対するマウス単クローン抗体(mAb)エスケープ変異株の解析、ワクチン接種者の記憶B細胞から抗体遺伝子のクローニング、抗体蛋白の作製、新型ウイルスワクチン接種者の血清抗体のHI試験、HAに対する結合能の測定、高速高精度の計算機シミュレーションによるHA蛋白質内の全アミノ酸の相互作用に関する網羅的・系統的な解析、結晶構造解析法の構築を行った。
結果と考察
◎OVA負荷動物においては、新型ウイルス感染特異的に明らかな立毛と元気消失を認め、細気管支周囲等に好酸球を含む炎症細胞浸潤の悪化が確認された。◎新型ウイルスHA上には既知のH1HAのSa, Sb, Ca2領域に相当する3領域が存在する、エスケープ変異株との反応性からワクチン接種者の血清抗体の多くがCa領域を認識する、ヒトmAbの作製法を確立した、新型インフルエンザワクチン接種、ウイルス感染後、低/無HI抗体価を示す集団が健康成人中に確認された。計算機実験によりHA-抗体複合体中の結合特異性に関する計算値と実測値との整合性を確認した。
結論
◎新型インフルエンザウイルス感染による喘息発作悪化の病態モデルを構築し、病理学的、免疫学的に解析した。◎新型ウイルスHAの抗原構造地図をほぼ完成させた。ワクチン接種後血清はCa領域を認識した。抹消血由来のヒトのmAb作製系を確立した。免疫応答の低い集団の存在が明らかになった。高精度計算機実験によりHAに関わる分子間相互作用の定量的解析が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123016Z