就学前後の児童における発達障害の有病率とその発達的変化:地域ベースの横断的および縦断的研究

文献情報

文献番号
201122113A
報告書区分
総括
研究課題名
就学前後の児童における発達障害の有病率とその発達的変化:地域ベースの横断的および縦断的研究
課題番号
H23-精神・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 康雄(北海道大学大学院教育学研究院)
  • 中井 昭夫(福井大学医学部)
  • 三島 和夫(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理部)
  • 小保内 俊雅(東京都保健医療公社多摩北部医療センター)
  • 深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 藤野 博(東京学芸大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内外で増加が報告されている広汎性発達障害(PDD)については、早期診断と早期支援の重要性は短期・長期双方において示されているが、わが国では未診断、未支援のまま就学し、成長過程で様々な不適応やメンタルヘルスの問題を抱えているケースが多く、実証的データは乏しい。私たちが小中学生を対象に行った先行研究からは、PDD児の合併精神医学的障害、不器用、睡眠の問題は就学前から持続しており、就学前幼児期のエビデンスに基づく早期介入の必要性が示唆された。本研究は、就学前幼児(4-5歳)を対象として、日本におけるこの年齢帯のPDDの有病率、PDDに合併するADHD、不器用などの発達障害や児童期特有の精神医学的障害、睡眠障害の症状頻度を明らかにすることを目的とする。
研究方法
疫学調査の実施地域(対象人数3,057人)において、協力率と情報収集の質を高めるために保育所・幼稚園の保育者対象に研修を行った後に、調査票を保育士および保護者に配布し、収集が完了した。調査票は、SRS,、SDQ、ADHD-RS、little DCDQ、睡眠習慣や睡眠障害用質問紙に加え、交絡因子となる母親の育児不安やうつ病指標、また家族社会経済的状況などの環境要因を含む。大規模調査の他、小規模サンプルにおいて、発達的変化を縦断的に調べたり、系統的な評価方法の開発、PDDの早期指標となりうる行動マーカーの同定、さらに焦点を絞った療育プログラム開発に着手した。また、就学前幼児の行動や発達についての重要な情報源であり、支援者となりうる保育者を対象とする意識調査を行った。
結果と考察
4-5歳という年齢では、一般児童において多動・不注意、不器用、睡眠の問題は他覚的に行動評価されやすく、年長児童と比べて、有症状率が高く、症状範囲は広いこと、などが示された。一方、PDD児における年齢による変動は、本年度では明らかにできなかったが、運動や睡眠の問題では脳の成熟の遅れが持続的に社会機能に影響を与える可能性が示唆された。
結論
23 年度は初年度であったが、就学前幼児期はPDD有病率および合併精神症状や発達障害の有症率に関する調査に最適で、地域の高い意識と協力が得られ、今後の疫学調査の第2段階の実施可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122113Z