新型薬剤耐性菌等に関する研究

文献情報

文献番号
201123008A
報告書区分
総括
研究課題名
新型薬剤耐性菌等に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 宜親(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯沼 由嗣(金沢医科大学医学部)
  • 池 康嘉(群馬大学大学院医学系研究科)
  • 一山 智(京都大学医学部)
  • 河野 文夫(国立病院機構熊本医療センター)
  • 北島 博之(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 切替 照雄(国立国際医療センター研究所 )
  • 黒崎 博雅(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 小西 敏郎(NTT東日本関東病院)
  • 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 鈴木 里和(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 谷原 真一(福岡大学医学部)
  • 土手 健太郎(愛媛大学医学部)
  • 長沢 光章(東北大学病院)
  • 藤本 修平(東海大学医学部)
  • 松本 哲哉(東京医科大学)
  • 松本 智成(大阪府立病院機構 大阪府立呼吸器・アレルギー医療 センター)
  • 宮崎 久義(国立病院機構 熊本医療センター )
  • 森兼 啓太(山形大学医学部附属病院)
  • 山口 惠三(東邦大学医学部)
  • 山根 一和(川崎医科大学)
  • 山本 友子(千葉大学大学院薬学研究院)
  • 和田 昭仁(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
77,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、海外でNDM-1を産生する多剤耐性の肺炎桿菌や大腸菌が増加し、また、多剤耐性アシネトバクターも海外で増加し国内でも一部の医療機関でアウトブレイクを引き起こす事態となっている。そこで、新たに出現しつつある新型の薬剤耐性菌が獲得している耐性メカニズムを解明し、その成果を活用してそれらの新型耐性菌の検査法等を構築するとともに、国内における発生動向等を把握し、新型の薬剤耐性菌に対する厚労省の施策を学術的に支援する。また、厚労省の院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業の向上に関する研究を通じて厚生労働行政を支援する。
研究方法
国内の臨床現場で分離された多剤耐性菌について、それらの染色体やプラスミド上に存在する耐性遺伝子をクローニングする等により、耐性に関与する分子の特徴を把握する。次に、それらのデータに基づいて、新規検査法などを構築する。さらに、国内における分離菌の中での新型の薬剤耐性菌などの発生動向を把握する。また、感染制御や耐性菌対策に資するため、JANIS事業のデータを活用して研究を行う。
結果と考察
平成23年度には、NDM-1より、カルバペネムを分解する活性が強力な新型のメタロ-β-ラクタマーゼであるSMB-1を新たに発見した。また、新型のアミノグリコシドアセチル化酵素や、肺炎球菌におけるケトライド耐性に関与する新しい耐性機構を発見した。また、ペニシリン低感受性B群連鎖球菌(PRGBS)の分子疫学解析から、ST458と判定される株にPRGBS株が多いことが明らかとなった。これらの研究成果に基づき、NDM-1産生株の簡便なスクリーニング法、フルオロキノロンアセチル化酵素産生株の簡便な検出法、イムノクロマト法による、新型のアミノグリコシドアセチル化酵素の検査法、緑膿菌の分子疫学解析に活用可能なPOT法等を構築した。JANIS事業の向上に関する研究成果としては、JANIS検査部門データを個々の参加医療機関における日常的な感染制御に活用可能なデータ解析ツール、2DCM-webを開発し普及を図った。薬剤耐性菌については、今後も次々と新型が出現してくることが予想されるため、感染制御の現場のみならず公衆衛生上も重要な問題であり、研究体制のさらなる強化が不可欠である。
結論
H23年度の研究によりNDM-1より新しいSMB-1と命名した新型のメタロ-β-ラクタマーゼ産生株を臨床分離菌から検出するなど多くの成果を上げることができた。また、新型耐性菌の簡便な検査法等を複数構築することができた。これらの成果とともに、JANISの向上が図られ、わが国における耐性菌対策の向上に貢献することができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201123008B
報告書区分
総合
研究課題名
新型薬剤耐性菌等に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 宜親(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯沼 由嗣(金沢医科大学医学部)
  • 池 康嘉(群馬大学大学院医学系研究科)
  • 一山 智(京都大学医学部)
  • 河野 文夫(国立病院機構熊本医療センター)
  • 北島 博之(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 切替 照雄(国立国際医療研究センター)
  • 黒崎 博雅(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 小西 敏郎(NTT東日本関東病院)
  • 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 鈴木 里和(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 谷原 真一(福岡大学医学部)
  • 土手 健太郎(愛媛大学医学部)
  • 長沢 光章(東北大学病院)
  • 藤本 修平(東海大学医学部)
  • 松本 哲哉(東京医科大学)
  • 松本 智成(大阪府立病院機構 大阪府立呼吸器・アレルギー医療 センター)
  • 宮崎 久義(国立病院機構 熊本医療センター )
  • 森兼 啓太(山形大学医学部附属病院)
  • 山口 惠三(東邦大学医学部)
  • 山根 一和(川崎医科大学)
  • 山本 友子(千葉大学大学院薬学研究院)
  • 和田 昭仁(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多剤耐性緑膿菌に加え多剤耐性アシネトバクター、NDM-1産生肺炎桿菌など多種多様な新型の多剤耐性菌の出現と蔓延が世界的な規模で大きな問題となっている。そこで、新たに出現しつつある新型耐性菌についてそれらが獲得している耐性メカニズムを解明し、その成果をベースとして検査法の開発等を行う。また、厚生労働省の院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業の向上のための研究等を通じて、厚生労働省の耐性菌対策を学術的に支援する。
研究方法
国内で臨床分離される病原細菌の中から、既知の耐性メカニズムで説明できない特異な耐性傾向等を示す株を選択し、その原因となる遺伝子や分子を特定する。その成果に基づいて、新たに出現しつつある新型耐性菌の検査法等を構築する。また、厚労省のJANIS事業の向上を図るための研究を行う。
結果と考察
3年間の研究期間を通じて、新型のホスホマイシン耐性酵素FosA3、新型のメタロ-β-ラクタマーゼSMB-1、新型のアミノグリコシド修飾酵素などを新たに発見した。また、NDM-1産生株の全国調査(2010年9-12月)では、国内ではNDM-1産生株は稀であることを確認した。さらに肺炎球菌のケトライド耐性に関与する新しい分子機構を解明した。一方、フルオロキノロンアセチル化酵素産生株の簡便な識別法、NDM-1産生株の簡便なスクリーニング法、多剤耐性緑膿菌の検出法や分子疫学解析法(POT法)などの試験検査法を開発、実用化した。また、JANISデータの活用を促す2DCM-webの開発と普及を行った。今回の研究で新しくSMB-1が発見されたように、今後も新たな耐性菌が出現する可能性が高いため、薬剤耐性菌に対する研究体制を一層強化する必要がある。
結論
3年間の研究を通じて、FosA3やSMB-1など数多くの新型耐性菌を新たに確認した。また、新型耐性菌を迅速に検出可能な検査法を複数開発することができた。同時に、JANIS事業の向上に資する研究が行われ、JANIS事業は、世界的にも最も高度なサーベイランスに発展を遂げることができた。このように薬剤耐性菌に対する基礎研究と疫学研究、JANIS事業が連携することにより、国内の医療機関における感染制御や耐性菌対策のレベルアップが実現され、さらに厚生労働省が実施する薬剤耐性菌対策に対し学術的に貢献することができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内外で多種多様な新型薬剤耐性菌が出現しつつあり、一部はアウトブレイクを引き起こす等国内外で大きな社会的関心事となっている。本研究では、新型薬剤耐性菌が獲得した新しい耐性メカニズムについて分子、遺伝子レベルで研究を行い、新たに新型のホスホマイシン修飾不活化酵素FosA3や新型メタロ-β-ラクタマーゼSMB-1、新型のアミノグリコシドアセチル化酵素、さらに、肺炎球菌における新規のケトライド耐性機構などの複数の新しい薬剤耐性分子や耐性機構を発見することができた。
臨床的観点からの成果
本研究で発見された各種の新型耐性菌や耐性機構の情報を論文として国内外に公開することで、それらの検出等を促進することが期待される。また、今回の研究で構築された、フルオロキノロンアセチル化酵素産生株の簡便検査法、NDM-1産生株のスクリーニング法、イムノクロマトを応用した多剤耐性緑膿菌の検査法、POT法による多剤耐性緑膿菌の分子疫学解析手法などにより、国内の医療機関における感染制御、耐性菌対策の一層の向上が図られることが期待される。
ガイドライン等の開発
新生児における感染症の低減化を促すため、「NICUにおける医療関連感染予防のためのハンドブック」の作成を行った。さらに、JANIS検査部門で厚労省に提出される薬剤感受性試験データを活用することで、個々の医療機関が自施設内での薬剤耐性菌などの伝播拡散状況を可視化し、日常的な感染制御や耐性菌対策に活用することができる専用データ解析ソフトウエア(2DCM-wed)の開発とJANIS事業参加施設への普及などを行った。
その他行政的観点からの成果
2010年に発生したNDM-1産生株の国内初検出や多剤耐性アシネトバクターの院内感染発生時には、研究班としての対応をおこなうとともに、研究班として厚労省の調査への協力を行った。
その他のインパクト
薬剤耐性菌に関する問題は、不用意な取扱いをすると、医療不信や社会不安を増長することにもなるため、慎重な対応が必要であるが、日本細菌学会や日本臨床微生物学会、日本感染症学会、日本環境感染学会などの専門的な学術総会などにおいて薬剤耐性菌問題がたびたびシンポジウムなどで取り上げられ、医療関係者に対し知識のアップデートと普及が図られた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
38件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
16SrRNAメチレースに関する英文総説
学会発表(国内学会)
34件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
緑膿菌の簡便な分子疫学解析手法としてのPOT法の開発など
その他成果(施策への反映)
1件
NDM-1産生株に関する国内への注意喚起
その他成果(普及・啓発活動)
2件
学会等での耐性菌の検出法などに関する解説

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Wachino J, Yamaguchi Y, Mori S, et al.
Crystallization and preliminary X-ray analysis of the subclass B3 metallo-β-lactamase SMB-1 that confers carbapenem resistance
Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. , 68 (3) , 343-346  (2012)
原著論文2
Nagano N, Nagano Y, Toyama M, et al.
Nosocomial spread of multidrug-resistant group B streptococci with reduced penicillin susceptibility belonging to clonal complex 1
J Antimicrob Chemother , 67 (4) , 849-856  (2012)
原著論文3
Kimura K, Nagano N, Nagano Y, et al.
Predominance of sequence type 1 group with serotype VI among group B streptococci with reduced penicillin susceptibility identified in Japan
J Antimicrob Chemother , 66 (11) , 2460-2464  (2011)
原著論文4
Wachino J, Yoshida H, Yamane K, et al.
SMB-1, a novel subclass B3 metallo-beta-lactamase, associated with ISCR1 and a class 1 integron, from a carbapenem-resistant Serratia marcescens clinical isolate
Antimicrob Agents Chemother , 55 (11) , 5143-5149  (2011)
原著論文5
Wachino J, Yamane K, Arakawa Y.
Practical disk-based method for detection of Escherichia coli clinical isolates producing the fluoroquinolone-modifying enzyme AAC(6')-Ib-cr
J Clin Microbiol , 49 (6) , 2378-2379  (2011)
原著論文6
Tsutsui A, Suzuki S, Yamane K, et al.
Genotypes and infection sites in an outbreak of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa
J Hosp Infect , 78 (4) , 317-322  (2011)
原著論文7
Wachino J, Shibayama K, Kimura K, et al.
RmtC introduces G1405 methylation in 16S rRNA and confers high-level aminoglycoside resistance on Gram-positive microorganisms
FEMS Microbiol Lett , 311 (1) , 56-60  (2010)
原著論文8
Kawamura-Sato K, Wachino J, Kondo T, et al.
Correlation between reduced susceptibility to disinfectants and multidrug resistance among clinical isolates of Acinetobacter species
J Antimicrob Chemother , 65 (9) , 1975-1983  (2010)
原著論文9
Wachino J, Yamane K, Suzuki S, et al.
Prevalence of fosfomycin resistance among CTX-M-producing Escherichia coli clinical isolates in Japan and identification of novel plasmid-mediated fosfomycin-modifying enzymes
Antimicrob Agents Chemother , 57 (7) , 3061-3064  (2010)
原著論文10
Kimura K, Wachino J, Kurokawa H, et al.
Practical disk diffusion test for detecting group B streptococcus with reduced penicillin susceptibility
J Clin Microbiol , 47 (12) , 4154-4157  (2009)
原著論文11
Nagano N, Kimura K, Nagano Y, et al.
Molecular characterization of group B streptococci with reduced penicillin susceptibility recurrently isolated from a sacral decubitus ulcer
J Antimicrob Chemother , 64 (6) , 1326-1328  (2009)
原著論文12
Piao Z, Shibayama K, Mori S, et al.
A novel insertion sequence, IS1642, of Mycobacterium avium, which forms long direct repeats of variable length
FEMS Microbiol Lett , 291 (2) , 216-221  (2009)
原著論文13
Yamashita H, Tomita H, Inoue T, et al.
Genetic organization and mode of action of a novel bacteriocin, bacteriocin 51: determinant of VanA-type vancomycin-resistant Enterococcus faecium
Antimicrob Agents Chemother , 55 (9) , 4352-4360  (2011)
原著論文14
Nagao M, Iinuma Y, Saito T, et al.
Close cooperation between infectious disease physicians and attending physicians can result in better management and outcome for patients with Staphylococcus aureus bacteraemia
Clin Microbiol Infect , 16 (12) , 1783-1788  (2010)
原著論文15
Kitao T, Miyoshi-Akiyama T, Kirikae T.
AAC(6')-Iaf, a novel aminoglycoside 6'-N-acetyltransferase from multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa clinical isolates
Antimicrob Agents Chemother , 53 (6) , 2327-2334  (2009)
原著論文16
Kitao T, Miyoshi-Akiyama T, Shimada K, et al.
Development of an immunochromatographic assay for the rapid detection of AAC(6')-Iae-producing multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa
J Antimicrob Chemother , 65 (7) , 1382-1386  (2010)
原著論文17
Kitao T, Miyoshi-Akiyama T, Tanaka M, et al.
Development of an immunochromatographic assay for diagnosing the production of IMP-type metallo-β-lactamases that mediate carbapenem resistance in Pseudomonas
J Microbiol Methods , 87 (3) , 330-337  (2011)
原著論文18
Tada T, Kitao T, Miyoshi-Akiyama T, et al.
Genome sequence of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa NCGM1179
J Bacteriol , 193 (22) , 6397-6397  (2011)
原著論文19
Yamaguchi Y, Sato G, Yamagata Y, et al.
Structure of AmpC beta-lactamase (AmpCD) from an Escherichia coli clinical isolate with a tripeptide deletion (Gly286-Ser287-Asp288) in the H10 helix
Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun , 65 (6) , 540-543  (2009)
原著論文20
Yamaguchi Y, Takashio N, Wachino J, et al.
Structure of metallo-beta-lactamase IND-7 from a Chryseobacterium indologenes clinical isolate at 1.65-A resolution
J Biochem , 147 (6) , 905-915  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123008Z