重度進行性障害者のQOL向上と自立支援に向けた意思伝達装置の開発と臨床評価に関する研究

文献情報

文献番号
201122108A
報告書区分
総括
研究課題名
重度進行性障害者のQOL向上と自立支援に向けた意思伝達装置の開発と臨床評価に関する研究
課題番号
H23-身体・知的・若手-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中山 優季(公益財団法人 東京都医学総合研究所 運動・感覚システム研究分野 難病ケア看護研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 筧 慎治(公益財団法人 東京都医学総合研究所・運動感覚システム研究分野・高次脳機能)
  • 内原 俊記(公益財団法人 東京都医学総合研究所・運動感覚システム研究分野・神経病理学)
  • 川田 明広(東京都立神経病院・脳神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症に代表される進行性の運動疾患を持つ障害者の自律や自己実現を図るため、その必要条件であるコミュニケーションを維持・拡大するために、括約筋を用いた意思伝達手段の開発と適応評価を行うことである。
研究方法
研究A:括約筋意思伝達の実用化に関する研究
1) 括約筋プローブの改良(適正化):括約筋の解剖・生理に関する文献検索、専門家意見聴取により、試作1号機を基盤に、健常被験者6名での装用評価を行った。
2)信号のコード化:効率的な信号のコード化について検討した。
研究B:括約筋意思伝達の適応評価に関する研究
1)臨床評価:6例のALS療養者に対して、内診や試作1号機の操作と可能な対象に対し1ch圧トランスジューサーを用いた随意収縮圧の測定を行い評価し、対象の括約筋機能の評価方法について検討した。
2)病理学的検討:ALS5例 ,対照4例のOnuf核のパラフィン包埋標本を蛍光四重染色し,高解像度でデジタル画像化した.低倍で同定したOnuf核の個々の神経細胞を高解像度で観察し,他の運動ニューロンと比較した。

結果と考察
 研究Aでは、括約筋プローブの改良として、健常被験者6名に対してダミーのプローブの装用感や逸脱感を調査し至適な太さと長さを検討し、1号プローブより太さを約30%細く、長さを50%長くした形状が至適であるといえた。信号のコード化では、プローブ操作により、既存の意思伝達装置(レッツチャット)を操作できる機構とした。
研究Bの臨床評価では、6例中内診で随意収縮を捉えられたのは、4例、試作プローブと圧トランスジューサーでは、2例で電圧(2.5V,0.5V),圧力(100mmHg,10mmHg)であった。対象の意思伝達障害の程度と括約筋の随意収縮力には、必ずしも関係しているとは限らず、「どう力をいれたらよいかわからなかった」という感想もあった。このため、随意収縮力の測定が不可能だったことには、随意収縮力自体の衰退と廃用性の問題、そして、検出方法の問題があることが示唆された。さらに、病理学的検討では、前角細胞と比較して、Onuf核に細胞数が残存し、異常封入体も少なかったことからが変性を免れやすい傾向にあることを確認した。
結論
 初年度は、括約筋スイッチの実用に向けた基盤を完成させた。適応評価では、括約筋の有用性が確認されたが、収縮の方法や検出方法の改善が求められた。次年度は、療養者評価をすすめ、本試行による括約筋の収縮を意識づけることで、廃用性の改善につながるかを含め検証していくことが課題である。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122108Z