障害者入所施設および精神科病院の入所者・入院者に対する全国実態調査にむけたパイロット研究

文献情報

文献番号
201122104A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者入所施設および精神科病院の入所者・入院者に対する全国実態調査にむけたパイロット研究
課題番号
H23-身体・知的・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 久夫(日本社会事業大学 社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤温(筑波大学大学院・人間総合学研究科)
  • 三田優子(大阪府立大学人間社会学部社会福祉学科)
  • 茨木尚子(明治学院大学社会学部社会福祉学科)
  • 北野誠一(おおさか地域生活支援ネットワーク/障がい者制度改革推進会議構成員)
  • 竹端寛(山梨学院大学法学部政治行政学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
施設入所者や精神科病院入院患者のニーズを把握するための全国的な実態調査の手法の開発である。
研究方法
入所者・入院者の実態調査は、施設や病院を事例にして行った調査はいくつかあり、海外の文献資料はかなり豊富にあるので、これまでの実態調査の成果や方法との整合性や継承性を整理した上で、今日的な政策課題を明らかにできる調査項目や調査方法(情報提供の介入を含む)について試案にまとめる。この試案に基づき調査票を作成し、いくつかの協力施設と病院において、介入と調査のシミュレーションを行い、調査項目や調査方法の妥当性を検証する。この検討を踏まえて新たな実地調査のあり方を提言する。
結果と考察
サンプリングにおいては、施設入所者調査では、知的障害者を中心に支援している施設と身体障害
者を中心に支援していいる施設とのバランスを考慮したランダムサンプリングが求められた。精神科病院入院患者調査では病棟間の意識の差がわかり、それがスタッフの啓発や病院全体の底上げに繋がることが確認された。今後行う全国調査では自記式の質問紙調査よりも、調査票を用いた面接調査の方が回答の信頼性が高まることが示唆された。インタビューガイド作成の際には障害当事者の参画が有効であった。面接の技法、コミュニケーション方法等に関する調査員研修を実施し、その効果を確認した。施設入所者調査では、コミュニケーションが難しい対象者には絵カードを用いることの有効性が示唆された。調査実施に際しては、協力施設のスケジュールや職員配置等について調査班との間に多くの調整と配慮が求められることが明らかになった。面接調査では障害当事者と非障害者が調査員と記録者のペアで行ったが、記録者とは別に障害当事者である調査員の支援を行う支援者をつける必要があった。
結論
対象者の選定ではランダムサンプリングを用いることの重要性が確認された。調査設計段階から障害当事者の参加の必要性が確認された。その際に調査マニュアル作成の重要性が指摘された。対象者の障害特性に応じたコミュニケーションツール作成の必要性が指摘され、そしてその有効性が確認された。調査においては対象施設と病院との間で綿密な連絡調整の必要性が生じた。調査実施においては障害当事者である調査員の障害への配慮が不可欠である。対象者との関係作りにおいては詳細な事前説明やある程度の時間が必要であることが確認された。精神科病院入院患者の調査では、患者の体調により、調査の予定や実施状況が大きく変わることが明らかになった。今後行う全国調査では以上の点を念頭に置いた調査が求められると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122104C

成果

専門的・学術的観点からの成果
入所者・入院者については政策の根拠となるデータが不十分な状態にあり、今後、本研究によって開発された手法での実態調査により、入所者・入院者のデータが蓄積されることで、地域移行および退院促進の施策を推進することが可能となる。また入所者・入院者の実態を全国的に明らかにできる調査実施の見通しが立つことで、都道府県・市町村における計画策定の促進を図ることができる。
臨床的観点からの成果
入所者調査では知的障害者と身体障害者とのバランスを考慮したランダムサンプリングが求められる。調査では調査票を用いた面接調査が回答の信頼性が高まることが示唆された。インタビューガイド作成の際には障害当事者の参画が有効であった。面接の技法、コミュニケーション方法等に関する研修を実施し、その効果を確認した。入所者調査では、コミュニケーションが難しい対象者には絵カードを用いることの有効性が示唆された。面接調査では障害当事者である調査員の支援を行う支援者をつける必要があった。
ガイドライン等の開発
本研究により明らかにされた成果を踏まえて、本研究の協力者である当事者調査員との共同作業の元、入所者や入院者の声を忠実に引き出すことの出来る調査方法を見出したことにより、今後の全国調査に向けて、入所者や入院者、そして当事者調査員にとっても解りやすい「調査マニュアル」を作成した。
その他行政的観点からの成果
現在、入所施設・精神科病院からの地域移行・退院促進に関する新たな障害福祉の体制(法制度)のあり方が政府部内で検討されており、その根拠となるデータを、入所者・入院者への実態調査により提供することで、より効果的に障害者等の自立を支援する福祉体制の構築が促進される。そのためにも新たな施策展開を踏まえた入所者・入院者への実態調査のあり方が求められており、また行政が実施できる見通しの経つ、かつ有益なデータを得られるアクション・リサーチを用いた調査方法を見出したことは大きな成果と言える。
その他のインパクト
入所者・入院者に対する全国的な実態調査はこれまでほとんどないので、この調査結果は今後の障害者施策や研究の基礎データとなるものであり、その調査項目や調査方法・介入方法をどのようにするかを提言したことは、わが国の障害者施策や研究のあり方に大きく影響するものである。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122104Z