文献情報
文献番号
201122094A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞表面認識分子の異常により引き起こされる新規ヒトてんかんの同定と,その病態進展機構の解明、および診断法・治療法の開発
課題番号
H23-神経・筋・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
星野 幹雄(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 病態生化学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 後藤 雄一(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第二部)
- 伊藤 雅之(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第二部)
- 早瀬 ヨネ子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 病態生化学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
イハラてんかんラット(IER)の原因遺伝子を確定し、さらにその発症・病態進展機構を明らかにすること。また、IERに相当するヒト疾患を新たに同定し、将来の診断法や有効な治療法の開発に道を拓くこと。
研究方法
連鎖解析法により原因遺伝子領域を狭め、候補遺伝子を特定する。候補遺伝子の発現量をIERで調べ、さらにそのノックアウトマウスを作製して、表現型がIERと同等かどうか検討する。IERおよびノックアウトマウスを、解剖学的、電気生理学的に調べ、形態機能異常を検出する。同定された原因遺伝子のトランスフェクションにより細胞形態への影響を調べる。精神遅滞リサーチリソースのリンパ芽球からRNAとcDNAを調製し、バイオリソースに加える。ヒト症例の脳組織標本を調べるための、有効な評価系を免疫組織科学的染色法によって確立する。
結果と考察
Epi-IERがIERの原因遺伝子であることを完全に証明した。さらに、Epi-IER遺伝子ゲノム上の一塩基置換がスプライシング異常を引き起こしていることが原因であることを突き止めた。IERでは脳の各部位の神経細胞の形態が異常であること、また扁桃体の抑制系の機能が低下していることを明らかにした。Epi-IERが神経突起の伸長と分岐に関与することもわかった。以上から、IERではEpi-IER蛋白質の機能が失われた結果、大脳、海馬、扁桃体などでの神経細胞の形態形成がうまくいかず、その結果としてその神経回路の機能が損なわれ、発達障害やてんかん様の症状が引き起こされているのではないか、と考察された。
さらに、精神遅滞リサーチリソースにRNAとcDNAのバイオリソースを加え、そこからEpi-IERの発現量の定量を行い、Epi-IER遺伝子異常によってもたらされるヒト疾患のスクリーニングを開始した。また、ヒト大脳皮質の層構造の評価系を、免疫染色法により確立した。次年度以降、ヒト標本を使ったプロジェクトを本格化させる。
さらに、精神遅滞リサーチリソースにRNAとcDNAのバイオリソースを加え、そこからEpi-IERの発現量の定量を行い、Epi-IER遺伝子異常によってもたらされるヒト疾患のスクリーニングを開始した。また、ヒト大脳皮質の層構造の評価系を、免疫染色法により確立した。次年度以降、ヒト標本を使ったプロジェクトを本格化させる。
結論
IERの原因遺伝子Epi-IERを確定し、さらにそのゲノム上の一塩基置換が原因となっていることを突き止めた。また、Epi-IERの突起伸長、分岐促進機能を明らかにし、IERの病態を解明しつつある。ヒト疾患のスクリーニングを開始したところであり、今後同定することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
-