節足動物が媒介する感染症への効果的な対策に関する総合的な研究

文献情報

文献番号
201123005A
報告書区分
総括
研究課題名
節足動物が媒介する感染症への効果的な対策に関する総合的な研究
課題番号
H21-新興・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小林 睦生(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 英二(神戸大学 保健学研究科)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
  • 川田 均(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 津田 良夫(国立感染症研究所)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所)
  • 山内 健生(国立感染症研究所)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所)
  • 冨田 隆史(国立感染症研究所)
  • 柴田 伸一郎(名古屋市衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
41,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 チクングニア熱など新興・再興感染症の迅速な実験室診断法の確立が望まれる。日本脳炎ウイルス(JEV)の我が国での越冬生態が不明で、疾病媒介蚊が保有するその他のウイルスに関する情報が不足。デング熱媒介蚊やアタマジラミの殺虫剤抵抗性に関する基礎的データが不足。東日本大震災の被災地での衛生害虫発生状況調査は緊急の課題であり、自然災害と感染症の解析における調査が必須。媒介蚊の防除対策に必要な情報が不足しており、防除対策の立案が困難である。
研究方法
 デング熱ワクチンの感染増強抗体を誘導しない安全なDNAワクチンの開発の基礎的研究、 我が国におけるダニ媒介性ウイルス感染症の遺伝子診断、JEVの冬季の感染環に関わる媒介節足動物の越冬、長距離移動の解明、蚊の種々のウイルス保有実態の把握、蚊媒介性ウイルス感染症対策に資する科学的知見を得ることができる。衛生害虫の薬剤作用点変異の簡便な分子検査法の開発。自然災害による媒介蚊の発生状況、発生源の塩濃度との関連、都市部における媒介蚊防除対策の効果的な薬剤の選択と使用法の確立。
結果と考察
 ヒトスジシマカの発生源と成虫の潜み場所との関係を明らかにした。東日本大震災の被災地における疾病媒介蚊の発生状況を明らかにした。デングウイルスに対するモノクローナル抗体を用いて中和・増強活性に係わる抗原エピトープを解析した。チクングニアウイルス遺伝子迅速診断法を開発した。Fcレセプター発現細胞を用いた中和抗体測定法を開発した。兵庫県六甲山系での日本脳炎ウイルスの感染環に関して新たな知見を得た。野外捕集蚊から数種の新規ウイルスを分離し、ウイルス保有の実態解明が進んだ。ピレスロイド作用点の二座位の変異の簡便な分子ジェノタイピング法を開発した。
結論
 我が国にも侵入し流行する可能性のあるデングウイルス、チクングニア熱の迅速診断法の確立、ワクチン開発への基礎的解析が進んだ。日本脳炎ウイルスの海外からの侵入、国内における越冬生体の解明により、日本脳炎の流行予測が可能となり、また、マダニ類、蚊類による感染症媒介のリスク評価につながる。衛生昆虫類の殺虫剤抵抗性の発達状況、遺伝子診断法の確立が出来た。東日本大震災被災地における衛生害虫の発生状況調査から適切な防除対策の啓発が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201123005B
報告書区分
総合
研究課題名
節足動物が媒介する感染症への効果的な対策に関する総合的な研究
課題番号
H21-新興・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小林 睦生(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 英二(神戸大学 保健学研究科)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
  • 川田 均(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 津田 良夫(国立感染症研究所)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所)
  • 山内 健生(富山県衛生研究所)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所)
  • 冨田 隆史(国立感染症研究所)
  • 柴田 伸一郎(名古屋市衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 クリミヤ・コンゴ出血熱の診断法や疫学研究が整備されておらず、チクングニア熱などアルファウイルスの実験室診断の技術移転等が十分でない。日本脳炎ウイルス(JEV)の冬期の動態が未だ不明で、我が国の疾病媒介蚊が保有するその他のウイルス種に関する情報が不足している。デング熱媒介蚊やアタマジラミの殺虫剤抵抗性に関する基礎的データが不足している。東日本大震災の被災地での衛生害虫発生状況調査は緊急の課題であり、ハエ類の生態や媒介蚊の防除対策に必要な情報が不足しており、防除対策の立案が困難である。
研究方法
 デング熱のワクチン開発は、感染増強抗体を誘導しない安全なDNAワクチンの開発のための実験系の確立、 我が国におけるダニ媒介性ウイルス感染症の遺伝子診断系の確立、JEVの冬季の感染環に関わる媒介節足動物の越冬、長距離移動の証明、蚊の種々のウイルス保有実態の把握、蚊媒介性ウイルス感染症対策に資する科学的知見を得ることができる。薬剤作用点変異の簡便な分子検査法の開発および薬剤抵抗性シラミの全国規模の調査。自然災害による媒介蚊の発生状況、塩濃度との関連、都市部における媒介蚊防除対策の効果的な薬剤の選択と使用法の確立。
結果と考察
 都市部でのヒトスジシマカの発生源と公園等の成虫の潜み場所との関係を明らかにした。東日本大震災の被災地における疾病媒介蚊の発生状況を明らかにした。デングウイルスに対するモノクローナル抗体を用いて中和・増強活性に係わる抗原エピトープを解析した。チクングニアウイルス遺伝子迅速診断法を開発した。Fcレセプター発現細胞を用いた中和抗体測定法を開発した。兵庫県六甲山系での日本脳炎ウイルスの感染環に関して新たな知見を得た。野外捕集蚊から数種の新規ウイルスを分離し、ウイルス保有の実態解明が進んだ。ピレスロイド作用点の二座位の変異の簡便な分子ジェノタイピング法を開発した。
結論
 我が国にも侵入し流行する可能性のあるデングウイルス、チクングニア熱の迅速診断法の確立、ワクチン開発への基礎的解析が進んだ。日本脳炎の海外侵入、国内における越冬の感染環を明らかにすることでより詳細な日本脳炎の流行予測事業に役立ち、また、マダニ類、蚊類による感染症媒介のリスク評価につながる。衛生昆虫類の殺虫剤抵抗性の発達状況、遺伝子診断法の確立が出来た。東日本大震災被災地における衛生害虫の発生状況調査から適切な防除対策の啓発が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「東日本大震災被災地における衛生害虫の発生状況調査と対策に関する記録」2012年3月、pp.102,
自治体、日本ペストコントロール協会、防疫殺虫剤協会等へ配布。
国立感染症研究所のホームページ「災害と感染症」より発信。URL:http://www.nih.go.jp/niid/ja/disaster.html
臨床的観点からの成果
特筆なし
ガイドライン等の開発
「チクングニア熱媒介蚊対策に関するガイドライン」2009年、pp.26, 作成し、自治体関係者へ配布。
その他行政的観点からの成果
1)「被災地・避難所の感染症対策における衛生昆虫の問題点」2012年6月、国立感染症研究所のホームページ「災害と感染症」より発信。http://www.nih.go.jp/niid/ja/disaster.html
2)リーフレット「避難所、応急仮設住宅でお過ごしのみなさまは:ハエ、蚊などからくらしを守るために。いま、できること」 2012年8月、pp.7 国立感染症研究所のホームページ「災害と感染症」より発信。http://www.nih.go.jp/niid/ja/disaster.html
その他のインパクト
1)「蚊が媒介するチクングニア熱」:ウイルス国内侵入を警戒 日本経済新聞(朝刊)
   2009年9月14日 
   日本で流行が起こる可能性があり、4類感染症に入れることが望まれる。
2)「ハエの9割イエバエ:感染症への注意研究所呼びかけ」毎日新聞(朝刊)2011年6月23日
   避難所の食堂内の壁に設置したハエ捕集用の粘着シートに多数のハエが捕集され、その9割   以上がイエバエであり、消化器感染症の発生に注意が必要。

発表件数

原著論文(和文)
26件
原著論文(英文等)
68件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
78件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
チクングニア熱を4類感染症へ認定するためのガイドライン等の作成
その他成果(普及・啓発活動)
2件
1)「被災地・避難所の感染症対策における衛生昆虫の問題点」2012年6月、の発信 2)避難所、仮設住宅での衛生害虫対策啓発のためのリーフレット作成と発信、2011年8月

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohba H, Huynh TTT, Kawada H et al.
Heteroptran insects as mosqutio predatores in water jars in sourthern Vietnam
J. Vector Ecol.  (2011)
原著論文2
Ejiri H, Sato Y, Kim KS et al.
Entomological study on transmission of the avian malaria parasite in a zoological garden in Japan: Blood-meal identification and detection of avian malaria parasite DNA from blood-fed mosquitoes.
J. Med. Entomol.  (2011)
原著論文3
Ejiri H, Sato KS, Tsuda Y et al.
Blood-meal identification and prevalance of avian malaria parasite in mosquitoes collected at Kushiro Wetland, a subarctic zone of Japan
J. Med. Entomol.  (2011)
原著論文4
Kuwata R, Isawa H, Hoshino K et al.
RNA splicing in a new rhabdovirus from Culex mosquitoes
J. Virol.  (2100)
原著論文5
Isawa H, Kuwata R, Hoshino K et al.
Identification and molecular characterization of a new nonsegmented double-stranded RNA virus isolated from Culex mosquitoes in Japan
Virus Res.  (2011)
原著論文6
Kitai Y, Kondo T & Konishi E.
Non-structural protein 1(NS1) antibody-based assays to differrentiate West Nile(WN) virus from Japanese encephalitis virus infections in horses: Effects of WN virus NS1 antibodies induced by inactivated WN vaccine
J. Viol. Meth.  (2011)
原著論文7
Kitai Y, Shirafuji H, Kanehira K et al.
Specific antibody responses to West Nile virus infections in horses preimmunized with inactivated Japanese encephalitis vaccine: Evaluation of blocking ELISA and complement-dependent cytotoxicity assay
Vector-Borne & Zoon. Dis.  (2011)
原著論文8
Takasaki T, Kotaki A, Tajima S et al.
Demographic feature of imported dengue haemorrhagic fever in Japan from 2006 to 2009
Dengue Bull.  (2011)
原著論文9
Ujiie M, Moi ML, Kobayashi T et al.
Dengue virus type-3 infection in a traveler returning from Benin to Japan
J. Trav. Med.  (2012)
原著論文10
Moi ML, Lim CK, Kotaki A et al.
Detection of higher levels of dengue viremia using FcγR-expressing BHK-21 cells than FcγR negative cells in secondary infection but not in primary infection
J. Infect. Dis.  (2011)
原著論文11
Moi ML, Lim CK, Tajima S et al.
Dengue virus isolation relying on antibody-depanedent enhancement mechanism using FCγR-expressing BHK cells and a monoclonal antibody with infection-enhancing capacity
J. Clin. Virol.  (2011)
原著論文12
Ujiie M, Moi ML & Takaeda D.
Dengue maculopathy in a traveler
Am. J. Trop. Med. Hyg.  (2011)
原著論文13
Omatsu T, Moe ML, Hiramaya T et al.
Common marmoset(Callithriz jacchus) as a premate model of dengue virus infection:development of high levels of viremia and demonstration of protective immunity
J. Genel. Virol.  (2011)
原著論文14
Yamauchi T, Tsuda Y, Sato Y et al.
Pigeon louse fly, Pseudolymchia canariensis(Diptera:Hippoboscidae) collected by dry ice trap
J. Am. Mosquit. Contl. Assoc.  (2011)
原著論文15
Taniguchi S, Watanabe S, Masangkay JS et al.
Reston eboravirus antibodies in bats, the Philippines
Em.Infect. Dis.  (2011)
原著論文16
Hoshino K, Takahashi-Nakaguchi A, Isawa H et al.
Entomological surveillance for flaviviruses at migaratory bird stopover sites in Hokkaido, Japan and a new insect flavivirus detected in Aedes galloisi(Diptera: Culicidae)
J. Med. Entomol.  (2011)
原著論文17
Isawa H, Kuwata R, Tajima S et al.
Construction of an infectious cDNA clone of Culex flavivirus, an insect-specific flavivirus from Culex mosquitoes
Arch. Viorol.  (2012)
原著論文18
Moi ML, Lim CK, Chua KB et al.
Dengue virus infection-enhancing activity in serum samples with neutralizing activity as determined by using FcγR-expressing cells
PLoS Negl. Trop. Dis.  (2012)
原著論文19
Yamauchi T, Agatsuma N, Araki N et al.
Ixodid ticks collected from the raccoon dog Nyctereutes procyonides albus and the common raccoon Procyon lotor in sourthern Hokkaido, Japan
Intern. J. Acarol.  (2012)
原著論文20
Fukushi S, Nakauchi M, Mizutani T et al.
Antigen-capture ELISA for the detection of Rift Valley fever virus nucleoprotein using new monoclonal antibodies
J. Virol. Meth.  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123005Z